東京で暮らす女のとりとめのない日記

暮らしとカルチャー、ミクスチャー

冬の福島旅 #1  東北道を通って大内宿、只見線第一橋梁へ

やっと実家に帰省する目処がついた冬の日。それでもまだ家に泊まることは躊躇われたので、宿をとって久しぶりの故郷を散策することにした。周囲の目というよりも、家族の体調があまり良くなく、万が一のことを考えて。

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東京を朝の7時半に出て福島を目指す。首都高から東北道に入り、那須SAを過ぎたあたりから雪がちらほら降ってきて、あぁ帰ってきたなぁと感じる。東京から福島に向かう途中の、少しずつ家と家の感覚が広くなり、建物の高さが低くなって空が広がってゆく光景が好きだ。この景色を眺めていると、不思議と安心する。目的地までは距離があるので、途中白河にあるSHOZO SHIRAKAWAで休憩を挟むことにした。

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那須にあるSHOZO CAFEには何回か行ったことがあるものの、ここに来るのは初めてだった。ドリンクやフードメニューはオリジナルらしく、見たことがないものが沢山あった。

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この日頼んだのは苺のエクレアとカフェラテ。夫はドリップコーヒー。外のバルコニー席からは目の前の湖畔が一望できる。隣の席にはゴールデンレトリバーを連れたご家族がいて微笑ましかった。

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2時間近く車を運転していて少し疲れたので、糖分を補給して後半の運転に備える。苺の酸味に目が冴える。

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カフェラテにはラテアートが書かれてあって少し気恥ずかしかった。フォームミルクがふわふわで、少しだけ運転の疲れが紛れる。

Information
店名:SHOZO SHIRAKAWA
住所:福島県白河市南湖14 
URL:https://www.instagram.com/shozo_shirakawa/?hl=ja

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そのまま運転を続けて約1時間、目的地の大内宿に到着した。途中から雪が激しくなり、おそらくノーマルタイヤで来たであろう車が3台ほど立ち往生しているのを見た。

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2年ぶりの大内宿は人が少なく、雪が降る音が聞こえてくるくらい静かだった。疲れたのとお腹が減ったのとで、早速贔屓にしているお蕎麦屋さんへ向かう。

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あぁ懐かしい!この実家感。磨き上げられた柱と床、煤けた梁にこみ上げるものを感じる。

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入り口にはフェルト素材で作られたネギがあった。前に来た時はあったっけかなぁと言いながら、案内されるがまま席へ。

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席は冬仕様でこたつになっていた。ぬくぬくのこたつに入りながら、お通しの味しみ大根とお漬物を食べる幸せ。しばらくここから出たくない。

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近くの囲炉裏では鮎が焼かれていた。皮目がパリッとしていて美味しそう。

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鮎の誘惑に心が負けそうになりつつ、いやいや今日の目的は蕎麦だからと思いとどまる。この日はべらぼうに寒かったので、私はあたたかいけんちん蕎麦にした。夫はいつもの高遠そば。高遠そばは写真の通り、冷たいお蕎麦をねぎで掬い、時々かじりながら食べるというもの。ここの名物で、大内宿といえば高遠そばのイメージも少なくない。

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ちなみにメニューの裏面には蕎麦がきや栃餅、身不知柿のシャーベットなどがあった。どれも魅力的でまたしても誘惑されてしまう。しかし残したら申し訳ないと思い、結局頼むのはやめた。胃が許せば食べたかったなぁ…

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目の前には蕎麦ちょこがずらりと並んでいて圧巻。

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そのままこたつで暖まりつつ机に頬を預けてぐだぐだしていると、お姉さんがクスクス笑いながら夫が頼んでいた赤玉ぶっかけごはんを運んできてくれた。ハッとしてすみません、と言いながら顔をあげると「いいのよ!そのままで。気持ちいいわよねぇ」と言われてますます恥ずかしくなってしまった。

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続いて運ばれてきたけんちん蕎麦。甘く煮た豆腐をそぼろにしたものと、ごぼうにネギが具になっている。初めて食べたけれど、つゆのしょっぱさと豆腐の甘さが癖になる、見た目に反して少しジャンクな美味しさだった。卓上七味をこれでもかとかけて食べる。

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お会計の時、カウンター脇につきたての豆餅があることを発見してしまい、またもや誘惑にかられることに。最後まで誘惑が多くて、気を抜いたら危なかったな。でも、次に来たら積極的に誘惑に負けてみてもいいかもしれない。

Information
店名:三澤屋
住所:福島県南会津郡下郷町大字大内字山本26-1
URL:http://www.misawaya.jp/m_01.php 

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外に出るとさっきより雪が激しくなっていた。身が凍るほど寒いと感じても、まだまだこれからが本番らしい。

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そんな中でも南天に降り積もった雪は風情があってよかった。雪やまないね、と言いながら集落の奥にある高台を目指す。

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絹豆腐のように滑らかな雪道に足跡をつけるのが楽しい。さく、さく、という足音と、時々人の声がするくらいの静かさで、雪に世界のありとあらゆる音が吸い込まれているみたいだと思う。

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しばらく進むと目の前に高台へと登る階段が見えてきた。

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滑り落ちないように足にグッグッと体重をかけながら1歩1歩登る。これは落ちたらたまったものじゃないな、と思うと背中が緊張でじっとりと汗ばむのがわかった。

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手すりもあるにはあるが、雪が積もっていて掴めない。もはや恐怖を通り越して笑ってしまった。

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やっと頂上に着いて振り返ると、その勾配に足がすくむ。無事に登れた安堵感で膝が震えた。ちなみに少し遠回りにはなるものの、高台にはゆるやかに登れるルートもあるので初めての人や足腰に不安がある人はそちらがいいと思う。

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頂上にある御堂を通り過ぎ、高台へ向かってさらに歩みを勧める。屋根の雪が落ちてきませんように、と祈りながら進む。

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やっと着いた!ここまでくるのに苦労したかいあって、とても素晴らしい眺め。茅葺き屋根に降り積もった雪は粉砂糖のよう。こうしている間にも雪があたり一面を白に染め上げていく。

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高台には誰かが作った雪だるまがあった。かわいいなぁ、長閑だなぁ。

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顔を上げると次々と雪が顔に触れては消えていく。人がいないタイミングを見計らって一瞬だけマスクを外し、その冷たさを堪能した。

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帰りは階段を避けて別ルートから下り、来た道を駐車場に向かって引き返す。次第に風が強くなってきた。

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そうしている間にもどんどん雪は激しくなっていく。目を開けるのも厳しくなってきて、雪の恐ろしさを思い知る。思わず新田次郎の『八甲田山死の彷徨』を思い出した。

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這々の体でやっと出口にたどり着く。安堵感からため息をついて顔を上げると、隣にある石碑に目がとまった。石碑には春は花、秋は紅葉の錦山、東の都、大内の里とある。春と秋はとりわけ風光明媚ということなのだろう。大内宿には夏と冬に訪れたことがあるものの、春も秋も見たことがないのでいずれまた訪れたい。

大内宿を出たあとは、1時間ほど柳津方面に向かって車を走らせる。目的は只見線第一橋梁の展望台。いつか見た、雪道の中をしんしんと走る只見線が見たかったのだ。

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目的地にほど近い、道の駅「尾瀬街道みしま宿」の駐車場に車を留めて歩く。大内宿も雪が凄かったけれど、只見の方はその比ではなく、その雪深さにただただ驚いた。

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橋の歩道部分が雪に埋もれてしまっていて、手すりが自分の腰よりも低い。うっかり身を乗り出しだら落っこちてしまいそうで、へっぴり腰になりながらヨタヨタと歩く。

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展望台へ向かう階段はかろうじて見えるくらいでほぼ坂だった。左手のほうにロープがあるので、つかまりながら必死に登る。途中すれ違ったカメラマンが「こりゃ無理だわなぁ」と呟きながらスキーヤーのようにするりと滑り下りていった。

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そうしてやっとたどり着いた展望台からの眺めはまさに絶景だった。水墨画の中にいるような静けさ。水面は波紋ひとつなく、雪が降っては吸い込まれてゆく。しんしんと降り積もる雪の中、ここにいたらあっというまに雪に埋もれてしまいそうだ。

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ここの欄干にも小さな雪だるまがこさえてあって愛しい。列車を待っていると、後からきたお姉さんに「今日は運行休止ですって」と言われ、教えてくれたことに感謝して先ほどの坂を下りた。列車が見えないのは残念だったけれど、なんだかもうこれだけで満足してしまった。福島の冬はさみしくて良い。冷えた身体を温めるため、急いで車に戻って今夜の宿を目指すことにした。

 

#2に続く

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