東京で暮らす女のとりとめのない日記

暮らしとカルチャー、ミクスチャー

美味しい暮らし #10月編

やっと元の更新頻度に追いついたぞ。10月は長らく続いた緊急事態宣言が解除されたこともあって、久しぶりに外でご飯とお酒を楽しむことができた月。同時に選挙があって、暮らしと政治の関わりを静かに見つめ直した月でもありました。そんな10月を振り返ります。

 

外で食べたもの

LOS TACOS AZULES 

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投票に行ってタコスを食べた日。自粛期間中にNetflixで『タコスのすベて』を見て以来タコスの口だったので、ようやく食べに来れてうれしかった。お店には太陽の光が心地よく差し込む。使われているお皿はポップで元気になるデザイン。どこのか聞いておけばよかったな。
ここのサービスもすごく良くて、タコスを「お寿司を頼むようなイメージで注文してください」と言ったり、おすすめの食べ方を紹介してくれたり、終始適切な距離感のアテンドで心地よかった。馴染みの無い文化に手を伸ばそうとする食べ手に対して、ゆるやかに橋渡しをするサービス。
写真のタコスはポークカルニータス。具や全体の調和、味のレイヤーが素晴らしかったのは勿論、特に生地が美味しいのが印象的だった。フレッシュで、香り高くて噛みごたえのある生地。どんな具材も受け止めるおおらかさは、干したての布団にダイブするような心地よさがあった。

根室花まる 立ち食い寿司

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美容室で久しぶりに髪を切ってもらった後、次の予定までまだ余裕があったので、東急プラザの中にある根室花まるでお寿司をつまんだ。銀座でさっと小腹を満たしたいときの最適解だな、やっぱりここが好きだ。
美容室には緊急事態宣言や仕事の影響で半年近くいけず、髪の毛は腰まで伸びていた。久しぶりに会った美容師さんに「待ってましたよ!」と言われて再会を喜ぶ。「このまま伸ばし続けます?」と聞かれて「もう限界なんでばっさりいっちゃってください」と答えた。
この美容師さんとはもう5年近い付き合いになるけれど、いつもいい雰囲気の髪型にしてくれて、いつの間にかこの人以外には任せられなくなっている。毎回お任せなのに納得がいくイメージに仕上げてくれる頼もしい存在。カット中の会話も楽しい。この日もいつも通り都内の美味しいご飯屋さんの情報交換や、気になるジュエリーの話など、たわいもない話をしてけらけらと笑った。そしてこういった会話に心底飢えていたことに気づく。
感染症が流行り始めてから、美容室ではお客さんの来店頻度の間隔が伸びたらしく「うちらもどうやって生き残っていくか考えなきゃですねぇ」と言う。無くなったら心底困るので、ちゃんと通い続けようと思う。

台楽蛋糕 台湾カステラ

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夫のシャツをオーダーしに阪急メンズ館へ出かけた日。一度「この人にシャツを仕立ててください」というのをやってみたかったので、おおいに満足した。その帰り道、夫が「そういえばこのあたりに新しく台湾カステラのお店ができたよね」と言う。お店は東急プラザ銀座の地下1階にあって、ほんのり卵のいい香りがした。
台湾カステラは長崎のどっしりとして甘いカステラとは違って、素朴な甘さでふるふるとした食感だった。写真のようにかしこまって食べるよりも、手でちぎりながら食べるのが合っていると思う。シフォンケーキと卵蒸しパンの中間にあるお菓子という印象。最近だと生クリームを挟んだりするらしいけど、私はこの素朴さが愛しい。
ちなみに元々台湾カステラのブームの火付け役となったのは韓国で、それまではこんなに趣向が凝らされたお菓子ではなかったらしい。この感染症が落ち着いたら台湾に行って本当の台湾カステラを食べてみたい。

薬膳や向新 ほうれん草と蕎麦の実粥

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以前からお互いの両親を温泉旅行に連れて行こうという話が上がっていたので、気になっていた積善館へと見学に行くことにした。4回目の緊急事態宣言が解けてから初めての都外はなんだか実感が伴わなくて、繭に包まれて移動しているような不思議な感覚だった。

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せっかく来たし、このあたりでご飯をするところもないからということで、同じ旅館が経営しているカフェへ。薬膳をテーマとしているらしく、参鶏湯や季節の野菜を使った面白いお粥がメニューにあった。身体にいいかはわからないけれど、普通に美味しい。
本館は文化財に登録されているらしく、若い人たちが写真を撮って楽しんでいたのが微笑ましかった。写真をお願いされたので何枚か撮って渡すと、後ろから「めっちゃ盛れてる!」と声が聞こえた。


大阪出張シリーズ

SAZA COFFEE  アイスカフェラテ

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品川から新幹線に乗る時は必ずSAZA COFFEEで飲み物を買う。いつもはコーヒーなのだけれど、この日は朝ごはんを食べ損ねたのでカフェラテにした。10月なのにまだまだ暑くて、アイスラテがやけに美味しく感じられたことを覚えている。スーツがじっとりと汗ばんで肌にぴったりくっつくのが厭わしい。けれどそれすらどこか懐かしく感じる心の動きに、この2年間でただただ過ぎていった季節を思った。
10月後半からは感染症対策は何処へやらで、出張は入るし対面での打ち合わせもあるしで気ぜわしい日々だった。対面でする話はオフレコも含めて意味があるものだとは思いつつも、昨日と今日とで常識が異なる世界線を生きていることに時々くらりとする。みんなうまくやっていけているのだろうか。いまだに人と会うのは躊躇われるし、飲み会なんてもってのほかと思っている自分がいて、急速に元に戻ろうとする周囲にも、そしてその流れにもいまだにうまくドライブすることができないでいる。

りくろーおじさんのチーズケーキ

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取引先の男性社員に「大阪土産で買っておいた方がいいのってありますか?」と聞いたところ「僕、りくろーおじさんが世界一美味しいと思ってるんですよね。駅の中にあるんで絶対買って行ってください」と熱弁された。仕事の話よりも、もっとこういう話をしていたい。
帰り道、新幹線乗り場に続く改札内にお店があったので並んでいると、厳ついおじさんに割り込まれたので「ちょっとおじさん、並んでるんですけど」と言う。「おお、すまんかったな」と言うおじさんに「いいえ」とマスク越しでもわかるくらいはっきり笑って返す。ほんまやで、くらい言ってもよかっただろうか。
無事に持ち帰ったチーズケーキは確かにとっても美味しかった。スフレのような食感にほのかに香るチーズが上品で、ラムレーズンのアクセントがいい。確かに彼が言うとおり世界一美味しいチーズケーキだと微笑んだ。教えてくれた彼にお礼のメールを送ると「僕のりくろーおじさんを東京でもひろめてくださいね!」とのことだった。夫もえらく気に入っていたので、また買ってこよう。

551の肉まん

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大阪に行くと惰性で買ってしまう551の肉まん。忙しすぎてランチもままならない時、これに何度か助けられた。打ち合わせにつぐ打ち合わせが入ってくるとランチを食べずに1日が終わるなんてザラだ。
551の肉まんは具じゃなくて皮が主役だと思う。この甘くて弾力のある皮に染み込んだ酢醤油とカラシの美味しさったらない。文字通りかぶりついて、きめの細かい生地に唇を埋めている時に感じる幸せは寒い季節の風物詩だと思う。
食べながら夫に「551の肉まんは辛子醤油を食べるための食べ物」とLINEを送ると「おお、コピーライターっぽいね」と適当にあしらわれた。

家で食べたもの

坂田阿希子『この一皿でパーフェクト、パワーサラダ』より 揚げさんまと春菊、香菜のサラダ

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手癖で作る料理に飽きてきたので、新しいエッセンスを取り入れるためにいくつか料理本を購入した。その中でも特に美味しかったのが坂田阿希子さんの『この一皿でパーフェクト、パワーサラダ』と言う本。
サラダの本でありながら、どのレシピにも必ず肉や魚と言ったタンパク質が入っていて、PFCバランスが考えられているところ*1と、美味しさが両立していそうなところ、そして訓練すれば自分でアレンジできそうな定型があることが購入の決め手だった。
どのレシピも完成度が高いけれど、作るのには予想以上に手間と時間がかかるものがほとんどなのが地味にしんどい。それでもひとつひとつこなして行くと、アレンジをして良い部分がわかってくる。体感としては辻調理専門学校のレシピに近かった。そしてその苦労をしてでも出会う価値のある美味しさが、この本には必ずあるのだった。
写真は夫が作ってくれた、秋刀魚と香菜と春菊のサラダ。グレープフルーツがいいアクセントになっていて、何度も作ってもらうくらいお気に入りになった。

揚げ出し豆腐

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仕事の忙しさがピークで疲労が限界を突破していた時。疲れると身体のアミノ酸が枯渇してくるのか、無性に出汁の効いた何かを食べたい気持ちに駆られる。
10月で緊急事態宣言は解除されたものの、あいにく近所のお店は営業を再開しておらず、まだ外食をする状況には戻っていなかった。というのも東京都の「徹底点検 TOKYO」プロジェクトの認証検査が進んでいないため、通常営業の再開目処が立てられないらしい…
そんなわけで毎日うわごとのように「だし巻き卵とか、高野豆腐を炊いたやつとか、揚げ出し豆腐が食べたい…」と言っている私を不憫に思ったのか、夫が揚げ出し豆腐を作ってくれた日。「ご飯できたよ」と言われてダイニングへ行くと、以前夫が鎌倉で買ってきた釉薬の流れが美しいうつわに、出来立ての揚げ出し豆腐がよそわれていた。となりには先日買ったばかりの可愛い箸置きが添えられていて、夫の心遣いに思わず抱きついて感謝する。「あんまり上手じゃなくてごめんね」と言うけれど、いつだって夫が作ってくれた料理は美味しい。お世辞抜きで心からそう思っている。

シャインマスカットと水切りヨーグルト

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毎年この時期にいただくシャインマスカット。もらっておきながらだけれど、実はシャインマスカットがどうにも得意ではない。食感のいい皮に芳しい香り、まったりとして糖度が高い果肉。これが美味しさのひとつの理想型だとはわかっているけれど、なぜかしっくりこない。結局私がくだものに欲しているのは酸味や渋みなのだと思う。
人にあげるわけにもいかないし、今年はこの果実を自分なりの解釈で美味しく食べてみよう、そう思って水切りヨーグルトと合わせてみたら、思いがけず好きな味に近づけることができた。農家さんには「なんでせっかく育てたシャインマスカットの良さを消しているんだ」と思われるかもしれないけれど、この食べ方なら楽しめることがわかってうれしい。自分の好みの味の輪郭がはっきりとわかる時、味オタクをやっていてよかったな、楽しいなと思う。これからも自分による自分のための美味しいを探していきたい。

今月のおまけ

ショパンコンクール2021

ショパンコンクールをリアルタイムで追ったのは今年が初めて。小林さんのファイナルラウンドの演奏が本当に素晴らしくて、演奏後は思わずPCの前で拍手してしまった。今年はオーケストラも良くて、どのピアニストものびのび演奏できていたのが印象的だった。

youtu.be

小林さんの演奏は一つ一つの音の粒が煌めくよう。ランランの情熱的で聞き手が呑まれるようなショパンや、アルゲリッチの荘厳で激情を伴うショパンとは違って、冷静に構築された音の城だった。他のコメントでも見るように音の操り方が実に繊細で、彼女が鍵盤を叩くたびにうっとりと聞き惚れてしまう。ピアニッシモをこれだけ美しい音色で表現しながら観客に届けられるピアニストがどれだけいるだろう。優れたピアニストは魔法のように音色を扱うのだなぁ。
気持ちが沈むことも多かった10月だったけれど、思い返せばこうして素晴らしい音楽との出会いもあったのだということを思い出す。特に視覚芸術を思うように楽しめない中で、音楽は心を健やかに保つためのビタミン剤だった。いつか彼女の演奏を間近で聞けることを楽しみに、私も自分のできることをひとつずつ頑張っていこう。

夫が韓国映画にハマり始めた

自粛期間中に夫に韓国映画を啓蒙するという地道な活動を続けていたのが実を結んだのか、先日は夫自らマ・ドンソク主演の「悪人伝」をNetflixで鑑賞しようと言い出してうれしくなってしまった。思えば「工作 黒金星と呼ばれた男」に始まり、エンタメ色の強い「神と共に」や「エクストリーム・ジョブ」を見て、さらに「新感染 ファイナル・エクスプレス」で新しい境地を開かせる…ことができたのは、ひとえに夫が素直に付き合ってくれたからだと思う。好きな作品を好きな人と一緒に楽しめることがこんなに嬉しいとはなぁ。きっと私にガンダムを全シリーズ見せていた時の夫も似たような気持ちだったのでしょう。
親切なクムジャさん」や「オールドボーイ」をのっけから見せなくてよかった、いやでもこれから絶対に見てほしい…と思いつつ、これからは夫の好きな韓国映画をたくさん見つけて行ってほしいと思う。ちなみにいちばん好きな俳優はマ・ドンソクらしくて「マ・ドンソクが出てくると画面が締まる」「登場した時の安心感がすごい、俺たちのマ・ドンソク」などと絶賛していて、こんなに好きになるものだっけ?と慄いたりもした。

終わりに

気がつけば明日からもう12月。街を歩いているとイルミネーションやクリスマスツリーが目に飛び込んできて、去年もこんなだったっけ、それとも周囲を見る余裕がなかったのだろうか、などと思う。賑やかしいノエル。皆さんはどんな風に12月を過ごしますか?

 

過去の記録はこちらから

lesliens225.hatenablog.com

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*1:ただしレシピの脂質は高めなので、ドレッシングに使うオイルや揚げの工程は極力油を減らして作った。