東京で暮らす女のとりとめのない日記

暮らしとカルチャー、ミクスチャー

美味しい暮らし #お取り寄せ・レシピ編

四・五月は政府からの緊急事態宣言の発令に伴う外出自粛要請、また東京都の休業要請の影響があり外食ができなかったので、今回はテイクアウトしたものやお取り寄せしたもの、または自分で作って美味しかったレシピについて書きました。
皆さんはこの期間どう過ごされていましたか?そして今はどう過ごされていますか。私は最近仕事が忙しく、息をつく間も無いです。毎日もうだめだ〜と言っている気がする。 一日の仕事が終わったと思ったら勉強に移り、終わったらジムへ行く。たまに気分転換がしたい時は銭湯に行ったり、ランチは外で食べたり図書館へ行ったり映画を見に行ったり。自粛要請が解除されて、こうしたことができることを新鮮な喜びとして感じると共に、自分の生活様式は自分で自覚している以上に外部に依存していたのだなと感じています。
最近は梅雨時期ということや、都内の感染者が増えてきたこともあって、家の中で過ごす時間がまた徐々に増えつつあるのですが、そんな時はAmazonプライムと本、そしてラジオに助けられています。最近Amazonプライムで観た映画だと「国家が破産する日」が良かったな。1997年のIMF通貨危機から2008年のリーマンショックの影響を受けてのウォン下落、2009年の通貨危機。こうした通貨危機を経て「パラサイト」のアボジのような境遇の人が多数生まれたのかと思うと、彼の「何も計画しないことが一番傷つかずに済む」という言葉をふっと思い出す。
読んだ本だと岡田憲治の「なぜリベラルは負け続けるのか」と善教将大の「維新維持の分析」が印象に残っていて、七月に都知事選が控えていたこともあり、ここ何ヶ月かは小説よりも政治関係の本を読み漁っていた。
ラジオだと昔放送されていたラジオの「SUNTORY SATURDAY WAITING BAR AVANTY」のポッドキャストを発見して大歓喜。2013年に放送終了になって以降、二度と聞けないと思っていたので本当に嬉しかった。ありがとうTOKYO FM

www.tfm.co.jp
そして、何より生活の楽しみだったのは外食だったのだなということを実感しています。美味しいものを食べた時の一切の考え事を放棄して目の前に没頭できる瞬間や、目の前の美味しさがどのように構築されているかを考える時間。お店に行けない時間が長くなるにつれて、あれらは生活の逃げられないしんどさから一瞬だけでも解放され、思考が休まる時間だったのだなと思いました。
たまに自分のこの食への過剰なこだわりと執着心にどうなの?と思うこともあるのですが、執着できるうちに執着することで一切を手放せるような気がするので、今は執着しておこうと思います。 それと、これまで自分の美味しいを探そうと色々なお店に足を運んだお陰か、最近は美味しいと思えないお店に当たった時すら楽しくなってきました。自分の予期せぬ変化に驚きつつ、このことはまた次にでも話そうと思います。

 

テイクアウト・お取り寄せ

藤むら れぇずんくっきぃ

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以前友人にお勧めされてから気になっていた藤むらのれぇずんくっきぃ。外出自粛要請が始まって入院中の家族にも会いに行けず、外食や映画といった気晴らしもできず、ジムで思い切り身体を動かしてスッキリすることもできなくて、どんどんくさくさしていった時に「そういえば」と思い出して取り寄せました。
普段甘いものにあまり興味のない友人が「ここのレーズンバターサンドは日本一美味しい!」と豪語していたのを微笑ましくも大袈裟だなぁと思っていたのですが、ひとくち食べてちょっとびっくり。なんといえばいいのか、とにかくバターの印象が強い。生地がしっとりしていて触っただけでも自らの重みで崩れてしまいそう。そうして慌てて口元に運ぶとほろっと崩れてフレッシュなバターの香りが口いっぱいに広がります。クリームの軽やかな口どけもすごく美味しい。今まで色々なバターサンドを食べてきたけど確かにこれは食べたことのない味。もはや生地がクッキーというよりスコーンみたい。他のバターサンド以上に、賞味期限に近くなればなるほど表面はよりしっとりとして、口に運んだ時のほろほろ感が強くなるのもいい。
バターサンドは賞味期限ギリギリまで寝かせる派なのですが、特にここのバターサンドは追熟させるような楽しみがありました。ちなみにレーズンの味は相対的に弱いように感じたので、レーズンの存在感が好きな人や洋酒を効かせた味を好む人には刺さらないかもしれないです。期限ギリギリを攻めつつ、美味しい頃合いを淡々と待つ孤独で愉快な戦い。遠い昔に「肉は腐りかけがうまいって言うけど、腐るなよ」と言われたことを思い出し、余計なお世話だとソファーにダイブしてバターサンドを齧る。こうやって日常にささやかな小休止を用意することで、腐ろうがどうあろうがたくましく生き延びていけるような気がします。

365日と日本橋 クロッカンショコラf:id:lesliens225:20200714003108j:plain

近くを通りかかった時に365日の「営業中」という看板が目に入ったので吸い寄せられるようにお店へ。いつもは並んでいるので素通りしていたのですが、この日は私以外にもう1人しかお客さんがいませんでした。人気店でこれだもの他の飲食店への影響はいかほどか。店内に入って店員さんにオススメを聞くとクロッカンショコラを紹介されたので、好奇心で買ってみました。
コッペパンのようにふわふわとした生地にザクザクとしたクランチ状のチョコレートの食感が相反していて面白い。普段菓子パンを食べないこともあり、好きか嫌いかと言われると解像度が低くてわからないのですが、それはそれとして「これトーキョーのパンっぽいなぁ」と思いました。
代々木や日本橋にあるお店にたどり着くまでの道には面白そうなショップが目移りするくらい並び、移動している間も絶え間なく消費欲が刺激される。そうしてたどり着いたお店はコンセプチュアルな内装で、店内には珍しいヴィジュアルのパンがずらりと並んで、オシャレそうな味をしたためた可愛らしいポップがお行儀よく挨拶をする。
自分が高校生くらいだったら、このお店を目指してトーキョーを胸いっぱいに吸い込みワクワクしただろうな。そんな時に出会っていたら、もしかしたら東京の思い出のパンになっていたのかもしれません。

 

Ăn Đi バインミーサンドイッチ

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神宮前までいく用事があったのでアンディでバインミーをテイクアウト※。日によって具材が変わるみたいで、この日はロメインレタスとスパイスチキンのバインミーでした。
食い道楽を地でいく友人が「あなたここ絶対好きだと思う」と勧めてくれてからずっと気になっていたものの、タイミングが合わずなかなか行けなかったので念願叶って嬉しいやら、こんなタイミングで来て情けないやら。次こそは店内で食事をしたい。
パンは柔らかめで間に紫玉ねぎのピクルスとパイナップルが入っていて美味しい。ロメインレタスの食感も良くてバリバリと噛みちぎっていると一匹の青虫になったような気がします。そのあとふんわりスパイスが香り、自分は青虫ではなかったと気がつくのでした。

※お店のfacebookによると、2020年6月12日付でテイクアウトは終了されたとのこと。7月にオープン予定の姉妹店では引き続き購入できるそうです。(2020/6/12現在)

www.facebook.com

おうちでともすけ no.1自家製ふきのとうみその香るラザーニャ 

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写真はおうちでともすけ公式HPより

自粛が要請された日々の中で、とりわけ印象に残ったのがともすけのラザーニャです。巷に溢れるテイクアウトの情報に疲れていて「あの名店がテイクアウトを始めました!」という知らせを見ても「そう…」としか思えなかった頃。名前の売れている店とそうでない店にどんどん差がついていく状況や、自分の消費活動に対していつも以上に検閲のようなものがかかってしまい、「食べたい」にたどり着く前に色んなことに思いを巡らせて、次第にしんどくなっていきました。
そんな時に友人のInstagramで見つけたのがこのおうちでともすけ。そういえば昔一度だけ連れて行ってもらったことがあったなぁ、居心地が良くてどのお料理も美味しくて…と想い出が呼び水となってホームページへ。見てみると、テイクアウトはラザーニャのみ※とのこと。今にも美味しい匂いがしそうな写真と、自宅まで配送してくれるという気軽さに背中を押されてエイッと購入しました。
宅配されたそれは受け取るとずっしり重く、急いで冷蔵庫にしまって結婚記念日のご馳走として食べることに。当日オーブンでじっくり焼き、とっておきのワインを開け、どんな味がするのかドキドキしながらナイフで切り分けると、ラザニア生地の優しい香りが漂ってただただ癒されました。どの野菜もおさまるべき所に収まり、一切の味わいが柔らかく調和していてすごく美味しい。ラザニアというと途中で飽きる印象があったのですが、これは全く重くない。気づけばあっという間にふたりでぺろりと食べてしまいました。
翌朝まったく胃がもたれていないことにも驚き。美味しいのに胃が疲れない料理は胃弱体質なのに食いしん坊の身としてはありがたかったな。またここのラザーニャを頼みたいね、美味しかったねと会話も弾み、結婚記念日をここのラザーニャで祝えて本当によかったなと思いました。

※現在はラザーニャの他にオリーブオイルやバルサミコ酢も販売されているようです。(2020/7/15現在)

tomosuke.jp
話は変わりますが、ここのお店のホームページも好きで好きで。手書きのメニューやイラストを取り入れたクラフト感のある画面をスーッとスクロールしていくと、なんだかお店の中にいるみたいで気持ちが浮き立ちます。お店のメニューをまるっとPDFでダウンロードして眺めることもできるので、メニューを眺めるのが好きなひとはきっと楽しくなってしまうはず。私もそのひとりです。
ちなみに6月よりワインの通信販売を行う「エノテカともすけ」もオープンされました。お客さんがポチポチと気になるワインをセレクトするのではなく、注文用のカルテを記入してソムリエのヒラセさんに選んでもらうスタイルです。とにかく注文書の熱量がすごい!これなら直接お店に伺えなくても、きちんと好みを汲み取ってもらえそうで安心感がある。今はお酒があまり飲めないので、いつかまた祝い事があった時に利用しようと先の楽しみにしています。

enotecatomosuke.com


マイスター東金屋 レバーパテ

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写真はマイスター東金屋公式HPから

夫がまだ恋人だった頃、週末になると必ず二人で通っていたビストロが閉店するという知らせが舞い込んできたのは5月の終わりだった。建物の老朽化に伴って閉店するという知らせを受けたものの、このご時世のため最後のお別れに向かうことも叶わず、せめてここでいつも頼んでいたレバーヴルストを取り寄せようという話に。それにしても、まさか、確かなのだろうか、という思いがぐるぐる回って途方に暮れる。あのお店は私たちの髪に白髪が混じっても、変わらずそこにあると思っていたのに。なんならあの店があるからあの街に移り住もうかと、半ば本気で思っていたのに。
席数が二十にも満たない小さな店ながらいつも店内は活気にあふれていて、ここで金曜の夜を過ごすのが本当に楽しみだった。ビストロなのになぜか入り口には赤提灯が灯っていて、ドアを開けると美味しそうな匂いと一緒に気のいい音楽とおしゃべりがワッと溢れてくる。壁一面にぎっしりと書かれた手書きのメニューを眺めながら今日はどれにしようかと悩んでいると、豊かな髭とでっぷりとしたお腹、ドングリのようにまん丸な目が特徴のマスターが「今日は何にしましょうね」と声をかけてくれて、そのいつもと変わらなそうな振る舞いにホッとした。おそらく相当な食いしん坊であろうマスターが全国各地から取り寄せたクラフトビール自然派ワインに日本酒、焼酎はなんでも美味しく、おつまみはどれを頼んでもハズレがない。特に海老をシナモンで香りづけしたフリットが大好物だった。そうしてあれこれ頼んでは背中に背負い込んだ憑き物を落とすようにお酒を飲み、千鳥足になりながらコンビニで水を買って彼の住むマンションへ帰る。そんな週末に、幾たびも救われてきたのだった。

www.meister-toganeya.com

フリットと同じくらい気に入っていたのが、マイスター東金屋のレバーヴルスト。きめ細かく滑らかでクリームのように口どけが良く、バゲットにたっぷり乗せて食べるのが好きだった。このお店で出会ってその魅力に取り憑かれ、以来他のお店で見かけては注文するようになったけれど、やはりここのレバーヴルストを食べている時が一番しっくりくる。他にもポークアスピックとパテドカンパーニュなど、どれを食べても本当に美味しい。その美味しさに目を光らせながら、うまいうまいと食べていた日々が懐かしい。
好きなお店がなくなることは、あそこにいけば美味しい料理が食べられるという甘えにも似た安心感だけでなく、そこで出会った馴染みの人たちとの淡い繋がりもごっそり失うことなのだなと思う。Googleマップでいつか行ってみたいお店に立てていたピンも、改めて見ると「閉業」の赤い文字がちらほらと見えるようになった。この2ヶ月間の飲食店の窮状を考えるとやるせない。家や仕事以外の居場所を、そしてそこで過ごす時間を、現世で流されてしまわないための棹に変えて生きている人の切実さを思うと胸が痛い。あの店を知る前の私はどうやっていただろうか。そんなことを考えて、私も一つ棹を失ったことに気がつく。
街中を歩いていてたまにマスターに似た背格好の人を見かける度に、今は元気でいるのだろうかと思う。繁華街の片隅に赤提灯が見える度にもしかしてと思う。もしかするとあのお店で過ごしたひと時は全て私の幻想で、もとよりなかったのかもしれない。赤提灯が掲げてあるビストロなんて、人間の商いを見よう見まねで始めたたぬきやきつねがやっていたと思う方が自然ではないか。
調べると、あのお店があったあたりは高度経済成長期に開発された土地で、それまでは野生のたぬきが生息していたという。もしかするとあの晩、マスターの背後にふわふわとした何かが見えたのはそういうことだったのかもしれない。

作って美味しかった料理

中原淳一氏のいちごのコクテイル

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煮込み料理が好きです。食材を鍋に入れて煮るだけで立派な料理になるところも、煮ている間に良い香りが辺りに漂ってくるのも趣があり、とりわけその良さを実感するのは果実を煮るとき。
この春は中原淳一の「幸せな食卓 昭和を彩る料理と歳時記」からいちごのコクテイルのレシピをアレンジしてコンフィチュールを作りました。以前いちごのコクテイルを作った時に、そのマリネ液がとても美味しいことに驚いたので、それならその材料で丸ごと煮てしまおうという魂胆。結果、大成功でした。
加熱したいちごのとろりとした舌触りに、ふんわり香るブランデー。ヨーグルトに混ぜたり、ソーダで割って飲んだりバニラアイスに添えてみたりと、ひと瓶で思い思いの楽しみ方ができ大満足。最後のひと匙を食べてしまうのが勿体なくて、こんなことならもっと作っておけば良かったと思ったり。
煮込み料理をする時は鍋の前にスツールを持ってきて本を読むのが常なのですが、いちごの甘い香りが漂うキッチンでそれをしていると、ちいさな非日常といった風情があり、まるで自分も一緒に煮詰められているようです。時々焦げ付かないようにかき混ぜては本を読み、あくを掬ってはまた本を読み。そうして出来上がったコンフィチュールを瓶へ注いで蓋をすると、不思議と気持ちがスッキリしていることに気がつきます。
キラキラ輝く茜色の瓶を見ていると、小さい頃好きだったセボンスターの宝石の部分にも似ていてキッチンのそこだけピカピカと発光しているよう。半透明のいちごを眺めながら、きっとこれは来年も作るだろうと思ったのでした。

books.shueisha.co.jp

ホテルオークラのフレンチトースト

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知人からツオップの牛乳だけで作った食パンをいただいたのですが、普段はお米派なこともあってなかなか食べる機会がなく、そうこうしているうちに賞味期限が迫ってきてしまったので焦ってフレンチトーストに。せっかくなのでオークラのレシピで作ることにしました。

theokuratokyo.jp

レシピのコツは蓋をして弱火でじっくり焼くこと。そうすることでお店に出てくるようなプルプルなフレンチトーストになります。急いて蓋を開けてしまうとせっかく膨らんだ生地が萎んでしまうので、フレンチトーストに対する信頼と忍耐が試されるレシピです。
私はお菓子作りのように計量をきっちりしないといけない料理が大の苦手なのですが、フレンチトーストはそんな人間にも懐深く、美味しく仕上がるので助かります。休日の前に仕込んでおくと、翌朝起きる楽しみができるのも良いところ。朝起きて冷蔵庫を開けた時のワクワクした気持ちや、フライパンから立ち昇る香ばしく甘い香りは作り手の特権。
現金な人間なので、こうして朝起きるための楽しみを自分でこしらえておくと、自分や日常に対して愛着が湧いてくるような気がします。自分を労わるためのフレンチトースト、なかなかおすすめです。

冷水希三子さんのグリーンピース空豆のミントバター煮

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今年は空豆が安かったので、色々なレシピを調べては試していました。その中でも特に気に入って何度も作ったのが、冷水希三子さんのInstagramで紹介されていたグリーンピース空豆のミントバター煮。


www.instagram.com

私はグリーンピースが苦手なので(小学生の頃、給食の時間に苦手なミックスグリルのグリーンピースを無理やり先生に食べさせられたことがあってからどうしても克服できず…)レシピからは抜いて作りました。あぁ、そら豆は無理やり食べさせられなくて良かった。
写真のものは火を入れすぎてしまってしまい、ややグズグズになってしまったのですが、これはこれで空豆のとろりとした甘さが感じられて美味しかったです。火加減を覚えるまで少し練習が入りましたが、ちょっと失敗したかもと思っても自ら良い塩梅にまとまってくれる良いレシピ。疲れて帰ってきて自分が作ったご飯が美味しくないと悲しくなるので、こういったレシピを知っていると少し気がラクになる気がします。
冷水希三子さんといえば京都御所西にある四季十楽という、一棟貸しの長屋の料理を担当されていた方。母が彼女のファンなことや、私の暮らしぶりもようやく安定してきたこともあって、今年の初夏はここへ母娘で旅行に行こうと考えていたのですが、なんとこの度六月三十日をもって閉業されたとのこと。いつかの楽しみにしていたので、この知らせにはおおいに落ち込みました。公式Instagramには「いつの日かまたどこかで皆様とお会いできる日を」と残されていたので、そのいつの日かを心待ちにして。

ウー・ウェンさんのたけのことそら豆の炒め物

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高橋書店から刊行されている「ウー・ウェンさんちの定番献立」から。写真はそら豆をいんげんで代用して、冷蔵庫にあったゆで卵を彩りとして加えたもの。
毎年たけのこが出回ると、だいたい灰汁抜きをしてご飯と一緒に炊き込むか、若竹煮や土佐煮にするか。美味しいけれどどこかマンネリ気味だし、できればもっと違う形でたけのこの美味しさを味わいたい。そんなことを考えていた時に出会ったレシピです。初めて作ってその美味しさに驚いて以来、家庭で作るたけのこ料理はこれが一番だと思っています。コツはたけのこをじっくりじりじり焼くだけ。これだけでたけのこの香気がグッと引き立ち、いつも以上に旨味が感じられて誇張抜きでお箸が止まらなくなります。以前、高山なおみさんの「れんこんのじりじり焼き」を作った時に、焼き目がつくまでじっくり焼いた根物はそれだけでうまいということを知ったのですが、このレシピもそれと相通じるところがあるような気がします。
ウー・ウェンさんのレシピ本は季節の食材を取り扱っていることが多く、家庭料理がマンネリ化しにくいところや、調理の工数が少ないので失敗しにくいところ、簡単なのに美味しくてまた次も作ってみようという気持ちになれるところなど、どれをとっても頼もしい限り。手元に一冊あるだけでお守りになってくれるような、日々を共に乗り切ってくれるような、家庭料理における相棒のような本です。そういえば、自粛要請期間中に料理をする頻度が増え「もう限界だ〜」という時に助けられたのも、彼女のレシピでした。私が愛用しているのは次の二冊。どちらもとってもおすすめです。

honto.jp

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ほたるいかなめろう

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 今年はほたるいかが軒並み安く、たぶん人生で一番ほたるいかを調理したと思います。初めは普段はスーパーに並ばないような富山産のふくふくとしたほたるいかが出回っていることを新鮮な気持ちで珍しく思っていましたが、次第になんとも言えない気持ちに。自分の食卓が卸売や漁業従事者、外食産業に関わる人々と地続きであることをいつも以上に歪な形で感じたのは東日本大震災以来。
あの時は風評被害で福島産の農産物は取引価格が大幅に下落し、廃棄処分になった作物、閉業に追い込まれた農家が多かったことを今でも覚えています。福島県の農作物の価格は現在でも理論価格と実際価格には乖離があり、回復傾向にはあるものの震災以前の価格には戻っていません。観光地では破産申請を申し立てた旅館も多く、緩やかに経済規模が縮小していた地域ではその動きがより加速化しました。
同じことがもうこれ以上繰り返されることがないよう、また起こっても格差を最小限に留め、十分に人々が収入を得て暮らして行けるようになって欲しい。そのためにできることを今からでも行動に移していこうと思っています。