東京で暮らす女のとりとめのない日記

暮らしとカルチャー、ミクスチャー

美味しい暮らし #9月編

9月も変わらず繁忙期。今年は変則的な業務が多く、否が応でも振り回されるイヤな感じが続いている。アンコントローラブルなものに対していかに自分が振り回されないか。こういう時に寄る辺としての宗教があれば少しは楽なのだろうか。私は特定の宗教に属さず信仰心も厚くない人間で、今後もその予定はないけれど、たまにそんなことを考えたりする。
河合隼雄は家に神棚があることを「なんか落ち着きまっしゃろ」と言っていたけれど、確かに自分の行いを客観視するためには自分ではないものへ語る場のようなものがあると、気持ちを棚卸ししやすいのかもしれない。私が時々、もうここにはいない人へ語りかけるのと同じように。
制御不可能なものを制御しようとせず、そういうものだとやり過ごすようになってからはだいぶ楽になった。何もかも真正面から受け止めず、そうすることとそうでないことを選り分けていくこと。最終的に自分が目的としていることが叶っているか、目先の小競り合いに気を取られて見失わないこと。一方でアンコントローラブルだが、絶対に許せないものもあって、そういう時にきちんと怒り、対話していける人でありたいと思う。
ひとまずは繁忙期が過ぎたらしばらく旅に出て静かに過ごしたいな。最近はyoutubeで飛行機の窓の外を夜更けから夜明けまでずっと写したものを眺めています。

 

 外で食べたもの

ル・パン・コティディアン 芝公園

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いつも休日は昼前まで起きてこない夫がこの日は珍しく早起きだったので「朝食を食べにいこうと思うんだけど一緒に来る?」と誘って芝公園へ。なんとなくオムレツが出てくるモーニングが食べたい気分だったので、何年振りかにここに来ました。お店には5種類のジャムがあり、自分が使いたいものを都度持ってきてもらえるのも良いところ。この日はいちじくのジャムをお願いしました。
テラス席にすずめが遊びに来ていて長閑だなと思っていたら、夫が「朝食にここのパン屑を食べてたら元の生活には戻れまいよ」と言っていてちょっと笑ってしまった。そんな解釈ってあるだろうか。
ここに来ると知人がベルギー滞在時代、本店で食べたパンのあまりの美味しさに、毎朝足繁く通い、食べ過ぎて一気に太った話をよく思い出します。グランプラスで行われているパフォーマンスが面白かったことや、オーガニックコスメが日本より充実していてトランクはお土産の基礎化粧品でパンパンになったこと、屋台で出会ったワッフルが異様に美味しくて永住を考えたこと。旅行に行けなくとも、すでにそこを旅した友人知人の話を思い出すとき、心はその地に降り立っているように錯覚します。

喜喜豆漿

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CREAの記事に去年11月に台湾の朝食を出すお店が雑色にできたと書いてあるのを見て、ずっと行きたいと思っていた喜喜豆漿。たまたま昼前に出張に行く予定が入ったので、フレックスを使って朝ごはんを食べに行きました。
crea.bunshun.jp

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店内。カウンターの他にテーブル席もあります。風が抜けて気持ちがいい。

駅から歩いてすぐのところにお店はあり、清潔感のある店内にはカウンター席とテーブル席が用意されています。お冷などはセルフサービス。注文は自分で書いて店員さんへ渡すスタイルでちょっとワクワクします。

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お店のメニュー。注文表に自分で書いて渡すスタイルで楽しい。

メニューには台湾料理の軽食がずらり。まさかここで饅頭が食べられるとは思っていなかったので嬉しい。豆花や鶏肉飯などもあり、どれにしようかとっても悩む。

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この日頼んだ鹹豆漿と饅頭。

結局この日は目当てにしていた鹹豆漿と饅頭に決めました。まずは饅頭。ちぎるとほの甘くてよい香りが漂います。顔を埋めたくなるくらいふわふわの生地。結構食べでもあって、これだけでお腹がいっぱいになりそう。冬の朝にひょいと買って食べたくなるような美味しさです。
続いて鹹豆漿。目がさめるようなお酢の酸っぱさとザーサイのしょっぱさ、海老の香ばしさとおぼろ状になった豆乳の口当たりが美味しい!見た目からもっと滋味深い味を想像していましたが、きちんと味にメリハリがあって美味しく、豆乳の豆っぽい味が苦手な人でも食べられる印象です。油條がスープを吸ってもちもちになっているのも良かった。
初めてお店で食べた台湾式朝ご飯は、とても楽しく満足でした。お店の雰囲気やご主人の人柄もよく、付かず離れずの接客で楽しく過ごすことができたし、知らない街での朝ごはんってショートトリップ感があって良い。仕事が落ち着いたら都内の台湾式朝ご飯を巡りたいな。


林フルーツ フレッシュジュース

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松濤美術館で真珠展を観てシボネに向かう途中、夫が「フレッシュジュースが飲みたいな」と言うので東急の地下にある林フルーツへ。夫はデパ地下のフルーツ屋さんにあるジューススタンドが好きらしく、たまにこういうことがあります。
いつもはしゃんとしている夫が、この時だけは無垢な顔つきでこぢんまりとジュースを飲んでいる姿を見るのが好き。可愛いと言う言葉には内包し難く、いつ見てもいいものだなと思います。私のジュースは桃、夫のジュースはメロン味。写真は自分のジュースの写真を撮ろうとしたら夫がスッと隣に置いてきた図です。
先にジューススタンドについていた夫に「あなたの分は桃にしておいたけど良いでしょ」と言われて有無を言う隙もなく手渡された桃ジュース。いいのだけど、この選択肢なら確かに桃一択なのだけれど、完璧に分かられている感覚にスポイルされているなと思ったり。
林フルーツのジュースは今まで飲んだフレッシュジュースの中では誇張抜きに一番美味しかったです。


トラットリア ブカマッシモ 

なんの予定もない休日。先日、古石場文化センターに小津の展示コーナーがあるということを聞いたので、ちょっと行ってみましょうかと降り立った門前仲町。路地を通りかかったところ、雰囲気の良いイタリアンがあったので、これまた思いつきで飛び込んでみました。
お昼は1980円と3960円のコースから選べて、メインとドルチェがつくかつかないかの違いです。できれば同じものを食べたかったけれど、食べきれる自信がなかったので私は前者、夫は後者のコースにしました。お冷や用のアンバーのグラスの可愛さ。光を受けた影まで素敵。

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一番初めに出てきた前菜。端正に盛り付けられた一つ一つの料理がとっても美味しそう。一瞬苦手なグリーンピースが入っていてドキッとしたのですが、ものは試しと食べていたらこれが意外と美味しくて、めでたく克服することができました。以前神田の味坊でパクチーを克服できたように、外食で苦手だと思っていた食材を美味しいと思えた時、なんとも言えない歓びで胸がいっぱいになります。

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前菜の内容はサーブ時に説明されますが、たくさんあって忘れてしまうという、なんとも嬉しい事態。そんなときはキッチンの上部にメニューがあるので、確認することができます。ちなみに私はとうもろこしのフリッタータが一番好みでした。

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続いてメイン。食べない人にもとりわけ用にきちんとテーブルを整えてくれる優しさ。お肉の絵が描かれたプレートもお茶目で可愛い。夫に一切れだけお肉をもらったのがこれまた美味しくてびっくりしました。バルサミコソースのとろりとした甘さもいい。

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そしてメインのパスタ。2人でシェアできるようあらかじめ分けるか聞かれたので、是非とお願いしました。右側はトスカーナ州のシエーナ地方名物らしい、ピチというパスタ。左はペンネアラビアータ。ピチは讃岐うどんのようにコシがあって、モチモチとしていて美味しい。トマトソースがくっきりとした印象で迫ってくる。ペンネアラビアータはピリッと辛くて、夜に飲んだあと締めで一口食べたら幸せだろうなというような味。 

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最後にドルチェ。これも二人で食べられるようフォークを2つ付けてくれるという徹底っぷり。あまりにもサービスが良すぎて申し訳なくなってくる。今度来るときはちゃんとお酒も頼んでお金を払いたい。エスプレッソもちゃんと香りが良くてクリアな苦味で美味しい。ティラミスと合わせるのが好き。
お店の中には一人で来ている人も多く、休日のランチをワイン片手にこうした場所で過ごせたら確かに素敵だなと思うなど。門前仲町は下町風情が残っていて、どの路地も美味しそうなお店が多く、散歩をしているだけで心が躍りました。帰りは小津の生家跡を訪ね、そのまま清澄白河を抜けて日本橋から帰路へ。たくさん歩き、美味しいものを食べ、良い文化に触れたいい休日でした。

 

9月に作った料理

茄子のタイ風サラダ

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9月は蒸し茄子にハマって色々なやり方で美味しく食べました。練りごまにチューブニンニクを加えて塩少々を入れたソースで和えて食べるのも良いし、出汁と一緒に冷やして食べる前に千切りにしたミョウガを乗せすだちをギュッと絞ったものもいい。写真のものは、蒸し茄子にざくざくと適当に刻んだトマトにきゅうり、パクチーナンプラー、にんにくと生姜とレモン果汁を混ぜて作ったサラダをソースがわりにかけたもの。どれも等しく美味しく簡単にできるので、来年の夏から初秋にかけてまた作ろうと思います。

チキン南蛮風30分チキン

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30分チキン作りにハマった9月。色々と味付けを試したのですが、個人的にはこのチキン南蛮風が一番好みでした。弱火でパリパリチキンを作った後に別添えでタルタルソースをかけるだけ。揚げていないので胃が弱い人でも、脂質の取りすぎが気になる人にもおすすめです。
我が家のタルタルはらっきょうの甘酢着けを細かくみじん切りしたものにマヨネーズ、半熟卵に刻んだディルを和えたものが定番。たまにみじん切りにした玉ねぎを少し加えたりもします。レシピというほどきっちり計って作っていないのですが、目分量でも失敗なくできてとても美味しいのです。余ったらトーストしたパンに乗せたり、白味魚やサーモンのムニエルに乗せても良いのも良いところ。ぜひハーブがお好きな人は試してみてください。

きゅうりのサラダ 

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買い出しに行けない日が続いて、とうとう冷蔵庫にきゅうり1本と残り物の野菜がほんの少ししかない窮地に陥り、なんとかそれっぽい料理にしようと試行錯誤して奇跡が起きたもの。冷蔵庫の食材を組み合わせてうまく作れた時の達成感ったらありません。
きゅうりは1本丸々ピーラーで薄く剥いて、そのままお皿に乗せます。傷みかけのパクチーは豆板醤と生姜・胡麻油と醤油に塩少しで和えてきゅうりの上にがさっと乗せる。最後に白髪ねぎを乗せて完成。ほぼ目分量料理にしてはうまくでき、とても美味しかった!来年の夏も作ろうと思います。

塩枝豆

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だだちゃ豆がスーパーに売っていたので「これ美味しいんだよ」と夫に教えたところ、食べてみたいということだったので家に帰って塩ゆでに。東北ではメジャーな種類の枝豆ですが、関東では珍しいのか夫は初めて食べるとのこと。レシピは白ごはん.comを参照しました。
www.sirogohan.comだだちゃ豆は香りが強いので、茹でている時からすでにいい匂いがしてウキウキします。他の枝豆より香りが良いのは勿論、特に9月上旬のものは甘みと旨みがひときわ強いのも特徴です。塩して茹でて、もうこれだけでご馳走。怖いくらい手が止まらなくなります。
夫はいたく気に入ったらしく、それ以来冷蔵庫から無くなるたびにだだちゃ豆を買ってくるようになりました。これと一緒にIPAを開けて晩酌をするのが平日夜の楽しみらしく、また一つ東北の美味しいものを気に入ってくれて密かに嬉しく思います。

 蒸しとうもろこし

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とうもろこしは蒸して食べるのが一番好き。とうとう蒸籠を買ったので、この夏はたくさんとうもろこしを蒸しました。初めはアルミ製の蒸し器とそんなに変わらないんじゃ無いかなと思っていたのですが、蒸籠で蒸すといつもより食材がふっくら仕上がってひときわ美味しく感じます。蓋を開けた時の杉の香りも良い。寒くなったらスーパーで買ってきた肉まんを蒸してもいいし、蒸したてのじゃがいもにマヨネーズをつけて食べるのもやりたいな。蒸籠がある生活、おすすめです。

夫が作った料理

9月後半からまた忙しさがぶり返し、仕事で手一杯でごはんを作る気力がなかった間、夫が色々なごはんを作ってくれたので一部だけご紹介。夫よ、いつもありがとう。


ラッサムとマッシュルームのスパイスカレー

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あまりにも美味しい、夫の作ったラッサムとマッシュルームのカレー。ラッサムはミールスについてくるものと遜色無く、カレーはこれまで家で食べたカレーの中で一番美味しかった。夫にレシピを教えてと言ったところ、下記のレシピを参考に作ったとのことでした。私の反応が良かったからなのか、最近では家を空ける前には必ずラッサムを作り置きして出かけていくようになりました。

cookpad.com

こちらのレシピを提供しているプラバニールさんは、クックパッドで「ごはん日記」なるものを書いていらっしゃるのですが、これがすごく良い。素朴でいい語り口の文章が沁み入るようです。
クックパッドのコメントを両親に伝えたところ「もっと美味しいものがあるから」とレシピを教えてもらったこと、桜の季節に茶の湯を楽しんだこと、インドの歳時記などなど。読んでいるだけで心が和みます。惜しむらくは2018年で更新が止まっていること。いつかまた落ち着いたら、インドの美味しい料理と近況を書いて欲しいものです。

舞茸の土鍋ごはん

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 しばらく使っていなかった土鍋をごそごそと出してきたので「何をするの?」と聞いたら舞茸の炊き込みご飯を土鍋でやるとのこと。ありがたくお任せして、出来上がったものを美味しく食べました。
お家で土鍋ご飯をやるときは、マルドンのシーソルトをお焦げの部分にぱらりとかけて食べるのが好きです。パリッと香ばしいお焦げにカリカリした塩の食感が美味しい。マルドンのシーソルトは友人がTwitterでオススメしていたもの。美味しいものに対するアンテナが高く、なおかつ惜しみなくそれを教えてくれる有り難さ。常に頼りにしています。
ところで、土鍋ご飯で炊くお米の美味しさにはっきりと気がついたのは、自粛期間中に作った鯛めしがきっかけでした。自分が食べたいものを作り、自分の望むペースで食べられる幸せよ。自分の食べたいものを適切に拾うことができると、家料理はますます楽しくなるのだなと思います。


ピーマンの肉詰め

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夫が作ってくれるピーマンの肉詰めはいつも綺麗な仕上がり。私が作るとなぜか肉はこそげ落ち、ピーマンはしなしなになってしまうので、いつもはてなと首を傾げます。夫は私と違って一気に作れる品数は少ない反面、作った料理のクオリティがいつも高い。料理をする人が家にいると、自分の調理方法などを振り返ることができて良いです。
ところで最近カルディで適当に買ったケチャップが美味しくて、ピーマンの肉詰めを作ってもらうときは、ソースにこれを使って欲しいとお願いしています。甘めでコクがあるケチャップで、これでナポリタンを作るとお店の味みたいになる。チリソースにしても良い。汎用性が高く美味しさの的を外さないので、自分が料理の天才になったのではないかと勘違いするアイテムです。

www.kaldi.co.jp

カルディや成城石井北野エース、はたまた紀伊国屋クイーンズ伊勢丹のような素敵なスーパーが好き。面白い調味料やお酒、ニッチなお菓子やお酒のあてになりそうなお惣菜を見ている時の小さな高揚感。スーパーは日常と非日常をつなぐ淡いグラデーションの部分を楽しくしてくれる、偉大なインフラだなと思いつつ。

過去の記録はこちらから

lesliens225.hatenablog.com

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