遠くに行きたい。知らない街を歩きたい。
緊急事態宣言が解除されてから数日経ったある日、思い立って以前から気になっていたホステルへ行くことに決めました。夕方過ぎ、車を走らせて向かったのはTagore Habor Hostelという場所。以前知り合いがここをお勧めしていて、それ以来行ってみたいと思っていたのです。
日が沈んでからたどり着いたホステルはほぼ貸し切り状態。入り口に入るとオーナーさんのお子さんが笑顔で迎えてくれました。消毒と検温を済ませて部屋へと向かいます。
今回泊まったのはプライベート・ツインという個室タイプの部屋。部屋から夜の湾が一望できます。明日の朝、ここからどんな景色が見えるのか楽しみ。
ベッドはさらりとした無骨なタイプ。枕がひとり2つ用意されているのが嬉しい。この他に部屋にはバスタオルとスリッパがひとり1つずつ用意されています。寝間着などは無いのでご注意を。
洗面所・お手洗い・シャワールームは同じスペースにあります。
シャンプーとコンディショナーはPUBLIC ORGANICのもの。余談ですが、これで髪を洗ったらとてもツルツルになりました。旅先で試したものがオッと思うものだと嬉しいですよね。
シャワールームの全貌はこんな感じ。個室のようになっていて、外扉は鍵もかけられるので一人旅でも安心して過ごせます。
ちなみにオーナーさん曰く、ホテルから少し先の方には「くるら戸田」というきれいな道の駅があり、そこには壱の湯という温泉にワンコインで入ることができるので、大きな湯船に浸かりたい時はそこに行くのもオススメとのこと。今回はなるべく密集するような場所には出歩かず、こじんまりと過ごそうと思っていたので断念しましたが、とてもいいお湯らしいので、落ち着いた頃に行ってみたいです。
カーテンにはホステルのマークがさりげなく忍ばせてあって可愛い。コットンのような素材でできているので、朝起きた時に外からの光が柔らかく伝わって良かったです。
一通りホステルの設備を把握したあとは、せっかくなので外を少し歩くことに。ホステルの周りは街灯が多く、明るくて穏やかです。そうして海辺を散歩していると、途中ちいさな猫に出会いました。そのまま足元にすり寄ってきては「撫でて」とおねだりする姿にやられてしまい、しばらく背中を撫でて動けなくなる始末。とても人懐っこかったので、きっと地域の人から可愛がられているのでしょう。
猫と別れを告げてホステルに戻った後は、1階のダイニングでお酒とおつまみをお願いしました。夫は沼津のクラフトビール、私はここで採れた柑橘を使ったサワー。良い香りのお酒が身体に染み渡る。
ちなみにここで出会ったRepubrewという沼津発祥のクラフトビールが、誇張抜きでびっくりするくらいに美味しかったです。静岡のクラフトビールだと修善寺のベアードビールや御殿場の御殿場高原ビールは知っていたけれど、沼津にも醸造所があったなんて。
ちなみに後からオーナーさんに聞いたところ、沼津にはクラフトジンの蒸留所もあり「そこは地元の人間でも買えないくらい人気が出てしまって…」とのことでした。沼津、アツい…!
おつまみはクラッカーと柑橘ジャムの乗ったクリームチーズ。のんびり過ごしていると、途中地元の方がお店に来て「コーヒーちょうだい」と言ってテイクアウトしていくこともしばしば。
またダイニングにはいくつか建築関係の本があり、聞けばオーナーさんは元々東京で建築士として働いていたとのこと。この物件は沼津市の職員が個人的に買い取ったもので、オーナーはそのリノベーションを手がけたのだそうです。元の建物やリノベーション中の資料を見せていただき、貴重な話を聞けました。
ひと通りのんびり過ごした後は、カフェラテをテイクアウトして部屋へ。ロバート・パットナムの「孤独なボウリング」を読みながら、のんびりとカフェラテを啜ります。
窓辺の椅子に座りながら本を読み、時々夜の海を眺めるだけなのに、それがどうしてこんなに嬉しいのだろう。戸田の海を眺めつつ、心に溜まっていた澱をそっと流していくような穏やかな夜を過ごしました。
2日目の朝は晴れ。目を覚まして起き上がると、昨日の夜とはまた違った港の景色が目に飛び込んできて胸が高鳴ります。
太陽の光に照らされてきらめくブルートパーズ色の景色が目にまぶしい。この街に「おはよう!」と笑顔で告げたくなるような、気持ちのいい朝です。
今日はいったいどう過ごそう。部屋にある冊子を開いて、計画を立てる楽しさ。
部屋のライトも朝陽に透けて、昨日の夜より柔らかく見えます。
はやる気持ちを抑えながらスリッパを脱いで揃えたら、さっそく外に向けて出発です。
朝食まではまだ時間があったので、それまでこの朝の港を散策しようと出かけることにしました。トントンと階段を鳴らして降りると、至る所から朝陽が差し込んでとても気持ちがいい。昨日見た絵画も朝陽に照らされてまた違った雰囲気をたたえています。
リノベーション時に残した当時のままのガラス窓も風情がある。「昔おじいちゃんの家もこんなガラスを使っていたよなぁ」という小さな、けれどもどうして今まで忘れていられたのだろうとでもいうようなことを思い出します。
ちなみに朝食を食べた後はこの自転車を借りて街を散策する予定。とっても楽しみ。
玄関ホールに降りると、港に面した玄関から溢れんばかりの陽射しが注ぎ込んでいて、ちょうどキッチンから朝食をつくる音が聞こえてきました。ピカピカの朝陽に誰かがご飯を作ってくれる音。それだけでいつもと違う特別な朝に思える不思議。「ちょっと外にいってきまーす」と声をかけて、ホステルを後にします。
外に一歩出ると、この景色。言葉を失って、ひたすら無言でシャッターを切りました。ゆったりとした港町の風景に、地元の朝の風景がオーバーラップします。
昔、地元の港町は戸田の港町と同じように、いつでも生活の目線から海が見えていて、海のある風景が身近にありました。それから震災が起こり、自分たちの身長より遥かに高いコンクリートの防潮堤ができたことによって、海の見える風景は生活から切り離され、二度と日常風景として観ることは叶わなくなったのです。
桟橋に反射する波の光。私の生まれ育った街ではもう二度と見ることが叶わない光景が、ここにはあることがたまらなく嬉しい。
さらに歩くと、戸田港の釣り場案内の看板が見えました。お金を払えば決まった時間に漁船に乗せてもらえるそう。この日もおばあさんにお願いして船に乗っている人を何人か見かけました。
看板裏には休めるスペースも。
遠くから戻ってくる漁船。仕事を終えて、これから家でゆっくり休むのでしょうか。
ちなみに戸田の海は透明度が高く、海の底に張られたロープすら見えるほどでした。黒潮は親潮と比べてプランクトンが比較的少ないので透明度が高いということ、知識としてわかってはいたものの実際に見るとこうも違うのかと驚きます。
港に面した通りには、大きなヤマモモらしき木の陰に、地元のお年寄りの憩いの場が作られていて微笑ましい。連れ合いが「こういった場所はインドやタイでも見たよ」と言うので「アジアのお年寄りはみんな行き着く先が同じなのかもね」と答えます。
さらに歩いてホステルの裏手側に行くと河口がありました。隣接している家はそこから船を出せるようになっていていて、地形を利用して生活している姿が伺えます。
ホステルの裏手側の道は、民家や小さな食堂、ホテルの跡地などが続いています。まだ人も車もまばらでシンとしている。
心置きなくぶらぶらした後はホステルに戻り、朝食を食べることに。ホステルの朝食はボイルドエッグにリーフレタス、トマトをオリーブオイルと塩で味付けしたもの、そしてトーストに淹れたてのドリップコーヒー。いかにも旅先の朝食という風情で嬉しい。
お腹が満たされたところでいざ自転車に乗って出発しようとしたところ、同じくホステルに宿泊していた青年から「これから出かけられるんですか?」と声をかけられたので「そうなんです、なんとなくこのあたりをサイクリングしてみたいなと思って」と返します。
「そうなんですね、そしたらあの神社の鳥居が見えているところなんかオススメですよ。ジブリの世界に出てくるような鎮守の森が静かで穏やかで」
「あ、それいいですね。行ってみます」
「あとはその社に向かう途中、地元のおばさんたちが塩を作っている場所があって」
「へぇ!塩作り!」
「声をかければ見学させてくれるので、ぜひ覗いてみて下さい。行く途中にノボリが立っているのでわかるはずです」
「ありがとうございます、そこも行ってみよう」
「あとはですね、あまみやっていうレトロな純喫茶があって。おばあちゃんが営んでいるんですけど、そこのカレードリアがめっちゃうまいです」
「うわぁ、いいなぁ」
「なんか人形とかもあるんですよね、お客さんが持ってくるのをそのままにしているみたいで」
「へぇ!人がいいですね」
「そうなんですよ。このあたり、自転車で走っているだけで気持ちがいいので楽しんできて下さい!」
と、思いがけず会話から良い情報を頂いたので、まずは教えられた通り遠くに見える鳥居のある場所を目指して走ることに決めました。ホステルのオーナーから「砂浜はタイヤが取られるのでそこだけ気をつけて下さいね」と言われ、大きく頷いてペダルを踏み込みます。
同じ港なのに、視点が変わるだけで違う景色に見える。自転車でビュンビュン風を切っては時々止まってシャッターを切ります。
今朝見つけたものとはまた別の河口を見つけました。ぽつりと浮かぶ小舟がゆらゆらと揺れている。
さらに自転車を走らせると民家の軒先にタカアシガニが入った水槽がありました。戸田はタカアシガニを始めとしてメヒカリやノドグロといった深海漁業が盛んなんだそう。水族館以外でタカアシガニをこんなに間近で見るのは初めて。
さらに自転車を漕いだ先で見かけた若い芝犬。石のくぼみがちょうどいいのか、上体を預けてウトウトとまどろんでいました。耳がピンとしていて可愛い。「写真を撮ってもいいかな」と声をかけたところ、目線を上げていい表情を見せてくれました。
そうして平坦な道を進んでいると、途中から道が急勾配になってきました。額に汗を浮かべながら押し込むように自転車のペダルを踏むと、さっきまで同じ目線の高さにあった湾が眼下に見えます。
そうして坂を登りきると、今後は下り坂。目の前に地平線が見えてとっても眺めがいい。頑張ってペダルを漕いでよかった!
そうして勢いよく坂を下ると御浜海水浴場の駐車場に出ました。視界を遮るものはなく、ただただ広い海が目の前に悠々と広がります。
さらに御浜ビーチに向かって進むと戸田塩と書かれたノボリを発見。「あの人の言っていた通りだ!」とノボリに向かってペダルを漕ぐと、そのすぐ近くに塩を作っている工房が見えました。時々真ん中の炉の部分に、おばさんがひょいひょいと手際よく薪をくべています。
(見学したいけれど、感染症のこともあるし歓迎されないかもしれないな。このまま外から様子だけ眺めていよう)と思い外から見ていたところ、中のおばさんと目があい「よかったら入っていって下さいよ」と声をかけられました。
「いいんですか?」
「どうぞ、どうぞ」
「今ちょうどね、作っているところなんですよ」と誘われるがままに、建物の中へ足を踏み入れます。
「今ね、こうやって塩の花を作っているんですよ」
「塩の花って言うんですか」
「私たちはね、そう呼んでるんです。正しいのかわからないけれど。まず海から海水を取ってきて、それをこうやって煮詰めて浮かんだ塩の結晶をすくって水切りさせるんですよ」
「海からわざわざ海水を」
「そうなの、水深15メートルから組み上げて」
「そんなにですか」
「そうしないと生活のお水とか混ざっているでしょ」
「確かにそうですね…でもすごく手間暇がかかりますね」
「ふふふ。もう私たちはこれに慣れちゃっているけど、初めて見る方は驚かれますよね」
ちなみにここで使用している薪は海から流れ着いた流木や、地元の間伐材を使用しているのだそう。乳白色の青い水の上に結晶となってきらめく塩の花がとてもきれい。
作業場は清潔に保たれていて、丁寧に清掃されています。使い込まれた蛇口や金盥に身勝手なノスタルジーを感じてしまう。
店頭にはここで作られた塩の商品がいくつか並んでいたので、私も1つ購入しました。後日ここの塩でおむすびを握ってみましたが、これがすごく美味しかった。全く尖りのない丸みのある甘い塩。
親切に案内をして下さったおばさんたちにお礼を言って、作業場を後にしようとすると「これよかったら、今日暑いから」と塩飴を手渡されました。親切にしていただいたことにお礼を言って別れを告げ、自転車に乗ってビーチを目指します。
途中見かけた富士見館と書かれた建物。ビーチの周りには民宿や海の家の他に、廃業されて廃墟となったホテルなどがいくつかありました。バブル期にはリゾート地としての需要が高かったのだろうか、などと思いを馳せます。
対岸には出発地点のホステルが遠くに見えました。
戸田湾からは晴れていれば富士山が見えるらしく、マンホールにもその景色が刻まれています。
時々道路から海を覗くと、小魚の群れがのんびりと泳いでいました。
さぁ、鳥居までは後少し。気合いを入れてペダルを漕いでいると、すれ違ったおばさんに「気を付けていってらっしゃいね」と声をかけられました。思わずはにかみながら「行ってきます!」と返します。
ここからはこの舗装された道を進むことに。松の木々の向こうにポツンと桜が咲いていて、そこだけスポットライトで照らされているかのようです。
松の葉に桜の花びらが紛れ込んでいて可愛らしい。モミの木に飾るイルミネーションのようにその部分だけ光に透けて輝いている。
今どの辺りか気になって振り返ると、先ほど登ってきた坂道が遠くに見えました。
ちょうど湾の真ん中まで来たところで舗装されている道は途切れていたので、自転車を置いてここからは歩いて鳥居へと向かいます。
コンクリートの桟橋には釣り人たちが並んでいました。ホステルでは釣具の貸し出しもしているので、今度来た時は挑戦してみてもいいかもしれません。
そうしてサクサクと砂を踏みしめ歩くこと数分、やっと鳥居の下に到着しました!予想よりもかなり大きい。森が鳥たちの棲家となっているのか、メジロやモズ、カラスやトンビなどの声が聞こえて賑やかです。
せっかくなのでお参りをすることに。神社の周りに植えられたソテツらしき植物が、いかにも温暖な地域の社という風情。
参道を振り返ると木陰の向こうに港町が見えました。地元の漁師からの信仰が厚いとのことですが、確かにこの参道からの景色を見ると、神様に自分たちの暮らしが守られているように感じるのかもしれません。
この日は参道は引き返さず、そのまま神社の奥の道へ抜けてみることに。神社の裏手は猫の棲家になっているのか、3頭も猫を見かけました。
港町の猫のため、人に懐いていて警戒心が薄い。「ごめん、何もあげられるものは持っていないよ」というとこの表情。普段は釣り人から何かもらったりしているのでしょうか。
さらに奥に進むと小さな灯台がありました。天気のいい日はこの後ろに富士山が見えるのだそう。
そこからさらに進むと、大きな建物が見えてきました。沼津市が所有する戸田造船郷土資料博物館という建物と、その隣に駿河湾深海生物館が併設されています。館内の撮影はしなかったのですが、意外と展示物が多く、戸田の郷土史や沼津湾付近に生息する深海魚の生態系を知ることができて面白かったですよ
ちなみに深海魚の水揚げが盛んな戸田では、新しい試みとして深海魚直送便なるものも最近始められたのだそう。いつか機会があれば取り寄せてみてもいいかもしれません。
一通り散策が終わったので、またビーチの方へと戻ります。しかしここの湾は見れば見るほど不思議な形をしているな。まるで天然の防波堤のよう。
ちょうどお昼時になってきて釣り人はまばらになり、入れ替わるように家族連れが増えてきました。私たちも一度ホステルに引き返します。
きた道をホステルへと戻って自転車を返却し、出かける前にお願いしていたピクニックセットを受け取りました。Tagoreでは追加料金を払えば淹れたてのコーヒーとクッキーをバスケットに入れて貸し出しもしてくれるのです(2021年時点)。
早速バスケットを持ち、オーナーさんオススメのスポットをバスケットを持って巡ることにしました。まずは戸田の梅林公園へ。
車を走らせて15分程度、さらにそこから公園の小高い丘へ登ると戸田の街が一望できるビュースポットに到着しました。ジオラマのようにこぢんまりと並ぶ戸田の景色。早速バスケットからポットとマグを取り出して、しばらくそこから街並みを眺めます。
「いやーいい景色だね」と呟くと「ここから離れたくないね」と返事が返ってきて思わず笑ってしまいました。この短時間で、二人ともこの街がすっかり好きになっていることに気がつきます。
「次はビーチに行ってみよう」と声をかけ、元来た道を戻ることに。
今朝自転車で通った道を車でなぞり、御浜ビーチの駐車場に車を駐めて歩きます。さっきよりずっと家族連れが増えて、あちこちから賑やかな声が聞こえてくる。
犬と戯れる人、スキューバダイビングをする人、ただのんびりする人に釣りをする人。思い思いにこの場を楽しむ人たちに紛れて、私たちもこのあたりで残りのコーヒーを飲むことに決めました。
ちょうどベンチとテーブルがあったので、そこにバスケットの中身を並べます。美味しいコーヒーと穏やかな日差し、波の音を聞きながらのんびりできる幸せ。私は持ってきた本を読み、連れ合いはベンチに仰向けになって昼寝をしていました。
またどこからか船が帰ってくる。湾から出て行く船、戻ってくる船。
連れがそのまま気持ちよさそうに寝入ってしまったので、起こすのも忍びなくそのままビーチ周辺を歩いて散策することに。
落ちていたコンビーフの缶。誰かの落し物でしょうか。
さらに浜辺を歩いていると、目が慣れてきたのかあちこちに小魚の群れがいることに気がつきます。
絵本のスイミーみたい。鱗が光を反射してキラキラときらめく。
朝見かけた釣り人たちも、この日は不漁なのかお昼寝をしていました。こういう晴れた日にコンクリートに寝そべるとぽかぽかして気持ちがいいんだよな。
レースカーテンのような波模様を辿りながら連れが寝ているところへと引き返すと、ちょうど起きてコーヒーを飲みながら海を眺めていたところでした。
「海の方を散歩してきたよ」
「うん、いないと思った」
「桟橋の方に小魚がたくさんいてね、可愛かった」
そう言って残りのコーヒーを啜ります。
「また来ようね、戸田」
「うん、絶対来ようね」
と言いながらバスケットを片付けて車に戻り、ホステルへと戻る道すがら、なんども名残惜しさにビーチの方を眺めました。そうしてお世話になったホステルの方達にも別れを告げて、かえりがてら伊豆の方面へと向かいます。
向かった先は西伊豆の土肥。帰り際、あのホステルの青年から「伊豆の古民家を改築した建築にGELATO&BAKE SANTiというジェラートとパンの専門店があるので寄ってみてください」と教えられたのです。
※こちらの写真は公式HPから
お店はLOQUATという複合施設の一角にあります。
今年の1月にオープンしたばかりにも関わらず、特にパンは午前中に売り切れてしまうほどの人気っぷり。立派な古民家は趣を残しつつモダンにリノベーションされていました。
このSANTiというジェラート屋さんは元々鎌倉にあり、今回初めて伊豆に出店したとのこと。ジェラートに使われている素材はほぼ地元のもので、地産地消をモットーにしているとのことでした。その土地の旬の素材がジェラートで味わえる楽しさ。
この日はお天気がよくてぽかぽかした陽気だったので、テラス席でいただきました。テーブルには大きなガラスのフラワーベースに桜の枝が活けられていて、落ちた影すら美しい。非日常的なゆったりとした空気に包まれます。
私が選んだのは伊豆産のレモンのソルベと、静岡の桜を使用したジェラート。どちらも香り高く、なめらかで美味しい。連れ合いは同じく伊豆で採れた柚子とカスタードのジェラートが気に入ったらしく「家に持って帰れたら良いのにね」と言っていました。
そうしてしばらくのんびりしていると、ご近所と思われる小さな姉妹とおばあさんがやってきました。小さいさんたちが「いっぱいあるね!」「どれにしよう!」とはしゃいでいる姿に和みます。お邪魔しては悪いので、店員さんにそっとお礼を言ってその場を後にしました。
ターゲットは観光客なのかもしれませんが、どうか地元の人の憩いの場としても使える間口の広い施設であり続けてほしい。そんなことを願いつつその場を後にしました。
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戸田の穏やかな空気に包まれて、心からリフレッシュできた1泊2日の小さな旅。帰り道はずっと「帰りたくないね」「次に行けるのはいつだろう」とふたりで繰り返していました。都心から車を走らせて約2時間半という決して近くはない旅路。ですが、それだけの良さがあることは間違いありません。
日々を分刻みで時間を過ごすことに疲れてしまった、静かな場所でただただのんびり過ごしたい、スマホすら見ずにぼーっとしていたい、密集を避けてセーフティな旅をしたい…そんなレスキューミーな気持ちの駆け込み寺として、週末は戸田に出かけてみてはいかがでしょうか。穏やかな海が、あなたの心をそっと慰めてくれるかもしれません。
※今回の旅は緊急事態宣言明けに行ったものであり、状況が変わる可能性についてご留意ください。