美味しい暮らし #12月編

 夫が平日ずっと出張しており、私の仕事も忙しかった関係で、ほぼ外食はせず家のご飯も適当なものが多かった12月。こうして振り返ると、料理をする動機の8割は夫が喜ぶ姿を見たいからなんだなと思ったり。夫がいない時のご飯を見ると、だいたいバナナとヨーグルト、はたまた玄米と焼き魚にインスタント味噌汁、たまにお惣菜のサラダとお刺身というルーティンでした。途中魚焼きグリルの掃除が面倒になり、アルミホイルに乗せて魚を焼くようにしたら熱伝導のせいかいつもより皮がパリパリして感動したり。一人のご飯もなかなか気楽でいいものです。
とはいえ夫がいないのはやはり寂しく、そのせいか体調を崩すことも多かった月でした。年々体力が落ちてきていて、それに比例して食べる量も減ったことを実感すると寂寞とした想いに捉われることがあります。牛のように胃袋がたくさんあったらいいのに。生きて健康であるからこそ食事は楽しめるという当たり前の言葉が身に沁みるようになってきた今日この頃。食べられるうちに色々な美味しいものを食べ、人生を享楽していきたいと改めて思う次第です。

祐天寺 ジェラテリア・アクオリーナ

たまたま近くを通りかかったのでアクオリーナに立ち寄った日。いつもアクオリーナのショウケースには、見慣れた味から個性的な味まで多種多様なアイスクリームがきらきらと並んでいて、うっとりと見惚れます。子供でも大人でもどなたでもどうぞと言われているようなラインナップ。冒険したいときも、いつもの味で甘やかされたいときも、どんなときでも自然と頭に思い浮かぶようなお店です。

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この日私が選んだのはピスタチオとオリーブオイルに栗。ちょうど季節限定のピスタチオ味のソフトクリームも売っていて注文間際まで悩み続けたものの「せっかく食べるなら美味しいものを少しずつ」が信条なので、ソフトクリームの誘惑を振り切ってこちらを選びました。ちまちまと掬って食べるだけでどうしてこんなにも幸福な気持ちになれるのだろう。市販のアイスクリームを自宅で楽しむ自由さも好きですが、こういったジェラテリアでしか味わえないスペシャルなアイスもいい。
ところで私がピスタチオの味に開眼したのは、小学生の頃に母が取り寄せたクリスマスケーキがきっかけでした。あの時「世の中にはこんなに美味しいものがあるんだ!」と驚いたことは、間違いなく我が食い道楽スピリッツに通じているように思います。今でもケーキ屋さんでピスタチオの製菓を見つけると必ず買ってしまうのは、あの時の目が醒めるような喜びを再確認し、当時の想い出を懐かしみたいからなのかもしれません。
ところで私が今一番気になっているピスタチオ菓子がイスラエルの郷土料理のHalva。一昨年イスラエル旅行の計画を立てていたとき、知人に「これだけは食べてきた方がいいイスラエルの名物があれば教えて」と聞いて教えてもらったお菓子です。ナッティなのに軽やかで儚く夢のように美味しいのだそう。特にエルサレムの市場で売られているものがお勧めらしく、いつか行きたい場所としてGoogleMap上でそのお店にピンを立てています。
そうこうしているうちに海外旅行なぞ夢のまた夢になってしまった昨今ですが、来たる日のために「もしイスラエルに行くのであれば、空港でイスラエルの入国スタンプは押さないでくれと伝えた方がいい」と教えられたことを頭の片隅に置いて、その日を待っています。

蒲田 autentico

この日は夫とクリスマスディナー。厳密にはクリスマスを過ぎた28日に仕事納めの慰労会も兼ねて、今年の夏に出会って好きになったイタリアンで食事をしてきました。イタリア産のビオワインが豊富でいつも料理に驚きがある、個人的にかなりオススメのお店です。自宅から遠く離れているので普段なら行くまで億劫に感じる距離ですが、そんなことが気にならないくらいここで食べた料理の美味しさが忘れられず、電車を乗り継いで改めて訪れました。この日頼んだのはペアリング付きのコース。

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この日の食前酒はレ・マルケジーネのFranciacorta Brut。のっけから好みのスパークリングではしゃいでしまう。口に含んだ途端華やかな果実と酵母感、一瞬ミードかと錯覚するくらい甘さを感じるものの、余韻は一切残さない潔さがありクリアな印象。あまりにも好みだったので、このあと自宅用に取り寄せました。

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食前酒に合わせて出てくるStuzzichinoはスペシャリテのけし餅。中身がとある食べ物なのですが、ぜひこれは下調べ無しにお店に行って直接味わってみてほしい。個人的に今までこの餡の部分に使われている食材が得意ではなかったのですが、ここに来て克服することができた印象的な料理でもあります。ランチコースでこれを頂いた時の「このお店は絶対好きなお店だ」と確信した時のことが忘れられません。

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Antipastoの1皿目は寒鰤。季節の野菜と層になっていて、2段目以降は柚子が忍ばせてあります。野菜の食感や味わいも含めて1皿で2度も3度も楽しめる構成です。このお皿はコースの中でも特にペアリングとの相性が良かった印象。Podere santa luciaのミネラル感のある苦味が脂の乗った寒鰤と絶妙に合っていました。

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Antipastoの2皿目は白子とちりめんキャベツ。確かイタリア料理にカポネというロールキャベツに似た料理があったと記憶しているのですが、それを洗練させた料理と言えば良いでしょうか。実は私白子が大の苦手でこの日は「しまった!」と内心がっかりしたのですが、そのがっかりが何処へやら、この日食べた料理の中で一番好きだといってもいいくらいお気に入りのひと皿になりました。
白子を包んだちりめんキャベツの上からバターとアンチョビのソースがかけられていて、食べる前からいい香りに満たされます。少しずつナイフで切り分けていただくのですが、中に入っている白子は食感と味に一切の嫌味や臭みがなく、濃厚なクリーム部分と旨味だけが上手く残っていてびっくり。それがキャベツの甘さとバターのかかった部分の香ばしさ、アンチョビの塩気と混ざり合ってえも言われぬ美味しさです。人目がなければその場でジタバタしたくなるほど素晴らしかった。
ペアリングはBianco di ampeleia。軽やかな飲み口と果実の芳香のバランスが良く、スイスイ飲んでしまいました。

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Primoの1皿目は牡蠣のトンナレッリ。トンナレッリはパスタの種類のことで、四角い切り口のもちもちしたロングパスタ。日本だとキタッラの名称の方がメジャーでしょうか。ローマっ子はトンナレッリ、それ以外の地方ではキタッラと呼ぶそうです。牡蠣の出汁が麺と一体になっていて、そこに白菜の青味とイタリアンパセリがアクセントとなっていて楽しい一皿。
ペアリングはHauner iancura。ドライでさらっとした口当たりにミネラル感、最後に果実のアロマがかすかな余韻を残していきます。ワイン単体でも十分楽しめそうで特に印象に残りました。

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続いてPrimoの2皿目はその名も鴨南蛮。鴨肉をパスタ生地で包み九条ネギを乗せた、ユーモアと食べる楽しみに溢れたひと皿です。直接シェフが持ってきてくださったのですが、その時の「鴨南蛮です、なんちゃって」という茶目っ気のある一言に思わず和んでしまいました。パスタの食べ応え、鴨肉の肉肉しさに九条ねぎの甘味がいいバランス。料理で誰かを喜ばせたいというカウンターの向こう側の思いが詰まったひと皿だと感じました。
ペアリングはこの日初めて出された赤ワインで、Gorghi tondi のDUME。普段赤ワインに感じるタンニンが苦手であまり飲まないものの、これは比較的渋みが柔らかくスパイス感があって、料理に合わせるとちょうど良かったです。

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Secondは本日の肉料理で、この日はラム肉をオーダーしました。赤玉葱のピュレやスパイスソルトといった調味料が3種用意されていて、一つのお肉で色々な味が試せるのが嬉しい。肉の火入れは勿論、付け合わせの金時人参も一切ムラがなくとても美味しかった。ペアリングはFevidi spadaのOrazio。単体で飲むと芳醇で重さのある赤ですが、ラム肉と合わせると不思議と軽やかに感じました。

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Dolceは焼き林檎にアイスクリーム。前回ランチコースを頂いた時も思ったことですが、ドルチェが毎回ハイクオリティで凄い。焼き林檎はクランブル生地が敷き詰められていて、上部はパリッとカラメリゼされている手の込みよう。映画のアメリよろしく上をコンコンを割ってひと口食べると、甘さとほろ苦さにサクサクとした食感、人匙のスパイスが煌めいて思わず唸ってしまいます。アイスを乗せて食べてもよし、最後に食べて口をさっぱりさせてもよし。受け手が自由に創造できる余白が楽しく、自由な喜びに胸がいっぱいになりました。

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出されるコーヒーは浅煎りで軽やか。満たされたお腹と口の中を洗い流すのにちょうどいい。
コーヒーを飲みながら美味しかったねと夫と微笑みあっていたところ、再度シェフが来てお茶菓子にと出された甘納豆チョコ。蒲田では有名だという木村屋蒲田谷口商店の甘納豆をチョコレートとカカオパウダーでコーディングしたもので、これが意外と美味しかったです。夫が「全国の甘納豆屋さんにおたくの甘納豆、チョコレートをコーティングしたら売れますよって教えてあげたいね」と言っていて発想が平和だなぁと思うなど。

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お会計をして満足して外に出たところ、シェフとパートナーの方が追いかけてきて下さりお土産にとビスコッティを頂いて恐縮しました。早速翌日、頂き物の良い紅茶を淹れてお茶菓子として頂き、昨晩の料理の余韻に浸って幸せな気持ちに。
思えば初めて夫と出会ったのは同じく蒲田ででした。あの時夫がどんな気持ちでいたのか知る由もありませんし、明らかにするつもりもありませんが、想い出の土地に違いはありません。そんな土地で4年目のクリスマスを迎えられることが何よりも嬉しく思います。食べる楽しみをピュアに感じることができる料理の数々。クリーンで落ち着いた肩肘張らない穏やかな空間。店内に活けられた季節の草花。卓上の小さなモミの枝。どれをとっても良さがあり、季節毎に伺いたいお店です。
意図していなかったものの、振り返ると今年はイタリアンやその系譜を汲んだ料理を食べる機会が多かった年でした。自粛要請期間中に取り寄せたともすけのラザーニャ、ブカマッシモのランチ、LOGの朝食など。来年はもっとイタリアンのことを歴史や成り立ち、地方毎の特性などをもっと深く掘り下げて知っていきたいと思いつつ、それぞれのお店が長く続くことを願ってやみません。

おうち居酒屋セット

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夫が携わっていたプロジェクトが無事終わり、ねぎらうために作ったおうち居酒屋セット。普段ならここまで豪勢にしないものの、夫と久しぶりに家でご飯ができる嬉しさから前日から用意をしていました。
銀杏とゆり根の天ぷらに、会津の馬刺しときゅうりの千切り。スモークチーズとたらこの味噌漬け、なすのいなかふうとマッシュルームと三つ葉の和え物、自家製いくらの醤油漬けとかんずり明太子、そしてしらすとねぎのだし巻き卵。日本酒は郡山のにいだしぜんしゅで。馬刺しと天ぷらは私も横からちょいちょいつまみました。
馬刺しは地方によって色々な食べ方がありますが、やっぱり私はにんにく唐辛子味噌で食べるのが一番落ち着く。「昔会津の居酒屋でおばあちゃんが出してくれたとっておきの霜降りの馬刺し、美味しかったよね」などと懐かしい昔話に花が咲きます。あのおばあちゃんは元気だろうか。寂れた温泉街にポツンと赤提灯を出していて、そこで食べた山菜料理や馬刺しが異様に美味しかった。お店の中には木彫りの天狗の面や有田焼の壺などが所狭しと並んでいて、つやつやに磨かれた一枚板のカウンターがあって。
「また会津に行きたいね」とニコニコした夫に「そうだね」と返しつつ、次に行けるのはいつになるのだろうか、その時にあのお店は存在しているのだろうかと思いを巡らせました。

2020年の記録を振り返って

2020年の記録を振り返ると2月までは旅行も外食も気ままにしていて驚きます。2月に松本で美味しいご飯を食べて呑気に過ごしていたことが遥か遠い昔のことのようです。

思えば本当に2020年は大変な年でした。
食事に関して言えば、6月以降大好きだったお店との別れがあり、正直今でもその喪失を受け入れることができていません。そうして次々訪れる別れの挨拶に直接会って返すこともできないまま、自分の無力感に打ちひしがれていました。一方で去っていった人たちの話を聞くと、これまでの営業自体が非常に無理があるものであったことが伺え苦しい気持ちになりました。言えた義理ではありませんが、それでもどうか皆元気で健やかに過不足ない生活を送っていてほしいと切に願います。
また「いつか行こう」と憧れていたお店が次々と消えてしまったことで、そのお店に行けるのは今しかないのだという事実にも気がつきました。いつまでもそこにあってくれるような気がしても、実はそうではない。そのお店でそのチームで作る料理を食べることができるのは、当たり前ではないのだと改めて思った次第です。2021年がどんな年になるか分かりませんが、そうしたいつか行こうと思っていたお店にも足を運んでいければと思います。
虚しさに捉われる1年ではありましたが、それでも2021年は淡々と私にできることをしていこうと思います。政治の世界へ意見を届けてくれるであろう人間を選び続けること。個人でできる範囲で支援を行うこと。学び続けること。これが現時点での考えです。
微々たることではありますが、去年からひとり親家庭の支援やフードバンクへの支援を行うようになりました。しかし私が善意で支援することが行政がお金を出さない理由にはなって欲しくない。この善意が都合の良い消費をされないよう気をつけつつ、できることをコツコツ取り組んでいきたい次第です。
どうか皆々様も健やかで。美味しいものを食べつつ本年も生き延びていきましょう。

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