東京で暮らす女のとりとめのない日記

暮らしとカルチャー、ミクスチャー

冬の北海道を巡る旅#6 ザ・バードウォッチングカフェでシマエナガと出会う。旅の終わりは味噌ラーメンで

いよいよ旅も大詰め。今日はシマエナガの写真を撮るため、朝早くホテルを出てセコマでおにぎりを買い、車の中で食べながら撮影地へと向かった。車を走らせて向かった先は千歳市にあるザ・バードウォッチングカフェ。

以前水道橋にあるバードウォッチング専門店のホビーズ・ワールドで、北海道の自然を伝える写真雑誌faura(ファウラ)に出会い、その中で紹介されていたことがきっかけでこのお店を知った。北海道ではシマエナガに出会いやすい場所として、野鳥愛好家たちに愛されているらしい。もし北海道に行く機会があれば、ぜひ訪れたいと思っていたのだった。

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お店について予約名を告げると、フォトブースへと案内された。フォトブースの窓にはカモフラージュの迷彩ネットがかかっている。また感染症対策で、席ごとに仕切りが設けられていた。撮影可能な時間は朝の10時から16時10分まで。ワンドリンクオーダー制で、基本的に飲食は店内で行うことを推奨されているが、飲み物やソフトクリームなどは店員さんがフォトブースまで運んできてくれる仕組みになっていた。私はコーヒーを、夫はカフェラテとソフトクリームを頼む。シマエナガソフトクリームはぽってりとした見た目が可愛らしかった。

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無事シマエナガに会えるだろうかとドキドキしながらカメラを構えていると、一番初めにやってきたのはヒヨドリだった。グレイッシュブルーの羽模様が朝日に透けてうつくしい。他の野鳥に比べると体躯がやや大きいので、あまり人気はないようだけれど、主食が花の蜜という慎ましい生態も含めて私は大好きだ。

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続いてやってきたのはスズメ。こんなに寒い土地でもたくましく生きているのか!心なしか、本州で見かけるスズメよりとキリリとして見える。

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可愛いなぁと眺めていると、くるりとこちらを振り返ってくれた。朝日のスポットライトを浴びて踊っているみたいだ。小さな影すら愛おしい。

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続いてやってきたのはシジュウカラ。ネクタイ模様に白いほっぺが可愛らしい。警戒心が強いらしく、餌台の中から餌を選んだ後はその場で食べることはせず、少し離れた枝にとまってゆっくりとご飯を楽しんでいた。

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しばらくすると、トトトト...という何かを突く音がリズミカルに聞こえてきた。あたりを見回すと、アカゲラが巣箱の周囲を一生懸命つついている。もうすぐ春が近いので、ドラミングで求愛をしているのだろうか。そう思ってあたりを確認してみると…

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いた!メスのアカゲラだ。オスのドラミングをじっと見つめている。これからつがいになるのだろうか?巣箱はよく音も響くので、ドラミングにはうってつけなのかもしれない。

時計をみると、ここまでで約30分ほど時間が過ぎていた。少し手を休めるためにコーヒーに手を伸ばそうとすると、誰かが小さな声で「来たッ!」と叫んだ。

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急いでファインダーを覗くと、シマエナガがいた!初めてみた感想は意外とスムースでアザラシみたいだなという印象。小さなくちばしで一生懸命に餌を啄んでいる。頭の上下に合わせてヒョコヒョコと動く尾羽が可愛い。

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1羽が餌台でのんびりしているのをみて警戒心が解かれたのか、もう1羽もやってきた。バルルルル...という小さなヘリコプターのような羽音が聞こえてくる。

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そうしているうちに、あっという間に餌台はシマエナガたちでいっぱいになった。こんなに一気にシマエナガを目の当たりにできるとは思わず、混乱しながらもひたすらにシャッターを切る。おそらく初めの2羽がリーダー的な存在なのだろう。群でいると尾羽がユニゾンをしているみたいだった。

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5分も経たずしてシマエナガたちは去っていき、しばらくするとさっきまでドラミングをしていたオスのアカゲラが餌を食べにやってきた。十分小さいはずなのに、シマエナガを見た後だと大きく見える。ドラミングをしてヘトヘトになったのだろうか、一心不乱に餌を食べ続けていた。

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別の餌台にはヤマガラがやってきていた。丸々としたフォルムが愛らしい。よく見ると、足の付け根の部分まで、羽毛に覆われていることに気がつく。

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しばらくあれでもない、これでもないと気に入らない餌をポイポイ選別した後、お気に入りの餌を見つけたらしく、満足そうに咥えて自慢するように見せていた。

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程なくして、またシマエナガの群がやってきた。さっきの食事で安心したのだろうか?今回は一気に群ごと飛来してきた。この餌台には砕いた胡桃などが入っていて、カロリーの高いものを好むシマエナガにとってはご馳走なんだそうだ。道内では酪農家が撒いた牛脂などをかじる姿も目撃されているのだという。

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一心不乱に餌をついばむ姿に野生を感じる。油分を豊富に含んだナッツ類や牛脂の他にも、小さな木の芽や昆虫を食べるシマエナガの姿も報告されており、基本的には雑食らしい。特に樹液が好物らしく、冬になるとホバリングをしながら凍って氷柱状になった樹液を舐めるシマエナガが観測されるそうだ。

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小さなくちばしで餌を啄んでいく可愛らしさ。こうしてゆっくり観察しているとと、彼らのまぶたは黄身がかっていることに気付く。まるでたんぽぽ色のアイライナーをキュッと引いているようだ。

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しばらくしてシマエナガの数が減ると、チャンスとばかりにシジュウカラが間に割り込み、小さな体で威嚇して彼らを追い払っていった。小さな生き物同士の闘争を見て、彼らはあくまでも野生動物なんだということを思い出す。

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シジュウカラが去った後は、おそらく近くで様子を伺っていたであろうシマエナガが2羽で戻ってきた。

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続いてアカゲラもやってきた。アカゲラがとまると餌台が揺れて、シマエナガたちも振り子のようにブラブラと揺れる。しかし、そんな揺れは何のその。シマエナガたちはめげずに餌を啄み続けていた。

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ここまで撮影したところで時間は午後の13時。流石にお腹が減ってきたので、店内でサンドイッチを注文してガツガツと食べた。サンドイッチにはミネストローネもついてきて、フォトブースでキンキンに冷えた身体が温まる。カフェスペースはお日さまの光がさして心地よく、ここからも野鳥たちを眺めることができた。恋人どうしや年配の女性たちなど、多種多様な人たちが静かに野鳥を眺めている。

しばらくするとカフェの中にピンポーンというベルが響きわたった。なんの音かと首を傾げていると、店員さんが「今ちょうどシマエナガがきたみたいです」と教えてくれた。フォトブースには呼び鈴が設置してあって、シマエナガが来たら撮影中のカメラマンが善意で知らせてくれるらしい。店内にいる人たちが、一斉に窓を覗き込む。「あっ、見えた!」「あの鳥かぁ」などと、和やかな雰囲気が店内に満ちていった。

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あとからその時の写真を夫に見せてもらうと、珍しく枝にとまってるシマエナガの姿があった。ああ、私も見たかった...

これまでやってきたシマエナガの中では比較的冬毛がフワフワしていて、イメージするフォルムに近い。ジュルリジュルリと地鳴きをして様子を伺っていたらしい。

マシュマロのようなぽてんとした体、小さなくちばしにつぶらな瞳が愛らしい。

警戒しているのか、上や横を気にしているようだ。しかし、どの角度でもかわいらしいな。

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しばらくしたあと、シマエナガは餌台とは違う方角に飛び立っていったそうだ。羽の一枚一枚が光に透けて美しい。

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そうして私がサンドイッチを食べている間、続けてもう1羽のシマエナガがきていた。小さな足、フワフワのお腹。己の食欲が恨めしい。

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こちらのシマエナガもキョロキョロと左右を気にしていたそうだ。餌台には近寄らず、またこのあとの出現頻度が低くなったことから、もしかしたら近くに猛禽類がいたのかもね、とフォトブースのカメラマンたちが話をしていた。

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横から見た飛び立つ姿もまた美しい。流線型のフォルム、紅茶色の羽毛と墨色の羽のコントラスト。

結局午前の部で観察できたのは合計4回(うち1回は見逃し)だった。しっかりお昼も食べたので、気合を入れ直して午後の部の観察も始める。

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スーッと目の前を横切って目の前に現れたのはゴジュウカラ。スタッと餌台の縁に立ち、サッとひまわりのタネを咥えると、そのままサーッと飛び去っていった。なんてエレガントなんだ。

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続いてヤマガラもやってきた。同じようにひまわりの種を咥えるが、どう見てもサイズに見合っていない。流石にそれを食べたら喉につまらせるんじゃないかとハラハラして見ていると…

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流石に無理だと分かったのか、餌台にひまわりの種を戻していた。

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徐々に日が陰って寒くなってきた。思わずたまらなくなってホッカイロを購入する。戻ってファインダーを覗くと、遠くでコガラがふくふくとした冬毛を風にそよがせていた。

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しばらくすると、またシマエナガがやってきた。しかしあたりを気にしているようで落ち着かない。結局すぐまた飛び立っていってしまった。時間は夕方の15時を回ろうとしていたところ。夜行性の動物たちがそろそろ起きてくる頃合いだからだろうか。

f:id:lesliens225:20220414103806j:plainそんなシマエナガの警戒心には我関せず。マイペースに餌をついばむシジュウカラにはたくましさを感じる。

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遠くで遠慮がちに見ていたコガラも、この時ばかりは積極的に餌を啄みにきていた。残り時間は後30分ほど。今日観察できるシマエナガはこのくらいかなと思いつつも、時間いっぱいまでは粘りたいと思いホッカイロを握りしめる。

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そんな願いが通じたのか、1羽だけ餌台にやってきてくれた!これで見納めだと一生懸命シャッターを切る。

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やはりややあたりを警戒しているものの、比較的長い時間餌を啄んでいった。途中シジュウカラが来たので、また追い出されるのだろうかと冷や冷やしたものの、群れでなければ気にしないのか、二羽で仲良く餌を啄んでいた。

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あっという間の6時間。結局この日観察できたシマエナガは以下の通り。

午前 (10:00〜13:00) 4回

午後 (13:10〜16:10)  2回

ずっと座っていたのでお尻が煎餅のようになったけれど、貴重な野鳥たちの生態を間近で観察することができたので、喜びの方が大きい。カフェ内のバードウォッチャーのマナーもよく、鳥を脅かないような工夫をしていたりと、安心して観察する事ができた。自然に介入して自分のエゴを優先している以上、せめてマナーだけは守って鳥たちが健やかに過ごせるようでありたい。

ところでシマエナガアイヌ語で「ウパ」と言う。意味は雪の鳥。冬になると群れになって雪の上に降り立つため、この名前になったのだという。これから彼らは春にかけてつがいを見つけ、群れで子育てをし、夏には雛たちが北海道のあちこちで見かけられるらしい。

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そのまま時間になったのでお店のスタッフにお礼を言って車に乗り、新千歳空港にあるレンタカー屋さんへと向かった。3泊4日の旅もこれで終わりだと思うと寂しい。久しぶりに仕事から離れて大自然の中で過ごしたことで、思っている以上にリフレッシュできたことに気づく。車内では旅の思い出や、東京でのこれからの生活の話などをした。

空港についてから出発まではしばらく時間があったので、思い切って味噌ラーメンを食べていくことに。あまりの寒さに体が芯から冷え切っていて、なんとなくカロリーがあるものを食べたい!という気分になっていた。もしかしたらシマエナガもこういう気持ちなのかもしれない。

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立ち寄ったのは新千歳空港の中にある北海道ラーメン道場の一角にあった「ラーメン空」というお店。こってりした味噌に炒めたとうもろこしが甘くてまさにこれが食べたかったという味。旅で食べるラーメンってどうしてこう格別に美味しいんだろう。

「今日はもう晩ご飯作らなくていいね」「うん、後は適当にお土産を見て帰ろう」と言って新千歳空港内を散策する。そのまま飛行機に搭乗した後は、疲れ切っていたのか二人ともすぐさま眠ってしまった。

 

 

<余談>
バードウォッチングカフェの撮影ブースは、被写体を撮ることに特化した造りになっているので、窓や空調はない。真冬は気温がマイナスの世界に長時間いることになるので、防寒対策は万全にしていく必要がある。

# 参考までに当日の私の服装を以下に記すので、もし行かれる人は参考にしてください。ダウンはフィルパワーが750以上あった方が安心です。

当日の衣類

・mont-bell スーパーメリノウールラウンドネックシャツ・タイツ・腹巻
・PETIT BATEAU タートルネックシャツ
・mont-bell スペリオダウンラウンドネックジャケット
・MAMMUT Xeron IN Hooded ジャケット
・mont-bell パウダーグライド パンツ
・smart wool ハイキングミディアムクルー
・THE NORTH FACE ヌプシブーティ ショートタイプ
・mont-bell クリマプロ200 グローブ

これでも正午以降は寒くて手足がかじかんでくるので、靴の中にいれるホッカイロと張らないホッカイロは絶対に必要だと感じました。ただ成人男性はそれほどでもないのか、比較的薄着だったり、私とほぼ同じ格好をしていた夫も「まぁ寒いかな?ってくらいだったよ」とのことなので、男女差があるのでしょう。
ドア・トゥー・ドアであれば、上記のような徹底した防寒対策は必要ではないと思いますが、そうは言っても慣れない雪道を歩いたりと危険はあるので、冬の北海道にはアウトドアスタイルで行くのが無難だと感じます。万が一に備えてmont-bellのスノースパイクシングルフィット(持ち運び可能なミニアイゼンみたいなやつ)も持っていったのですが、アイスバーンがデフォルトな北海道では歩くときにかなり重宝しました。むしろ北海道では凍っていない道を探す方が難しい。
何より楽しい冬旅をするためには、やっぱり万全の装備でいくことに越したことはないと感じます。後日、札幌出身の友人に「この間札幌に行ったんだよー」と報告すると、「今年は特に積雪量が多くて厳しかったんだよ」と教えてもらいました。