新緑の時期がやってきましたね。毎年桜が去った後のこの季節が好きで、ついこの間も毎年この時期に必ず訪れるお気に入りのカフェへ出かけてきました。気持ちの晴れない出来事が多いですが、それでも目の前で新芽を伸びやかに伸ばそうとしている木々を見えていると心が落ち着く気がします。あなたはどうですか?
少し間が空きましたが、今月も3月に食べたものを振り返ります。
取り寄せ・外食あれこれ
ブラインドドンキー TEISHOKU LUNCH
この日はテレワークの合間にランチをしようとBlind Donkeyへ。原川さんが退任される前に行けばよかったと後悔していたのですが、友人が「最近行ったけど変わらずすごくよかったよ」と言っていてそれならと足を運びました。店内は農家の家にいるような設えで、所々クラフト感があって落ち着く雰囲気です。
カトラリーレストに使われていた小枝の演出がいい。素朴でありながらお店の意図が伝わる。
この日の定食はビーツのスープにケールのサラダ、鳥もも肉のグリルにピクルス、わけぎご飯。普段はお米があまり好きではないこともあってご飯を残しがちなのですが、ここの定食はお米がピカピカで粒がしっかり立っていて一粒も残しませんでした。素材の味を最低限の調味が引き立たせていて、本当にどれも美味しかった〜。
歳を重ねるごとにオフィス街にある定食ランチは塩分と量がキツく感じるようになってきたのですが、ここの定食ランチは身体に負担のない味付けで嬉しかったです。反面がっつりお肉!お魚!な定食ランチが食べたいという人のニーズには合わないかも。ちょっといいランチをさっと食べたい、孤食だけど「いいご飯を食べた!」という満足感で満たされたい、野菜をたくさん食べたいという時のチョイスとしてはかなり有りだと思います。
ちなみにドリンクは自然派のものを中心に揃えられていて、どれもこれも気になるものばかり。東西南北の「この縛りでこのお酒を選ぶならここ」がこの1枚に落とし込まれていて、読んでいるだけでもとても楽しい。ソフトドリンクのバリエーションが豊富なのもいい。
私は食べ物に関して「無農薬でも農薬を使っても美味しければいいじゃん」という適当なポリシーの人間なのですが、しかしやはりこだわり抜いた食材は美味しいものだなと改めて感じたお店でした。東京にありながらローカルガストロノミーのような親しみやすさと居心地の良さが体験できるのも魅力的。今度は是非とも夜に訪れたいお店です。
帰りに見かけた神田駅の第一鍛冶町高架橋。煉瓦がいい…山手線の中でどの駅が一番好きかと聞かれたらやはり神田駅だろうか。しかし都内で一番好きな駅はどれかと聞かれたら、市ヶ谷の釣り堀が見えるホームも風情があり、御茶ノ水駅の聖橋が見える今の駅舎も捨てがたい、などと思いながら帰路につきました。
えがわ 水羊かん
美味しいもの情報で頼りにしている叔母から「最近福井の水羊羹がマイブームなの!」と教えてもらったので、それなら試してみようと福井のアンテナショップで購入してきたえがわの水羊かん。レトロなパッケージがとってもいい。
箱を開けると一枚板に切れ目が入っていて、赤福のように付属のへらですくい上げる寸法です。
並べてみるとこんな感じ。
一口食べると、まるで果物を食べているかのようなみずみずしさで、さらりとした喉越しに驚きます。黒糖の豊かな香りもよく、シルキーな舌触りに「本当に水羊羹なの…?」と思うほど。これは確かに叔母の中でマイブームが起きるはずだわ、とっても美味しい。
聞けば福井では水羊羹は冬に食べるものとされていて、毎年11月から3月の終わりまで地元の各和菓子屋が販売しているとのこと。福井県民はコタツにみかんよりも水羊羹がお馴染みなんだそうです。
これまで福井銘菓といえば羽二重餅しか知りませんでしたが、まさかこんなに美味しいものがあったなんて。他の水羊羹と比べる前にシーズンが終わってしまったので、来年の冬は他の水羊羹と食べ比べする楽しみができました。すでに今から楽しみで仕方ありません。
余談ですが、同じアンテナショップで購入した谷口屋の竹田の油揚げがこれまた美味しくて。普通の油揚げより厚みがあってふわふわで、まるで食べるお布団。ちょっとお値段は張りますが、両面をグリルでカリッと焼いたものに大根おろし、ネギと七味をかけて上からお醤油をたらりと垂らしただけでご馳走になるのでおすすめです。
SUMI BAKE SHOP バナナのパウンドケーキとアプリコットとナッツのタルト
たまたま橋本駅近くで用事があった日。Instagramで見かけてからずっと気になっていたSUMI BAKE SHOPに伺いました。お店に行った時はもうすでに夕方5時を回っていたので、目当てにしていたフルーツタルトは残っていなかったものの、運よくベイクドタルトとパウンドケーキが残っていたのでこの2つをテイクアウトすることに。
バナナのパウンドケーキはほろ苦いキャラメル生地にバナナが練りこまれてあって、ビタースウィートな味。ベイクドタルトはタルト生地部分のザクザク感もよし、塩気もいい塩梅で、ホームメイドな見た目に反して甘いのしょっぱいの酸っぱいのがバランスよく構成されているお洒落な味でした。焼き菓子しか食べていないけれど、どちらも期待される味の1歩先を届けようとしている印象で、もっと他のタルトも食べてみたいと思わされる体験。橋本には年に何回か定期的に訪れる予定があるので、今度こそフルーツタルトに出会えたらいいなと思います。
しかし悔しいのはこうした誰かとシェアしたい美味しさに出会った時に、今までであれば気軽に分かち合えていた友人たちには未だにできないということ。落ち着いたら、第一線で働く友人たちに労いの言葉をかけて、ありったけの美味しいものを贈りたいものです。
ルタオ ドゥーブルフロマージュ
今年のホワイトデーは夫からルタオのドゥブルフロマージュを貰いました。以前私がテレビで見て「食べたこと無いけれど美味しいの?」と夫に尋ねていたことを覚えていたらしく、当日手渡されてびっくり。モノはもちろん、私が喜ぶだろうとニコニコしながら手渡してきた夫がとっても可愛くて。この想い出だけで来年のホワイトデーまで生きていけるような気がしました。
ホールのチーズケーキといえば、昔祖父が那須にある別荘と呼ぶには小さな、けれども可愛らしいログハウスを所有していて、そこに行った時は必ずお土産に買ってきてもらえる御用邸のチーズケーキが好きでした。祖父は今年の冬に旅立ったのですが、祖父にまつわる想い出は色あせることがなく、むしろ日を追うごとに鮮やかになっていく気さえしています。歳を重ねれば重ねるほど、こうして何かを食べた時に思い出すことが増えるようで、どの想い出もただただ愛おしい。時折寺山修司がうたった「さよならだけが人生ならば、また来る春はなんだろう」という詩を思い出しては、これから先に訪れるさようならと春を考える昨今です。
北海道稚内産 室谷岬の極上たこしゃぶセット
この日は夫が鉄腕ダッシュに影響されて、北海道より取り寄せたたこしゃぶで晩御飯。自宅でのご飯が続いてくると「たまには外食したい!」という思いが募ってくるのですが、そんな時にお取り寄せ鍋は良い気分転換になりました。
タコしゃぶはもちろん、付属のゴマだれぽん酢がなかなか美味しくて、意外な相性の良さに驚く。薬味のネギや大根おろしと絡めてみぞれ風にするのも良かったです。もちろん締めのラーメンも。
おそらく鍋ものとは今年の秋口までお別れになりそうですが、また肌寒くなって思い出した頃に食べたいお取り寄せでした。
作った料理あれこれ
飯塚宏子 たことアボカドのサラダ
スーパーでよく熟れたアボカドが6個398円で売られていて思わず買ったものの、我が家はあまりアボカドを食べないことに気がつき、どうしようかと悩んだ末にたどり着いたアボカドとタコのマリネのレシピ。遠い昔にアヒルストアで食べたものが美味しかった記憶があり、なんとか記憶を掘り起こして再現したものです。レシピのベースはレタスクラブを参考に。
このレシピ、ワインにもビールのアテにもぴったりな気の利いたおかずがさっとできるので、とても便利。火を使わないので、暑い夏にもいいかもしれません。この他には白ごはんドットコムのアボカドのおかか醤油がけも簡単でなかなか美味しかったです。
白ごはん.com しじみ汁
春になったら絶対作りたいシジミの潮汁。乳白色の出汁のグラデーションの美しさがいかにも春という風情。ひとくち飲むだけで身体いっぱいに強い旨味と磯の香りを感じます。今年は白ごはん.comのレシピで作ってみました。
和食を作るときはいつも白ごはん.comを頼りにしていますが、このレシピも情報の受け渡しに齟齬が生まれにくい設計で、とても参考になるなと改めて。確か白ごはん.comを初めて知ったのは2015年頃で、デザイナーの知人が「Webデザインがイケててレシピの書き方が優れたサイトがある」と教えてくれたのがきっかけだったんですよね。
ところでここ最近の白ごはん.comの人気を見るにつけ、インターネットが普及し、それまで料理研究家の専門領域だったレシピがアマチュアでも書けるようになり、調味料頼りや時短料理のレシピを中心に「我が家の味」情報が飽和していく中で、今の大衆が求めたのは時短でも簡単でもなく「家庭料理の正解の味」だったということなのだろうかと思うことがあります。料理研究家の領域にアマチュアが参入したことによる揺り戻しとも思えるこの現象、次はどこにいくのでしょう。小林カツ代が生きていたら意見を聞いてみたい気もします。
イナダシュンスケ「だいたい1ステップか2ステップ!なのに本格インドカレー」より 世界一簡単なチキンカレーとタミル風チキンビリヤニ
3月の後半は夫がスパイスカレー作りに開眼し始め、ほぼ毎週のようにビリヤニを食べていました。嬉しいけれどいったい何があったのか聞いたところ、夫が好きでよく通っているエリックサウスのオーナーであるイナダシュンスケ氏が最近新しくレシピ本を出版したらしく、それを読んだらやってみたくなって…とのこと。
同じ本を借りて読んだのですが、確かに元となるスパイスを事前に合わせておけば、ほとんどのレシピが3工程以内に完成するという凄まじいレシピ本でした。それでいてちゃんと美味しいインド料理が出来上がるのだから、これは作っていて楽しいに違いありません。最近は工程が頭の中に入ったらしく、レシピ本なしでもスイスイ作れています。
このレシピで作ったビリヤニを食べていた時に、夫が「自分が作ったものが美味しいと嬉しいし、それを誰かが食べて美味しいって言ってくれるのはもっと嬉しいことなんだってことがわかった」と言っていて、そういう価値観を共有できる相手になった夫を頼もしく思った出来事でもありました。
終わりに
3月は私が体調を崩してキッチンに立てない日々があったのだけれど、そんな時に夫が引き継ぎなしでシームレスに料理をできるようになっていたことに感動した月でもありました。それまでも夫は積極的に料理に参加してくれていたけれど、やはり家事の中で料理はタスクの切り分けがしにくく、二人で回すにあたって最も難しい領域だと感じることもしばしば。冷蔵庫内の在庫管理と買い出し、献立の組み立て、洗い物のタイミング…などなど、時々「自分ひとりでやった方が早いんじゃない?」と思ったりすることもありました。
しかし今回、私が寝込んでいるときに活躍してくれた夫を見て、我が家の場合は家事分担を明確にわけないやり方で良かったんだなと改めて。自分が寝込んでいる間に、自分以外の誰かが買った食材の管理をして、栄養バランスを考えた献立が作れるようになっているということがこんなに助かるものだとは。(もちろん余裕のない時などはレトルトやお惣菜でも全然いいし、何が何でも手料理に拘るわけではないですが)この経験を通じて、家族になるってことはチームビルドでもあるんだなと思った次第です。と同時に私もチームの一員として夫を少しでも楽にできているだろうかと思うなどしたのでした。
最近自分が病気がちなことと、仕事に追われていることもあって「もし子供ができたら仕事を諦めないといけないかもしれない」と思うことがしばしばあったのですが、こうして夫ができる範囲が増えていることを目の当たりにして「今はまだ頑張れる」と思った次第です。
家族の数だけ家事の役割分担の形も様々で、正解というものはどこにもないけれど、最適解を探って自分が欲しいものをできるだけ諦めないようにしていきたい、最近はそんなことを思っています。