東京で暮らす女のとりとめのない日記

暮らしとカルチャー、ミクスチャー

11月の楽しかったこと

故郷の山に登る

夫と一緒に故郷の山に登った。登ると言ってもロープウェイで運ばれるだけの楽ちん登山だけど。ちょうど昨日雪が積もったばかりらしく、チケット売り場のおじさんが懐かしいなまりで「見るとこもあんまねぇし、100円引きにしときますから」と言う。こういう不器用で商売っ気のないところが東北の人間らしいなと思う。雪の日にわざわざ運行してくれるのだから、1000円割増だっていいのに。
ロープウェイから降りると地面はふかふかの新雪に埋れていて、私たちは初めて雪を見る2匹の仔犬のようにころころと転げて笑った。

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帰りは高湯温泉で日帰り温泉に浸かって帰宅。帰宅しても肌からほんのり硫黄の香りがした。

 

バブアーでオイルドジャケットを試着する

ずっと愛用していたバーバリーのメンズのトレンチコートを従兄弟の就職祝いに譲った。学生の頃、貯めたお年玉を使って古着屋で買った思い入れのあるコート。名残惜しいけれど、就職したらちょうだいと言われていたので仕方ない。
この日、夫を従兄弟に初めて紹介した。従兄弟と別れた帰り、夫に「おじいちゃんに似て見目麗しいでしょ。小さい頃からうらやましかったんだよね」と言うと「確かにびっくりするくらいイケメンだったね。でも俺はあなたの顔が好きだよ」と返された。昔は従兄弟のような整った顔になりたいと思っていたけれど、今はこの人に需要があるならいいかと思う。最近は自分の顔がそこそこいいじゃん、と思えるようにもなってきた。

そんなわけでちょうどいい羽織りものが手元になく、流石に不便になってきたので、ずっと気になっていたバブアーのオイルドジャケットを見に行ってきた。ちょうど欲しかったショート丈のジャケットをしげしげと眺めていると、店員さんに「よければ羽織ってみますか?」と聞かれる。ぜひお願いしますと袖を通して鏡の前に立つと、想像以上にシルエットが可愛くて唸った。
どうしよう、買おうかな、でも高いな…と逡巡していると、店員さんが「じゃあ、そのまま外に出てみましょうか!」と言う。外?と思いつつ「あ、はい」とそのまま後についていく。何があるんだろうと思っていると、店員さんに「どうですか、だんだん冷えてきませんか」と訊ねられた。今ジャケットを着ているのに何を言っているのだろうと思い「冷え…ますかね?」と返す。この日はみぞれ混じりの雨が降る天気で寒かった。
「もうちょっと時間が経つと、ジャケットのオイルが冷えてくるんですよ。そうすると冷たく感じるはずです。どうですか、背中とかひんやりしませんか?」と聞かれ、確かにさっきより背中が冷たくなっていることに気づく。「あ、わかりました。結構冷たいですね」と言うと、店員さんは「そうなんですよ!私、冬もこれを着ているんですけど、インナーを工夫しないと本当に寒いんです。ウールのインナーと厚手のセーターは絶対必要ですね」と笑った。普通の接客ならポジティブなポイントを伝えてネガティブな情報は控えめにするはずなのに、一番最初にネガティブな情報を全力で伝えてから選んでもらおうとする接客が面白くて、すっかりこの人が好きになってしまった。
店内に戻ってからは、バブアーの歴史、服づくりのこだわりなどについての説明を聞く。滔々と流れるような説明を聞きながら、このひとは本当にこのジャケットを愛しているんだなと感じた。話の端々からオタクっぷりが伝わってくるのが楽しい。ネガティブな情報もしっかり伝えてくれる良心的なオタクだな…自分のありったけの持てる情報を出して、その上で相手に選んでもらおうとする光のオタク…
その後ショート丈のジャケットならこう着ると可愛いですよと6通り(!)のスタイリングを提案されたり、ロング丈のジャケットも着こなしを教えてもらったりと終始楽しい接客だった。インナー選びのポイントや、保管にメンテナンス方法まで…もう自分はこのジャケットを買ったのだろうか、と思うくらいの情報量が惜しみなく降り注ぐ。
結局メンテナンスの難しさとオイルが冷えることに悩んで購入は見送ったけれど、知識が豊富な店員さんと話すのが楽しいこと、だからこそお店でショッピングをするのが好きなのだということを改めて思い出すような体験ができてうれしかった。
後から一部始終を見ていた夫に「なんで外に出てたんだろうって思ったよ。結構長かったね」と言われて「そう思うなら声かけてよ」とつっこむ。寒い中立たされ続けるのは切なかったけど、それを上回るくらいの接客だった。いつかこの人から一着買いたい。春になったら、また試着に行こう。

 

バズーカレンズを買った

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緊急事態宣言中、散歩とバードウォッチングくらいしかすることがなかったのが習慣になり、今では朝早起きして公園に野鳥を見に行ったり、出かけた先の公園で鳥を探すようになった。過ごし方が老人のそれと変わらない。なんならよく行く公園の年寄りとはすっかり顔なじみになった。彼らは野鳥の生態をよく把握しているので、時々いい撮影スポットを教えてもらう。
今使っているレンズは焦点距離の問題で、どうしても遠く離れた野鳥が撮影できない。もうこれは一生の趣味になるだろうと腹を括って、中古のバズーカレンズを買ってみた。
写真は初めてバズーカレンズを使って撮った鳥。翡翠。わたしがバードウォッチングにハマったきっかけの鳥でもある。初めて見かけたのは新宿御苑の池の近くで、以来すっかり魅了されてしまった。チチチと鳴く声が涼しげでいい。
野鳥は遠くから見つめる、その距離感も含めて好きだと思う。その存在を干渉しすぎずに愛せるところがいい。