東京で暮らす女のとりとめのない日記

暮らしとカルチャー、ミクスチャー

上野という街の奥深さへいざなうホテル NOHGA HOTEL上野 宿泊記

6月の初め、ずっと気になっていたホテルへと宿泊することにした。ホテルの名前はノーガホテル上野。この記事にも書いていたけれど、あの野村不動産がとうとうホテル事業に参入したと聞いて、一度は行ってみたいと思っていたのだった。

当日の天気は晴れ。雑居ビルが立ち並ぶ繁華街を抜けると、目の前に植栽がみごとなホテルがどどんと現れる。グリーンがあしらわれているホテルが大好きなので、この時点でかなりテンションが上がった。

ホテルはほぼバリアフリー。ただしエントランスからエレベーターまでの空間はやや狭く、混雑時に車椅子やベビーカーで通るのにはためらう広さだった。必要な人は事前にインターホンでスタッフを手配し、サポートをお願いするのがおすすめ。

チェックインを済ませてカードキーを受け取る。カードキーは、ゲストに対して日本文化を感じてもらうため、家紋アートを手がける「京源」にデザインを依頼したらしい。よく見るとピクトグラムで構成されていて凝っている。

エレベーターを降りると、部屋への案内がダウンライトで照らされていた。最近のデザイナーズホテルは、このアプローチが多い気がする。ホテルの雰囲気作りはもちろん、壁面の経年変化も目立たないのでいい。それではさっそく部屋の中へ。

今回はhahf経由でツインルームに宿泊。部屋は全体的にナチュラルな印象だ。壁面にコートハンガーを用意していたり、テレビボードを無くしたりすることで、実際の数字よりもゆったりとした間取りに感じさせているのはさすが。マットレスはエアウィーブだった。

ベッドの目の前には43インチのテレビ。ミラーリングにも対応しているのはもちろん、HDMIケーブルもあったのでFirestickを使うこともできた。

ベッドの脇にはメモ帳とホテル案内用のタブレット、それからUSBコンセントと金庫まで。このメモ帳の書き心地が、あまりにも良すぎて驚いてしまった。上野にあるITO BINDERYという紙製品を手がける工場のものらしい。

ベッド左奥にはラウンジチェアが2脚とサイドテーブルが1台。それからルイス・ポールセンのAJ floor!

実は読書灯として気になっていたのだけれど、実際につかってみると電球の光が直接当たって目が疲れやすいように感じた。家具は使ってみないとわからないので、ここで体験できてよかったな。しかしこのたたずまい、何度見ても素敵だ。

サイドテーブルには周辺マップとホテルのコンセプトブック。これがとてもよかった。ホテルを起点に周辺の街を散策してみようと思えるラインナップに、滞在がよりいっそう楽しくなるようなコメントまで。ただのデザインホテルではなく、町のハブとしてホテルを使ってほしいというメッセージがしっかり伝わってくる。

洗面部分とクローゼットは隣接していて、すっきりとまとまっていた。鏡を大きく取ることで空間が広く見えるし、導線がわかりやすくてストレスがない。コンセントが多いのも好印象。クリンリネスが面倒そうな素材だけれど、磨き残しひとつなくて清掃担当のプロフェッショナルさを感じた。

洗面所まわりにはサービスのオリジナルミネラルウォーターが2本、そしてハンドタオルとアメニティにティッシュが備え付けられている。ハンドソープはOSAJIだった。

コップはプラキラ。個人的にガラスのカップが好きなのだけれど、これはプラスチックとは思えないデザインで感動した。これなら子供でも割る心配がないし、安心して使える。

洗面台の下にはドライヤーとハンドタオル、それから替のトイレットペーパー。ドライヤーはテスコムのNOBBYで、なかなかの風量だった。ドライヤーが入っている袋もモダンでいい。

クローゼット側の引き出しの中にはソリッドでかっこいいくつべらと洋服ブラシ。それから洗濯物をいれるための袋も。2階にはコインラインドリーがあるので、長期滞在中はそこを利用することができる。白は色が透けて下着などを持ち運ぶときに気を使うので、違うカラーならよかったかな。

さらに棚の上にはガウンタイプのルームウェアと使い捨てのスリッパが置かれていた。ルームウェアはアトモスフェール・ジャポンのもので、すべすべとした生地が心地いい。

そして個人的にすごくいいと思ったのがこのスリッパ。よくあるペナペナとしたものではなく、肉厚でふかふかのスリッパなのだ。メモ帳といい、触れて使って「おっ!」と思える仕掛けがあちこちにあると、ホテルへの満足度が上がる気がする。

あとはデッドスペースをバスタオル置き場として使っているのにもグッときた。お金をかける所とそうでない所、そしてかけてない所の見せ方が上手だ。

お手洗いはウォシュレット付き。ノーガホテルはスーペリアダブルからバストイレが別になるので、気になる人はその基準で選ぶといいかも。ちなみにバスタブがつくのはツインから。

バスルームは広々!レインシャワーもありいたれりつくせり。向かって左手にあるスイッチでは、バスルームの中の明かりを調節することができる。さすがに自動給湯はないけれど、水圧も十分あるのですぐにお湯を張ることができた。

バスルーム内のアメニティもOSAJI。初めて使ったけれど、思ったより香りはひかえめで、万人受けしそうなナチュラルコスメだった。

ぼちぼちお腹も空いてきたので、家から持ってきたハーブティーを飲みながら今日の夕食先について会議をする。バルミューダのケトルは初めて使ったけれど、使ってみると意外と重心が安定せず注ぎにくかった。こういうのも使ってみないとわからないよな…と思う。

会議の結果、夕食は最近この近くにできたというナポリピザのお店にいくことにした。ホテルの裏手を通って小島町方面へと向かう。普段は通らない道を歩くだけで楽しい。

途中、鳥越神社御祭礼の準備をしているところに遭遇した。これからおみこしが来るらしい。通り過ぎる途中、町内会のひとたちが「今年はできますね」と話しているのが聞こえた。

さらにその途中には、小学校のような建物があった。どうやらデザイン分野で働くクリエイターたちが起業するため、場とコミュニティを提供する支援施設らしい。近くの公園では大人から子供まで遊んでいて賑わっていた。

さらにお店に向かう途中、興味深い建物をみつけた。ビルの上に日本家屋が建っている…!ここの通りのビルはモザイクタイルの壁が多くて、昭和レトロな雰囲気がただよっていた。

ホテルから出て約15分ほど、やっと今日の目的地に到着した。お店の名前はFakalo pizza gallery。ナポリピザがメインのピッツェリアだ。

店内はまっしろでミニマルなつくり。テーブル席が12席ほどで、すべての席からバーカウンター越しにピザ窯が見える。メニューはドリンク、ピザ、サイドメニューにデザートと、一通り揃っていた。

ピザのメニューは、トマトソース、チーズベース、包み焼き、燻製チーズの4種類に分類されていて、その中から好きなものを選んでいく。包み焼きも気になったけれど、ここはベーシックにトマトソースにする。夫は燻製チーズが気になるということで、1つずつ選んでお願いした。

まずは食前酒。わたしはこのあとジムにいくのでレモネード、夫はモレッティで。冷えたグラスと缶を渡されるスタイルで、くつろぐのにちょうどいい。

前菜の生ハムとルッコラのサラダは、具材はもちろん、かかっているオイルとチーズが目を剥くほどおいしい。となりの席にいた若い恋人たちも同じものを頼んでいて、「おいし〜!」とはしゃいでいた。つくづくイタリア中部の料理はムラっけが美味しい文化なんだなぁと感じる。

続いてやってきたのはピッツァ・マルゲリータ。ぐつぐつと表面が煮えていて、トマトとチーズ、そしてバジルのいい香りが漂ってくる。生地を持とうとすると、ドゥルンとすべっていってしまいそうなくらいなめらか。ひとくち食べると、薪の香ばしい香りとジューシーなトマトが口いっぱいにひろがった。

次にやってきたのはアンチョビのピザ。燻製のチーズがいい匂い!玉ねぎは食感が残っていて、しゃくしゃくと音が鳴るのがたのしい。そしてやっぱり生地がなめらかだ。もちもちとした弾力よりも、とろけるような質感とエアリーさが印象的。イメージするナポリピザが讃岐うどんだとしたら、ここのピザは京都のうどんだと思う。ちょっと疲れているときでもすすれるピザ。ピザ界の離乳食。

ただオープンしたてということもあり、オペレーションは見ていてハラハラするところが多かったので、接客を重視する人やデートではおすすめできないのが正直なところ。食体験としてはとてもよかったので、味にプライオリティを置く人には強くおすすめしたい。

ピザを2枚も食べてお腹がいっぱいになったので、今日はこれでおひらき。お店をあとにして佐竹商店街を横目にホテルへと帰る。

夜のダイニングは開放感をうまく照明でコントロールしていて良い雰囲気を演出していた。

ホテルに帰ったあとはジムで運動をした。コロナ対策で予約制なので、のびのびと利用することができてありがたい。有酸素運動トレッドミル、トレーニングマシンは上半身を鍛えるものがほとんどで、フリーウェイトにはダンベルがあった。ミネラルウォーターもあり、この規模感のホテルなら十分だと思う。

運動したあとは部屋のお風呂でゆっくり体の疲れをとった。近くには銭湯もあるので、街を楽しみたいひとはそちらがおすすめだ。

翌朝、朝食チケットを持ってダイニングへ。まだ時間があったので、2階のバルコニーで本をよむことにした。緑が生茂っていていい空間!コンビニで買ってきたアイスを食べているひとがいたり、PCで作業をしているひとがいたりと、思い思いに過ごせる余白がいい。

ライブラリーラウンジは思想が感じられるラインナップで、アートや日本文化に関するものが多かった。

朝のダイニングは昨日とうってかわって、さわやかな印象だ。

そのままお店の人に案内されて席に着く。カトラリーはクチポール。マスクケースもある。

朝食はメインがエッグベネディクトもしくはフレンチトーストの洋食、または和食の3種類から選べる。この日は私も夫もエッグベネディクトでお願いした。

ドリンクは愛媛にある無茶々園のオレンジジュースと、蔵前にある蕪木のホットコーヒー。コーヒーはおかわり自由なんだそう。

サラダはキャロットラペにミモザ風サラダ。ドレッシングにはビネガーが効いていて爽やかだ。

メインのエッグベネディクトと一緒に運ばれてきたのは、具沢山のスープに3種類のパン、フルーツとヨーグルト。どれも過不足なく美味しくて満足。最後にもう一杯だけコーヒーをいただいて一息ついた。食べ終わった後はまたジムへ。時間までゆったりとホテルを満喫した。

チェックアウトの時間になったのでフロントへ。気に入ったアメニティはここで買い揃えることができる。カードキーを渡すと係りの女性から「ゆっくり休めましたか」と尋ねられたので「おかげさまで、ありがとうございました」と返した。若い人だけでなく、仕事ができる雰囲気のミセスや、東京観光にきたと思しき老夫婦、はたまた子連れの夫婦などもいて、思っているより客層が幅広い。ああ、いいホテルだなぁと思う。

あっという間の1日だったけれど、予想していたよりずっとよくて、野村不動産のホテル事業にかける意気込みを感じることができた宿泊体験だった。予算、デザイン、周辺地域へのアプローチなど、デベロッパーとしてのノウハウを生かして、野村不動産だからこそ提供できるホテルを作り上げている。今回の宿泊で上野という街のイメージが刷新された気がした。

サービスがかなりいいと感じたのも嬉しい誤算だった。野村不動産は2019年に庭のホテルをM&Aで取得しているので、そこからノウハウを吸収したのだろうか。何度も宿泊してみたい、心からそう思うホテルだった。

帰りはリニューアルオープンした国立西洋美術館へ。以前よりもかなり風通しのいい空間に仕上がっていて気持ちが良かった。のんびりと散歩したあとは、のどを潤すために閒茶へ。

次に来る時はレンタサイクルをしてもいいな、今度は秋葉原のノーガホテル に宿泊してみようかななどと思いながら、次のショートトリップへと思いを馳せた。

 

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