東京で暮らす女のとりとめのない日記

暮らしとカルチャー、ミクスチャー

スキヤキを贈る


友人から結婚の報せが届いた午後八時、爪のマニキュアが乾くのを待ってから「おめでとう!」と返した。リズミカルなLINEのやり取りに、学生時代彼女と話すとあっという間に時間が経っていたことを思い出す。もう十年以上の付き合いになる彼女は、何年経っても出会った頃のピュアさを湛えていて、何があっても濁らないその強さが好きだなと思った。ヤバい、もうこんな時間だよーと言いながら駅まで駆けていくあの道は、知らず知らずのうちに分かれて今は別々の道だ。結婚相手の男は彼女を散々困らせてきたのを知っているので正直気に食わないけれど、彼女は優しく賢いのできっと上手くいかないことも含めて楽しくやっていくだろう。
昔、就職先の上下関係の厳しさに愚痴を零す彼女を誘ってミスドで好きなだけドーナツを買い、そのまま車の助手席に乗せて海へ連れて行ったことがあった。お互いのこれからの人生について語り合い、夢の話をした。あの時の潮騒は、今でも時折都会の雑踏に紛れて静かに聞こえてくる。

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彼氏にも家族にも言えない秘密を共有して、それをお互い守り続けられる相手に出会える確率は一体どのくらいなのだろう。誰にも言わないで欲しいんだけど、と念押しをしない間柄を彼女と築けたことは只々僥倖だった。あの頃あった友情を、こうして途切れることなく繋いでいける喜びをひとり静かに噛み締める。
次に会うときは大阪かぁ、寂しいなと言うと「東京の女と大阪の女で丁度いいじゃん」と言われて何がちょうどいいのよとくすくす笑った。結婚祝い何欲しい?いらないよ!旦那と美味しいものを食べるのに使いなよ!いや贈りたいんだよと押し問答の末、食べ物がいいと言うので高島屋で今半のスキヤキセットを注文して彼女に贈る。夜のリビングでパソコンを打ちながら、部活帰りに彼女が必ずファミチキを食べていたことを思い出した。
優しく賢い女の子。彼女の行く末が光溢れるものでありますように。