東京で暮らす女のとりとめのない日記

暮らしとカルチャー、ミクスチャー

美味しい暮らし #7月編

もう8月も終わりに近づき、秋の気配を感じる今日この頃。会社からの帰り道をぼんやりと歩いていたら、目の前をアキアカネがすうーっと通り過ぎ、秋の報せを受け取ったようでした。今年の秋はどんな風に過ごそうか。
先日、秋の香水を探しに久しぶりに銀座へ出かけた時に、以前はあまりピンとこなかったルラボのガイアック10がまさに欲しかった香りそのもので、その場で小さいサイズを買って帰りました。香水も食事も、その時は自分のコンディションや環境に左右されてわからなかった良さが、ある日天啓のようにこれか!と分かる瞬間が楽しいなと思います。

香港麺新記 四ツ谷

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たまたま四ツ谷方面に行く予定があり、昔このあたりに住んでいた友人がここの麺が美味しいと言っていたことを思いだしてふらりお店の中へ。昼時を過ぎていたこともあって店内は私ともう一人の女性だけ。
頼んだのは什錦麺という汁なし麺。麺は香港麺と日本麺の2種類から選べたので、迷わず香港麺を選びました。目の前に運ばれてきた麺全部のせ、見た目が豪華で迫力がある。上に乗っているのは焼豚と青梗菜、海老雲呑と牛バラ肉など。美味しそうなものがちょっとずつ乗っている絵面にすごくワクワクします。
上の具材はどれも1品料理として楽しめるくらい、というかこれをつまみにあっさりしたビールが飲みたくなってくる。特に海老雲呑の食感がすごくプリプリで美味しくて、これだけ単品で注文したかった。細くてザクザクした噛みごたえのある香港麺に八角が効いたタレが絡んで美味しい。付け合わせのスープも、卓上調味料も良かった。
四ツ谷駅を久しぶりに利用したのですが、ネオバロック式の四谷見附橋も、明治時代の鉄道の名残が感じられる赤煉瓦も、皆変わらない風情を湛えていて不思議な気持ちになりました。東京の街を歩いていると、普段は見逃してしまいそうなところに史跡や旧家、戦時の名残などがあって、それを知るたびに自分だけの東京が形作られるように感じることがあります。昔そこにいたであろう人々の暮らし。当時信じられていたものたち。そうしたものを見つけるたびに、また少し東京が好きになれるような気がするのです。

蕪木

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 コーヒー好きの友人から推しに推されていたものの、なかなか予定が合わず伺えていなかった蕪木。たまたま稲荷町に用事があり、示し合わせたように夫から今日は遅くなると連絡があったのでこれはチャンスと駆け込みました。
店内は1階がお会計とお土産売り場、2階が喫茶室という構成です。喫茶室は一枚板のカウンターとテーブル席で構成されていて、ちょうど夕刻過ぎということもあって心地よい暗がり。席について渡されるひなびた風情のメニュー表が可愛い。この日限定のデザートを紹介していただいたのですが、なんとなくコーヒーとチョコレートでこぢんまりと過ごしたい気分だったのでオススメのペアリングセットをお願いしました。
コーヒーを舐めつつ暫く読書に没頭していたら、カウンターの端の方にいた仕事帰りと思しき男性のところに限定のデザートが運ばれたらしく「うわぁ!まるで宝石みたいだねぇ」という声が聞こえて微笑ましかった。店員さんの付かず離れずな距離感が心地よく、時間がゆったり流れていきます。
そうこうしているうちに小説を丸々一冊読み切り、お会計へ。非日常な空間で美味しいコーヒーを楽しむことができ、少し気持ちが晴れました。のんびりしていても圧を感じず、ゆったり過ごさせてもらえるありがたさ。次に行くときは宝石のようなデザートを食べてみようかなと思いつつ。

喫茶 半月

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この日は知人に届け物をしに浅草橋へ。せっかくここまで出てきたのでと、ついでに喫茶半月へ。近隣に住んでいるらしい高齢の女性たちが穏やかに過ごしていてホッとする。鉄観音のパンナコッタなるものが目に入ったので頼んだのですが、これがとても美味しかった。
蔵前周辺を散歩するのは3ヶ月ぶりだったのですが、知らないお店があちこちにできていてびっくりしました。ギンガムチェックのカーテンが印象的なchigayaは揚げたてのドーナツが美味しそうだったし、家豆花のポップな店構えも可愛かった。蔵前の近代建築を巡ったり、東京復興記念館を見た帰りにこうしたお店へふらっと立ち寄っても良さそうです。ますますあの周辺を散歩するのが楽しくなりそうなのでした。

シクロ 日比谷ミッドタウン店

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日比谷のTOHOシネマズでリバイバル上映をしていた風の谷のナウシカを見てシクロでランチ。マイフェイバリットガールのきゃべつ太郎さんがおすすめしているのを見てからずっと行きたいと思っていたので、やっと行けて嬉しかった。付け合わせの生春巻きがカピカピじゃなくて嬉しい。煮豚もちゃんと柔らかいし、付け合わせの湯っぽいスープはちゃんとレモングラスが効いている。注文してすぐ出てくるので、時間のない時でも安心して駆け込めていいな。
日比谷ミッドタウンのフードコートっていつ行っても混んでいるイメージがあって、せいぜい日比谷焙煎珈琲でコーヒーをテイクアウトするくらいだったのですが、ゆっくり見てみるとベビーカーで子供をあやしながらスペインバルでランチを楽しんでいるお母さんたちがいたり、子連れの夫婦がオイスターバーで談笑していたりと客層の自由度が高くて良かったです。確かにチェーン店より少し価格は高め、かつ子連れで楽しめるお店ってあまり見ないよなぁ。あと案内板の表記には日本語がほとんどないのも不思議な感じでした。
日比谷ミッドタウンで映画を観たのは今回が初めてだったのだけど、周囲の飲食店が充実していて使い勝手が良い印象。一人なら近くにル・プチメックもあるし、帝国ホテルのパークサイドダイナーでブランチをしてから映画を見るのもいい。女友達とランチなら添好運に行っても、デリーモでお茶しても素敵。ちょっと良いところで食べたい時はテクストゥーラに行っても良いし、戦後闇市の名残を残す有楽町や新橋のガード下で飲むのもいい。
ところで先日上野公園を歩いてた時にも感じたことですが、日比谷公園もホームレスが本当に少なくなりました。年越し派遣村があったこと、一体どれくらいの人が覚えているのだろう。いつもこういった開発された土地を歩くたびに、ここにはいない人や視界に入らない人たちを考えます。

立ち食い寿司 根室花まる 銀座店

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銀座・有楽町方面でランチを食べ損ねた時の味方第一弾、根室花まるの立ち食い寿司。立ち食い寿司って自分の好きなものや旬のものを、板前さんとのやりとりや周囲のお客さんを見ながら決めていくグルーヴ感が楽しくて好きです。昔、船橋の吉光で一人立ち食い寿司の自由さに開眼して以来、定期的に開拓していたものでした。幼い頃から行儀よく食べることを躾けられてきたせいか、立ち食い寿司や蕎麦、コロッケやパンを食べ歩きしていると「私は自由だ!」と感じます。
東急プラザの10階にはこのお店の系列の回転寿司があっていつも行列しているらしいのですが、割とここはいつ行ってもすんなり入れて回転も早いので重宝しています。久しぶりに立ち寄ったら感染症対策として席は減らし、アクリルボードで仕切りも作られていました。
ネタの種類は豊富だし質も良いし、立ち食いでこのクオリティなら充分。ささーっと食べてすぐはけたい時にぴったりなので、一人で食事を手早く済ませたい時の選択肢としておすすめです。通し営業なので、銀座でランチにありつけず、でもお腹が減っている時に幾度かここに助けてもらいました。
この日は隣にいた高齢の女性が淀みなく注文をしていてかっこよかった。写真は彼女が頼んでいた秋刀魚が美味しそうでたまらず頼んだもの。久しぶりの立ち食い寿司、大変楽しかったです。

 ぴょんぴょん舎 銀座店

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銀座・有楽町方面でランチを食べ損ねた時の味方第二弾、ぴょんぴょん舎。掃除が行き届いて清潔感のある店内に清々しいほどの見晴らし、サービスも良いしイーハトーヴを意識したしつらえも可愛い。時間をずらせば休日でも人が少なく、のんびり過ごせるのも好きなところです。
ぴょんぴょん舎は昔家族で花巻に旅行へ行った時に初めて訪れて、以来虜になったお店のひとつ。つるつるモチモチとした弾力のある麺と、容赦無く辛いキムチ、優しさとしてのひとかけらの西瓜。どれも完璧な組み合わせで、夏になると必ず一度は食べたくなります。この日はミニサイズを食べたのですが、これだけでも十分満足感がある。夫が食べていたセンナムル冷麺も美味しそうでした。お店にはお土産冷麺も売っていたので、韓国出身と思しきおばちゃんにオススメの食べ方を教えてもらい、教えの通り家で作りました。
チーズケーキで有名なトロイカをはじめ、小岩井のソフトクリームに、かっこうだんごやひっつみなど、岩手で出会った食べ物は本当にどれも美味しかった。高校生のとき部活の合宿で盛岡のビジネスホテルに泊まったことも、友人とノッキン・オン・ヘヴンズドアに感化されてドライブで浄土ヶ浜を目指したこともありました。夫と中尊寺に行って小さい喧嘩をしたのも、徳が低いエピソードながらいい想い出です。
岩手山雄大な姿も、北上川の流れる風景も、またいつかこの目で見られる日が来ますように。


pâtisserie ease

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お土産で頂いたeaseのシュークリーム。小ぶりながらカカオクリームがみちみちに詰まっていて美味しかった。アマゾンカカオは昔何かで頂いて、その強烈で華やかなベリー感に痺れた記憶があるのですが、easeのシュークリームにも同じものを感じました。
後日お店でいくつかケーキも頂いたのですが、どれも個性が際立っていて面白かったです。と同時に東京だから出会えるケーキのように思いました。いいとか悪いとかではなく、そういう類のものとして。
見たところアントルメは無く、お店の作りを見ても、老若男女問わず楽しめる親しみのあるケーキ屋さんという立ち位置とは意図的に分けているように感じます。合う合わないは確実に分かれると思いました。
口コミで見るほどオペレーションも悪くなかったし、特に販売員の女性はきっちりケーキを説明してくれて良かった。これを食べることで自分の好みがクリアになったり組み合わせの妙の面白さを知れるなら、お店とのマッチングを超えた面白みもあるような気がします。これからどうなるか、先行きを見守りたいお店です。

 茶の葉 松屋銀座

夫と銀座で待ち合わせをするのに時間を持て余していたので、久しぶりに茶の葉のイートインを利用しました。このお店が本当に好きで好きで。店内の薄明かり、流れる水音。季節の枝ものが活けてあるところも風情を感じて落ち着きます。
メニューは煎茶・抹茶・玉露などの日本茶に、お菓子をセットにしたものが用意されています。何より合わせるお菓子を店頭に並ぶ練り切りも含めて選べるのが嬉しいところ。(ものによっては合わせるお菓子は決まっているものもあるので、店員さんに聞いてみてくださいね)

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この日は頭を冴えさせたかったので、抹茶と黒糖羊羹にしました。黒文字で薄く切ってちびちびといただきます。

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 一通り頂いた後に出される桜のお茶。
お店は感染症対策で30分入れ替え制になっていました。銀座の喧騒から離れて一人静かに過ごしたい時のショートトリップとして、とてもおすすめです。 

 Neue お菓子のセット

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ずっと気になってたNeueのお菓子セット!InstagramでNeueのアカウントをフォローして予約情報をチェックしてはいたものの、いつもタイミングが合わず「締め切りました」のストーリーを見てはため息をついていたので嬉しい。
セットの中身はガトーショコラにレモンケーキ、チーズケーキとプリンの4種類。どれも気前の良い大きさでときめく。セット以外にもその時々に応じてババロアコーヒーゼリーなどが別途提供されています。今回はカヌレがあったのですかさずテイクアウトしました。とはいえ全部一人で食べるのは流石に無理があったので、夫と半分こにしてお茶会に。

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 夫が一番気に入ったらしいガトーショコラ。半分以上食べていた気がする。夫がこれ美味しいね!と言うのはよほど気に入った時なので、本当に美味しかったんだろうな。最近彼が好む味が分かるようになってきて嬉しい。

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個人的に一番刺さったのがこのレモンケーキ。見た目がウィークエンドシトロンっぽくて可愛い。厚めのアイシングにレモンピールが散りばめられていて、口に含むと口溶けと共にレモンの香りがぶわーっと広がってクラクラしました。キンキンに冷えたレモネードに、頭のてっぺんから足のつま先まで浸っているみたい。しっとりした生地がレモンの個性を受け止めていて、きっちりすっぱいのに嫌な感じが無い絶妙なバランス感。

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お店の看板メニューだったというプリン。まずこの包装紙が可愛い。輪ゴムの色を揃えているのもクラフト感があって胸がぎゅっとなります。何よりカラメルがきっちりビターなのがいい。レモンケーキを食べた時にも思ったけど、ひとつひとつのお菓子からはっきりと作り手の意思を感じる。
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カヌレは外側をガリガリに焼き込んだタイプ。焼きが強めのカヌレが大好きなので嬉しい。対してラムの香りは控えめなので、香ばしさがダイレクトに感じられました。紅茶と一緒に頂いたけど、赤ワインと合わせても良かったな。
一通り食べてみて、どのお菓子もアクセントを効かせたい部分と全体のバランスが上手く整っていて、引き算の美学を感じました。一つ一つメリハリがついている味なので、以前お店でヴァンナチュールを提供されていたというのも納得です。ちょっと系統は違うけれど、食べながら西葛西にあるル・ラピュタのチーズケーキを思いだしました。
しかしテイクアウトでこのクオリティ、やっぱりイートインのデザートも偲ばれます。友人曰く、Neueのパフェは都内随一だったとのこと。いつか菅原さんの手がけたパフェを食べることができたらいいなと思いつつ、それまではテイクアウトを続けようと誓ったのでした。