東京で暮らす女のとりとめのない日記

暮らしとカルチャー、ミクスチャー

美味しい暮らし #2月編

最近、阿古真理の「小林カツ代栗原はるみ 料理研究家とその時代」を読んだばかりなのですが、これがものすごく面白かった!「もっと早く読みたかった…」と思うような本に出会うのは久しぶりで、終始ページを捲る手が止まりませんでした。

明治から平成の料理研究家を取り上げながら、彼女たちが時代に求められた理由と家庭料理に与えてきたインパクト、さらにその思想まで知ることができる素晴らしい本。小さいころ小林カツ代監修の絵本で料理に興味を持ち、もっと作りたい、美味しいものが食べたいと彼女やケンタロウのレシピで育ってきた私には感慨深く、カツ代が家庭料理に持ち込んだ「思想」を知ってはちゃめちゃに痺れました。

栗原はるみがアイドルだという例えも非常に納得。日々料理する女たちにとって偶像に近い存在ですよね。辰巳芳子の「いのちのスープ」は一時期母親が凝りに凝って作っていたのですが、辰巳が現れた時代と母の台所を想像し、なぜ母がそうしていたのかを今更ながらわかることができ、少し胸がギュッとなりました。

レシピには必ずその料理研究家の思想があり、自分と相性の良い料理研究家を探す楽しみを発見することができるような本です。途中閑話休題的に挟まれる筆者の「やってみた」エピソードもエッセイとして楽しく読めます。老若男女問わず、美味しいご飯が好きだという人にはぜひ読んでほしい!新書なら880円でKindleなら660円です。

続けてちくま文庫版「昭和の洋食 平成のカフェ飯」も読んだのですが、あとがきに出てくる上野千鶴子の鋭い問題提起も含めて本当に素晴らしかった。村井理子さんとの対談も面白かったので、興味のある方はぜひ。

kangaeruhito.jp

 

開運堂 白鳥の湖

以前知人に教えてもらい、松本へ行く機会があれば、絶対に自分用のお土産として買ってこようと決めていました。

両手のひらに収まるくらいの箱に、薄紙に慎ましやかに包まれ、可愛らしいシールが貼られたクッキーがお行儀よく並べられている、その繊細な佇まいを見るとうっとりしてしまいます。

クッキー缶の絵柄も美しく、今にも飛び立ちそうな可愛らしい2羽の白鳥と、雄大アルプス山脈が柔らかいタッチで描かれており、眺めるたびに松本の想い出を確かなものにしてくれます。

ちなみに空き箱となった今は、ヘアゴムやイヤホンなど、細々したものを収納しています。普段クッキー缶は捨てるようにしているのですが、どうしてもこれだけは手元に置いておきたくて。昔祖母がクッキー缶を捨てられないと言っていた気持ちが、今になってわかるような気がします。

クッキーはポルボローネというスペインのアンダルシア地方でよく作られているお菓子と同じ製法らしく、一口かじるとシナモンの香ばしい香りが口いっぱいに広がり、噛むよりも早く舌の上でホロホロとほどけていきます。あまりにも儚く、そして夢のように美味しい。

個人的にオススメなのは、ココアやチャイなどの甘くて香りの強い飲み物と合わせること。予定がない冬の朝、台所で牛乳を沸かし、飲み物とクッキーを用意して、本を読みながら大切に大切にいただく時間が至福でした。

日持ちもしますし、かさばらないので、大切な人へのお土産にもぴったりだと思います。お店でゆっくり選びながら、あるいはオンラインショップで眺めながら「あの人が好きそうだな」と思う時間も良いものだと気づかせてくれるようなお菓子です。

この他にも真味糖、ピケニケカステラなど可愛らしく美味しそうなお菓子がたくさんあったので、また松本に行った折には必ず伺おうと思います。

 Peg

松本を観光してきた友人たちが口々に「絶対行ってきて!」とオススメしてくるので、ずっと気になっていた、ヴァンナチュールと自家製シャルキュトリ、そしてスペシャリティコーヒーを扱うワインバー。

松本駅から大通りを抜け、なまこ壁の建物が並ぶ通りを歩くと、その中に小さな看板と可愛らしい佇まいのお店が見えてきます。

私は元々タンニン系の渋みとえぐみが得意ではなく、煎茶やワインなどは進んで飲まないのですが、1年ほど前に友人に美味しいヴァンナチュールを教えてもらってから、ワインは少しずつ楽しめるようになってきました。年々食べられないものの方が増えてきている中で、まだ開拓できるものがあると知った時の喜びはひとしおです。

少し話は逸れますが、このヴァンナチュールを教えてくれた友人が、横浜に日本料理とヴァンナチュールのペアリングをやっているお店があると教えてくれたので、何かの折に伺えないかなと考えているところです。

tabelog.com

とはいえ、ワインの経験に乏しいので、ワインバーに行くといつも少し緊張してしまうのですが、Pegの店員さんは気さくで優しく、心からくつろいで楽しむことができました。

特に女性の店員さんの説明がわかりやすく丁寧で、なんとなくですが「西洋骨董洋菓子店」の橘を思い出すなどしました。ワインの経験値がなくても「これ飲んでみたいです」が言えること、その意思疎通ができることが嬉しかったです。こんな評価をするのはおこがましいですが、ぼんやりとしていた私の美味しい/よくわからない/美味しいと思えないを、様々なワインと言葉を通じて解像度を高められていくような体験で、本当に楽しい時間を過ごせました。

自家製シャルキュトリも、おつまみパンもどれもこれも素晴らしく、特にハーブが効いたソーセージはタイムとにんにくの香りが良すぎてクラクラしてしまいました。

お店のインテリアもいちいち素敵で、棚の上に置かれた真空管のアンプや一つ一つ個性のある椅子などが可愛かったです。

食後にスペシャリティコーヒーがいただけるのですが、確かコーヒーだけでカフェインレスも含めて6種類ほどあり、カフェラテやカフェモカなどを含めると10種類以上あったように思います。こんなに沢山の種類から選ばせてもらえるのが嬉しい。

注文と同時にコーヒー豆がミルでゴリゴリと轢かれていくのですが、ふんわり漂ってくるコーヒーの良い香りに程よく酔いが醒めていくようでした。ステンレスのカップから湯気に乗って香る香ばしい豆の香り。お酒を飲んだ後に「コーヒーが飲みたいな」と思うことがあり、そんな時はコンビニに寄って帰るのですが、こうしてカウンターでのんびりできるととても贅沢なことのように思えました。

この日は売り切れでいただけなかったのですが、自家製の生チョコが絶品と聞いたので次回はぜひコーヒーと合わせていただきたいです。まるで天国にあるお店で飲んでいるような、とても良い時間でした。

エリックサウス 八重洲

なんだかんだ結構な頻度で来ている気がするエリックサウス。最近ポイントカードが始まっていたので作ってきました。

この日はマトンカレーと菜食カレー。サフランライスはいらないですと伝えたら、その分バスマティライスを多めに盛ってくれました。

ミールスって本当にどれを混ぜてもダメな組み合わせがなくて、いつも食べるたびに「これってこれと合うんだ!」という驚きがあり、自分で創意工夫を凝らす楽しさがあって好きです。

今年はもっとミールスビリヤニも開拓してみたい。今気になっているお店はサンバレーホテルとアジアカレーハウスなのですが、いずれも生活圏から遠いのが悩みどころ。何か用事ができるのを待つか、いっそ食べるのを目的で行くか…

tabelog.com

tabelog.com

ところで、スパイスカレーを食べることにハマってからは自宅でも時々作っているのですが、基本の4つのスパイス(クミン・コリアンダー・チリペッパー・ターメリック)があれば、簡単にできるというこのレシピには本当にお世話になりました。

www.hotpepper.jp

 市販のルゥを使ったレシピは工数が多く、時間と手間がかかり、また小麦粉と油がベースなので胃もたれしやすくカロリーも高いので、家事のタスクと食事管理の調整、自分の体調を考えないといけないのがネックだったのですが、このレシピだと所要時間が30分くらいで済みますし、油の量も調整すればヘルシーにできるのがとても良いです。おかげで「今日のご飯はカレーにしようかな」というハードルがぐっと低くなりました。

食事管理をしているのでカレーは食べられないという人や、家でカレーを作るのが億劫な人にこそぜひ試してほしいスパイスカレー。最近エリック・サウスのイナダシュンスケさんが出版した「南インド料理店総料理長が教える だいたい15分!本格インドカレー!」という本もとても良かったので、こちらも良かったら。

 

恵比寿 きたぽん酒

以前ブルータスに載ってた紹介記事を見てから気になっていたお店。日本酒が好きな友人が仕事終わりに飲もうと声をかけてくれたので、女二人で行ってきました。 

コースでお願いしたのですが、まず初めに自分の好きなお猪口を2つ選ばせてもらえるのが既に楽しい。うつわ謙心さんから揃えたものが多いらしいので、気になったらそこで購入するのも良いですね。

www.utsuwa-kenshin.com

 コースは前菜4種盛り合わせ、魚料理2皿、自家製生ハム煮りんご添え、苺の白和えでどれも日本酒によく合い、お腹いっぱいになりました。うつわも美しく、飽きずに過ごすことができます。

よく食べる人には少し物足りないかもしれないので、2軒目で使うかアラカルトでご飯ものを頼むのが良いのではないでしょうか。

特に写真の生ハムと熱燗の組み合わせが美味しかった。ふわふわの生ハムを食べた後に熱燗を口に含むと、油分が溶け出してふわっと香った後、ゆっくり消えていきます。こんな楽しみ方ができるのかと目から鱗でした。

周りのお客さんも静かに飲まれる方が多く、ゆっくり料理とお酒を楽しむことができました。

これなら日本酒を飲み始めたばかりの女の子にもオススメしやすいように思います。

 サービスエリアで買ったあれこれ

写真はないのですが、八ヶ岳パーキングエリアで買ったレアチーズタルトと、パン屋さんで淹れてもらったコーヒーがとびきり美味しかったです。

こぢんまりした可愛いパーキングエリアなのですが、産直野菜や燻製されたベーコンなどが並んでいて、いつも立ち寄ってしまいます。ここで売っているソフトクリームも勿論美味しい。

パン屋さんのコーヒーはなんとネルドリップで、時間をかけてゆっくりと抽出してくれます。売店でレアチーズケーキとパン屋さんでコーヒーを買い、ベンチに腰掛けて周りの美しい山々を眺めながらぼんやりする時間が、至福のひとときでした。