東京で暮らす女のとりとめのない日記

暮らしとカルチャー、ミクスチャー

美味しい暮らし #11月編

11月は長らく続いた緊急事態宣言が解除されて、やっと心から外食を楽しむことができた月でした。出歩ける喜びが大きかった分、記事の記載ボリュームも多めなので、お暇な時にどうぞ。そんな11月を振り返ります。

時間を気にせずお酒もご飯も楽しめる喜び

幡ヶ谷 サプライ

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ずっと行ってみたかった幡ヶ谷のサプライにようやく足を運ぶことができた。美味しいものの波長がなんとなく合うなと思っているインターネットの友人が絶賛していたのを見て以来気になっていたのだった。
創作系のイタリア料理ということで、海鮮系の料理が特に美味しかった。写真の白魚の唐辛子漬けとパクチーブルスケッタは、頼んだ中で特に気に入ったもの。イタリア人は辛いものが苦手と聞くし、イタリア料理というよりはスパニッシュっぽい料理なのかと思っていたのだが、後日手にとったカルミネ・アバーテの『海と山のオムレツ』という、カラブリアの郷土料理を中心にイタリアの食文化をエッセイ形式でつづった本に、この白魚の唐辛子漬けが出てきてとても驚いた。まだ見ぬイタリアの味と、知らず知らずの内に出会っていたのだった。

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結局この日ブルスケッタのほかに頼んだのは、ウマヅラハギの肝和えと根セロリにグレープフルーツのサラダと、鴨ハツコンフィと生ピーマン、秋刀魚と春菊のトロフィエ。頼む前に店員さんが各ポーションの大きさを説明して、無茶な注文をしないよう調整してくれたのもありがたかった。そしてどれも目を見開くくらい美味しくて、また絶対に行こうと思ったのだった。ちなみにこれは持論なのだけれど、見ているだけで飲めるような文字が隙間なく書かれたメニューがあるお店に間違いはないと思っている。
後日この様子をInstagramに載せたところ、友人がワインショップflowというお店に梯子することを勧めてくれたので、次はそんな楽しみ方をしてみたい。

Koutarou Hasegawa <DOWNTOWN CUISINE>

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第16回ポキューズ・ドール国際大会で日本代表を務めたシェフが、御徒町にいい雰囲気のフレンチをオープンしたと聞いてから気になっていた、コウタロウハセガワ。確か去年の夏に予約していたものの、結局緊急事態宣言の影響で流れに流れてこの時期になった。その点について何度もお詫びされたけれど、全く気にしていなかったし、何よりお店が残ってくれたのがうれしかった。
お料理はひらまつの系譜を感じるような嫌味のないフレンチという印象。出される器がことごとく素晴らしかったので、古伊万里などの器が好きな人はきっとたまらないと思う。この日は私たち以外に家族連れできているお客さんがいて、おしゃまな女の子とそのお兄さんが背筋を正して真剣にお料理を食べていたのがかわいらしかった。お店の人に聞くと、新生児を連れてくることもいとわないとのことで、その懐の深さがいいなぁと嬉しくなる。世代とわず美味しい料理を楽しめるような工夫が凝らされていて、敷居が低く間口が広い良いレストランだった。

日常を彩る甘味たち

坂田焼菓子店

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ずっと気になっていた坂田焼菓子店が、期間限定で丸の内にある一保堂茶舗にお菓子を卸していると聞きつけ、いそいそと買いに出かけてきた。みて欲しい、この姿を。どこかノスタルジックな可愛らしさがあって、身近な人が自分のために作ってくれたような温度感が感じられる。この形をそっくりそのままブローチにして、冬のコートにつけて歩きたい。
りんごのジャムサンド自体はけっこう大きいので、四等分に割って食べた。生地は層がはっきりとわかるくらい織り込まれていて、ザクザクとした歯応えと、口の中でほろほろと崩れていくのが楽しい。中央部はジャムサンドと馴染んでしっとりしていて、食感と味のコントラストがいい。
普通焼き菓子というのはちんまりとしたイメージだけれど、坂田焼菓子店のお菓子は食べても一向になくならない大きさで、食いしん坊には夢のような存在だなと思う。今回購入したりんごのジャムサンドは、ぺたんこにしたスコーンを食べているような満足感があった。
実店舗は上七軒の近くにあるらしいので、いつか散歩がてら尋ねてみたい。その後はかねてより行きたいと思っていた糸仙で、黄金色の酢豚を食べて帰ろう。

喫茶室 嘉木

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私がいつも心の中でサテライト京都と呼んでいる、一保堂の茶室。丸の内の大通りの近くにありながら、店内はいつも静かでのんびりと過ごすのにうってつけの場所だ。自粛期間が長く続いて京都に行けない間、ここでお茶とお菓子をいただくのが静かな慰めでもあった。
この日のお菓子は塩芳軒のよもぎ餅。なめらかでうすいよもぎの皮に包まれた粒餡はこぢんまりとした中に瑞々しいおいしさがあって心から安らぐ。おとなりさんはデートのまっただ中らしく、ふたりとも敬語になったかと思ったらカジュアルな言葉遣いで話したりと、そのおぼつかなさが甘酸っぱい。何食わぬ顔で本を読みつつ、マスクがあってよかったと安堵する。
ちなみにこの喫茶室には専用のスタンプカードがあり、これを貯めるのもひそかな楽しみだ。電子のポイントカードではなく、敢えてスタンプを押すというところが気に入っている。

La Terre 

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夫がお土産に買ってきてくれたLa Terreの大地のプリン ウ・オレ。たまにプリンを食べている時に感じる卵の獣っぽさがうっすらと苦手なのだけれど、ここのプリンはその感じがなくて大変美味しかった。ピュアでクリーム感の強いなめらかなプリン。牛乳瓶に入っているのも可愛らしい。
食べ終わって夫にプリン美味しかった、ありがとうと言うと「ちゃんとご飯食べてね」と言われた。後から聞いたところによれば、ちょうどこの時私の仕事が炎上しかけて追い詰められていた時期で、その姿が相当にやばかったらしい。プリンなら負担なく食べられると思ったという気遣いだったと知って申し訳なく思う。身近な人を心配させすぎない程度に働こうと反省した、そんな思い出のプリンになった。

パークハイアット デリカテッセン

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パークハイアットのペストリーシェフにジュリアン・ペリネが就任してから、彼が生み出すエレガントなプティガトーの数々に夢中になっている。忙しくてどうにもならないとき、デリカテッセンのカフェスペースで彼のケーキと紅茶をいただくのが、ここ最近のささやかなストレス発散法だ。写真のタルトオシトロンが特に好きで、ここに来るとだいたいこのケーキを頼んでいる。
端正な見た目はもちろんのこと、個性的でパーツごとの味は突出しているのに、それが優美に調和して見事としか言いようがない。モダンなのに懐かしさも感じる、それでいて艶かしい蠱惑的なケーキに毎度心が躍る。食べている最中から、彼の手のひらで踊らされているようだ。
優れたペイストリーシェフというのは、食べている最中からその後までもきらめくような余韻を誰かの心にそっと置くことができる人なのかもしれない。そしてそんな類稀なる人と、この東京という広い砂漠の中で出会えたことがとても嬉しくてたまらない。あなたもぜひ仕事に疲れたら、彼の魔法をかけられにパークハイアットへと足を踏み入れてみて欲しい。きっと食べ終わる頃には、胸の中に小さな星が光っていることに気づくはずだから。

とあるキャンプ場の固いプリン

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私の好きなキャンプ場のひとつに、いつも美味しいシフォンケーキとプリンが常備されている場所がある。夜のうちに売店でプリンかシフォンケーキを買っておき、朝早く起きてコーヒーを淹れ、それと一緒に食べるのが好きだ。まだ誰も起きてこないうちからコーヒーを淹れて、本を読みながらプリンをうすく掬って食べていると、不思議と安心する。自分の人生の手触りがしっかり感じられるような感覚。夜にシェラカップで飲むコーヒーは星がうつってきれいだし、朝に飲むコーヒーは始まりを告げるようでいい。
以前キャンプ場のご主人に、この場所をブログで紹介しても良いか聞いたところ、ここは必要だと思って探してきた人に見つけて欲しいからと言われて、ますますこのキャンプ場が好きになってしまったことがあった。安心して一人になれる、さみしくていいキャンプ場。この場所が求める人に届くことを願っている。

蔵前から日本橋までお散歩

セレンディップ(SERENDIB)

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久しぶりになんの予定もない週末。せっかくなのでお昼ご飯は外で食べようと言い、夫と蔵前へと繰り出した。目的のお店はずっと気になっていたスリランカカレーのお店。セレンディップと言う名前のお店で、スリランカ出身の男性と日本人の女性がふたりで営んでいる。ランチは14時半までと、この界隈では比較的営業時間が長いのも嬉しい。
ランチメニューはスリランカプレートとランチプレートの2種類で、前者はカレーとおかずの種類が1種類ずつ多く、後者はライトな構成になっている。私は調子に乗ってスリランカプレートを頼んだのだけれど、やはり食べきれず夫に手伝ってもらうことになったので、胃が大きくない人はランチプレートがおすすめだと思う。スリランカカレーらしい、渋みや旨味、甘みと辛味が印象的なプレート。お願いすればお米を減らしてもらうこともでき、アレルギーも考慮してくださるのでありがたい。
店内の雰囲気がとても素敵だったので聞いてみたところ、スリランカにゆかりの深い建築家のジェフリー・バワを意識しているとのことだった。デートらしき人々や、一人で食べにきている人、スリランカカレーを研究にきたと言うインド人まで、多種多様な人たちが集まる素敵なお店だった。

セレンディップ(SERENDIB)
住所:東京都台東区寿3-8-3 1階
https://www.serendib.jp

東京リバーサイド蒸留所

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スリランカカレーを食べてお腹がいっぱいになったので、蔵前から自宅までの帰り道は歩いて行くことにした。途中、蒸留所を見つけたので立ち寄ってみる。

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お店の名前は東京リバーサイド蒸留所。1階ではジンの販売をしており、夜になると2階でバーが楽しめるのだと言う。最近クラフトジンが流行っているのは知っていたけれど、まさか蔵前にも蒸留所があったとは。蒸留所と言うとウイスキー工場の大掛かりなイメージが強いので、こんなマンションの1画のような場所にあるのが不思議で仕方なかった。

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お店の前にはここで作られたジンをはじめとした、様々なクラフトジンがずらりと並ぶ。

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テイクアウトが可能なジンは、実際に香水のように香りを試して選ぶことができる。いろいろ試して、私はバナナの香りがするジンを試してみることにした。

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店員さんからトニックで割るのがおすすめだと聞いたので、そうすることにした。昼間から歩きながらアルコールを飲むって、ちょっと悪いことをしているみたいでワクワクする。
歩きながら飲んでいると、氷が溶けて少し薄まったりぬるくなることで、香りの広がりに変化が出るのが面白い。確かにこれは散歩のおともにちょうどいいかも。

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ご覧、クラフトジン。あれが巴里の灯だ…とふざけてみる。神田川に着く頃には半分飲んでいたのだが、すでにこの時点でベロベロになっていた。

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途中からついてきたセキレイ。君にあげられるものは一滴の酒くらいだよと言うと、てててと歩いて去っていった。

東京リバーサイド蒸留所
住所:東京都台東区蔵前3丁目9-3
https://shop.ethicalspirits.jp

オブゴベーカー(ovgo B.A.K.E.R)

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そのまま日本橋方面へと歩き酔いも醒めてきた頃、気になるお店が目に入ってきた。後から調べたところ、オブゴベーカーと言う焼き菓子屋さんらしい。せっかくなので、お店に入っていくつかお菓子を買うことにした。

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さっそくお店に入ると何か…いる!

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ジスタと言う看板犬らしく、なんとも愛らしい。入れ替わり立ち替わりお客さんが来る中で、一度も吠えずにおとなしくしていた。店員さんに「触ってもいいですか?」と聞くと「どうぞ!」とのことだったので、お会計のあと少しだけ遊ばせてもらった。

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ジスタに触ってもいいですか?と聴きながら手を差し出すと

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スン…とした表情。あまり気乗りしないのにかまったらいけないよなぁと、泣く泣く夫にバトンタッチすることに。

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続いて夫が「触ってもいいかい」と尋ねると、さっきのスンとした表情はどこへやら。お腹を出してゴロンと寝そべり、撫でて欲しいポーズをとってみせたので、思わず「なんで!?」と声をあげてしまった。

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みて欲しい、この恍惚とした表情を…どうして…

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「なんで私には懐かないんだろう」と言うと「こう、大好き♡大好き♡って感じでグイグイ来られるとさ、ちょっと…ってなるじゃない」と夫に返され、何も言い返せず地団駄を踏んだのだった。次に来たときはもっと仲良くなれるといいな。

オブゴベーカー(ovgo B.A.K.E.R)
住所:東京都中央区小伝馬街10-8 1階
https://www.instagram.com/ovgo_official/

日本橋ふくしま館 ミデッテ(MIDETTE)

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オブゴベーカーで犬を愛でた後は、日本橋にある福島県のアンテナショップへ。ちょうど米が切れていたので、新米を買おうと思っていたのだった。お店に入ると、今年新しく生まれたブランド米の「福、笑い」が売り出されていた。せっかくなので、キャンプ用と家で食べる用、それから蕎麦の実も買う。この季節、蕎麦の実を煎ったり揚げたりしたものを、クルトン代わりに使うのが好きだ。
「福、笑い」はおもしろい米で、あたたかいうちはやわらかくで粘り気も少ないのだが、冷めると歯応えのある食感になる。なんなら冷めた方がうまいので、これを買ってから塩むすびをこしらえるのが楽しみになった。朝握って、昼になったころに食べるのが一等美味しい。やわいお米、ふわりとした甘みの強いお米が好きな人には売ってつけだと思う。パッケージのデザインもいいので、来年のお歳暮はこの米にしてもいいかもしれない。ちなみに都内の飲食店では分とく山や、米福が使用していると言う。近いうちに、炊き方の答え合わせに行ってみたい。

日本橋ふくしま館 ミデッテ(MIDDETTE)
住所:東京都中央区日本橋室町4-3-16 柳家太洋ビル1階
https://midette.com

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帰りはミデッテで買った米を抱き抱えながら、今年復元工事が完了した常磐橋を渡る。ずっと工事現場を眺めていたのでようやっとできたかと感慨深い。

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和洋折衷の橋は、当時こそ目新しかったのではないだろうか。また渡った先にある辰野金吾設計の日銀がいい味を出している。昔はどんな人がここを通ったのだろうと、しばし空想の世界へ。

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橋の上には首都高が見えた。いつか私たちがみている光景も過去のものになっていくのだろう。

作ってもらったもの

焼き茄子

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夫が魚焼きグリルで作ってくれた焼き茄子。仕事をしているとキッチンから茄子の皮が爆ぜる音が聞こえてきて、そのあと独特の香ばしい香りが漂ってきた。まな板でトントンと言う包丁の音が聞こえたあと、かちゃかちゃと皿を選ぶ音が聞こえる。そろそろかなと思っていると、夫が「できたよ」とニコニコしながら焼き茄子を運んできた。私の横で食卓に並べながら「秋茄子を、嫁に食わせる…ふふっ」と呟く。語感が気に入ったらしく、2回も言っていた。
夏に食べる茄子のたべごたえのある食感も好きだけれど、秋の茄子の水分をよく含んでとろりとした食感も季節のものという風情があって好きだ。この日はポン酢にかつおぶしを添えて美味しくいただいた。

秋刀魚の塩焼き

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こちらも夫が作ってくれた秋刀魚の塩焼き。今年はしけが続いた影響で秋刀魚が不漁だったらしくなかなか簡単に買える値段でなかったものの、やはりこれを食べないと秋が来ないと思いエイッとカゴに入れてきた。
私が育った町では秋刀魚のみりん干しが名産で、毎年この時期になると網の上に茶色い秋刀魚が並べられている光景が風物詩だった。ちいさい頃はしょっぱくて硬いみりん干しが苦手だったのに、今になってなぜか懐かしくなる。磯の匂いに混じって鼻腔をつく秋刀魚とお醤油の匂い。この時期祖母が作る秋刀魚のお団子も好きだった。生姜とニンニクと大葉を秋刀魚のすり身と混ぜて揚げたもの。もちろん塩焼きも大好きで、私が秋刀魚を食べる様子をみた祖父が「猫よりきれいに食うわ」と言うほどだった。
今年もたっぷりの大根おろしに醤油を垂らして、すだちを絞って食べる。来年も健やかに秋刀魚を食べられますようにと祈りながら。

清蒸

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夫が作ってくれる中華風蒸し魚が好きで、11月はたくさん作ってもらった。レシピはdancyuのこの記事を参考にしているらしい。お魚はもちろん、食べる森のようなたくさんの香味野菜が本当に美味しい。

dancyu.jp

こうして振り返ると、11月は全くキッチンに立つ余裕がなく、夫に家事のほとんどをやらせては申し訳なく思う日々が続いていた。労働も家事もフローなので、その時々で引き受けられる相手が引き受けるしかないのだろうけれど、それにしても相手に負荷が偏っている状況は心苦しい。今ですらこんなに仕事が山積みなのに、今後さらに昇進していったとしてますます家事にかける時間がなくなるのではないか。そう思うとそうまで労働する理由とは…と素面になってしまう。お金があることで選択肢が増えるのはありがたいことなのだけれど、それと引き換えにしている存在の方が最近は気になっているので、2022年はそっちの存在ももう少し掘り下げていきたい。

今月のおまけ

ささやかな紅葉狩り

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山梨に行き、ほんの少しだけ紅葉狩りをした。木の枝に止まっている紅葉もいいけれど、いつからか地面に落ちて朽ちていこうとする今際の際の葉をいとしく思うようになった。

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朝露に濡れて輝く紅葉はずっと見れなかったことも相まっていっそう美しくみえ、ずっとその場で眺めていたい気持ちだった。

ウィーンフィルハーモニーウィークインジャパン 2021

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ずっと楽しみにしていたマエストロ、リッカルド・ムーティ率いるウィーンフィル管弦楽団のオーケストラをやっと聞くことができた。渡航が制限され、隔離期間などもある中で、こうして彼らが日本に来てくれたことが何より嬉しく、会場に楽団員が現れたときのあたたかく鳴り止まない拍手は終生忘れないだろうと思う。
もちろん演奏も素晴らしかった。シューベルト交響曲第4番のダイナミックさ、ストラヴィンスキーの妖精の接吻は自在にオーケストラを操る妙が素晴らしく、スケルツォからパドゥドゥへの展開が軽やかでよかった。メンデルスゾーンのイタリアはそのストーリーと相まって胸に迫るものがあり、アンコールの運命の力の大いなるうねりは生のオーケストラの醍醐味が詰まっていた。私はイタリア、夫は妖精の接吻が気に入ったらしく、良い余韻に包まれたまま電車に揺られて帰った。
学生の頃、ずっとオーケストラの演奏を生で聴きたいと思っていたのが、こうして叶った夜。あの頃の私に、しかもマエストロはムーティだよと言ったら飛び上がって喜ぶに違いない。オーケストラが奏でたさざなみのような音楽は、今でも胸の中で音を響かせている。

おわりに

街にも人が戻ってきてコロナ以前の活気が徐々に取り戻されているかのように感じているけれど、この状況を手放しで喜ぶこともできず、この自由はいつかまた終わるということを心の隅に留め置いている自分がいる。思えば2020年の10月から12月にかけても同じように緊急事態宣言が解除され、 その後年始から感染者数がおどろくほど伸びたのだった。
欧州やアメリカに住む知人たちからは、国によってはすでにCovid-19と共にあることを受け入れ、生活を平時の状態に戻そうとしているという話を聞く。一方で中国などはいまだにロックダウンを続けている。どの国も正解がない中で常にベストエフォートを強いられる、この状態はまだまだ続くのだろう。本当なら今年会えるはずだった友人たち、本当なら今年やっと帰国できる予定だった後輩たちと、言葉にならない会話を重ねた。
12月のことはまだ少し後に振り返るとして、今年のブログの更新はひとまずこれが最後になると思う。後は読んだ本や、買ったものをまとめたいと思いつつ、この時期は書きたいことが山のようにあってまとまりませんね。
2021年は皆さんにとってどんな年でしたか。良い年だった人も、そうでない人も、どうぞ等しく良いお年を。

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