東京で暮らす女のとりとめのない日記

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今こそ、福島。福島県出身者が教える、絶対にはずさない温泉宿 5選

もうすぐゴールデンウィーク。そろそろ旅行先について考え始める人も多いのではないでしょうか。しかし、ようやく旅行が楽しめるようになってきたとはいえ「まだ海外はハードルが高い、しばらくは国内旅行を楽しみたい」と思っている方もいるはず。そんな方にお勧めしたいのが福島県です!
旅先に福島県を勧めると「福島県って何があるんだっけ?東北だから遠いんじゃない」と言われることもしばしば。確かに、福島県民は商売が下手ならアピールも下手、さらに口下手と3拍子がそろっていて、良さを知っていてもおおっぴらにすることができません。でも、ちゃんと魅力はあるんです!

旅先としての福島県の魅力

まずなんといっても食べ物が美味しい!新鮮なお魚からお肉に野菜、果ては日本酒やワインなどと、美酒佳肴に事欠かず、福島県で食べられない食材はないと言っても過言ではありません。

また、風光明媚な大自然が楽しめるのも福島県ならでは。桃源郷と称される花見山を始め、美しい湿原の尾瀬ヶ原など、訪れる人たちの心を静かに癒やします。さらに福島県は温泉地が136カ所もある、まさに温泉天国!美味しいご飯を食べて、美しい自然に癒やされて、いいお湯につかって…帰る頃にはリフレッシュしている自分に気がつくはずです。

そして実は、東京から福島県は意外と近いんです。新幹線に乗れば、主要な観光地には2時間足らずで来れちゃいます。東北の玄関口と呼ばれる福島県は、東北文化を知る入り口としても、ふらっとリトリートをしたいニーズにもぴったり。ここではそんなニーズを満たしてくれるような、福島県内にあるイチオシの宿について紹介していきます。

初めて福島へ来る人にお勧めしたい温泉宿 5選

会津藩士が愛した温泉と有形登録文化財第一号の宿 向瀧

「福島でおすすめの温泉宿ってある?」と聞かれたら真っ先に勧めるのが、ここ向瀧です。もともとは、会津藩士の指定保養所として利用されていたという歴史を持ち、明治維新後に平田家に受け継がれたあとは、旅館として訪れる人々の心を癒やしています。意匠を凝らした旅館建築も素晴らしく、歴史と文化の両方が楽しめる、福島県が誇る老舗旅館です。

四季折々で表情を変える中庭が素晴らしい

特に素晴らしいのが四季折々で表情を変える中庭の美しさ!冬は会津の特産品である絵ろうそくを使った、雪見ろうそくが中庭を彩ります。

館内は中庭に面したお部屋がほとんど。皇族が愛した離れや、内湯つきのお部屋も素晴らしいですが、まずは中庭を眺められる部屋に泊まって、ゆっくりと流れていく時間に身を委ねてほしいです。

食事

そして、なんといっても素晴らしいのがこのお料理。向瀧では会津産の食材を使った、地元の郷土料理を楽しめるんです。会津地方は山に囲まれた土地柄、昔はタンパク質が貴重でした。食べるものと言えば、鯉や干した鰊など。またハレの日には、干した貝柱で出汁を引いた「こづゆ」と呼ばれる汁碗を食べて祝います。

向瀧では、古くから会津の人々が育んできた郷土料理を磨き上げ、食文化を感じさせつつも旬の食材を取り入れるなど、飽きさせない工夫がされているのです。例えていうなら、会津オーベルジュ。どれを食べても本当に美味しい!

もちろん朝食も素晴らしい。お米が主役の朝食は、引き立て役のしょっぱいおかずが並んで、これでもかというくらい白米を食べさせます。「会津のお米って美味しいんだな」としみじみ感じさせる朝食です。

温泉

向瀧の温泉は源泉掛け流し。浴槽は毎朝換水を行ったあと、清掃が行われているという徹底っぷりです。湯守が大切に守ってきたお湯は、じわっとしみるような肌あたりが特徴。

館内には部屋風呂を除いて5つの内湯があり、熱めのきつね湯からぬるめのさるの湯、そして貸し切り風呂の蔦の湯、瓢の湯、鈴の湯があります。中には天井に、名前にちなんだレリーフが掘られているものも。どの浴槽も趣があり、自分好みのお湯を探すのも一興です。

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もはや温泉のテーマパーク。野趣あふれる露天風呂で湯治三昧ができる宿 安達屋

福島駅からバスで30分、市街地から近いにもかかわらず、本格的な湯治体験をできるのが高湯温泉郷です。高湯温泉郷には共同浴場と合わせて10の温泉施設があり、その全てが源泉かけ流しを行っているほど、湯量に恵まれています。その昔は奥羽三高湯と呼ばれ、古くから東北の人々に愛されてきた秘湯。そんな当時の趣を感じつつ、温泉を楽しみたい人にお勧めしたいのが安達屋旅館です。

囲炉裏があるロビーでホッと一息

安達屋の顔でもある、囲炉裏と暖炉があるロビー。ここでは備え付けのコーヒーマシンはもちろん、紅茶や麦茶といったソフトドリンクから、カクテルタイムにはウイスキーやジンまで、ほとんどの飲み物がフリードリンクとして提供されています。各湯船の中心にあるので、内湯に入ってからロビーで一休み、水分補給をしたあとは露天へ…と湯治を楽しめるのが嬉しい。

食事

安達屋のお料理は、食事会場にある囲炉裏を中心に組み立てられた、里山を感じられるコース仕立て。お料理の演出が凝っているのはもちろんのこと、県内の日本酒が取りそろえてあるのが特徴です。福島の有名な酒蔵からニッチなものまで、日本酒が好きな人にはまさに天国。食事会場は半個室なので、一人旅にもお勧めできます。

翌朝の朝食もしっかり美味しい。福島といえばお米ですが、苦手な人にはトーストも振る舞われます。ジャムはもちろん県産のフルーツ。余すところなく県の美味しいものが楽しめます。

温泉

安達屋と言えば、なんといってもこの野趣にあふれた露天風呂!「大気の湯」と呼ばれる、自然と温泉とが一体となった広大な温泉につかる気持ち良さは格別です。大気の湯は混浴ですが、18時から21時までは女性専用時間も設けられています。夕食の時間を調整する必要はありますが、混浴が苦手な人でも安心して楽しめる時間帯があるのは嬉しいです。

そのほかにも男女別の内湯を始め、予約制の貸し切り露天風呂と内湯を合わせると、館内には5つもの浴槽があります。内湯でとっぷりとお湯につかってもよし、開放感にあふれた露天風呂で自然の音に身を委ねるもよし。自分だけの湯治スタイルを見つけて欲しい温泉です。

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ミルキーブルーの濁り湯と意匠を凝らした美食を楽しめる宿 旅館 ひげの家

安達屋と同じ高湯温泉郷にあるのが、こちらの旅館ひげの家。1960年に開業したひげの家は、高湯温泉の中では比較的歴史が若いものの、常にお客様目線で快適さを追求しているストイックな宿です。現代のライフスタイルの延長線上で温泉旅館を楽しみたい、混浴は苦手だし、お料理は適度な量でいろんな味を楽しみたい。そんな人にはこちらの宿を強くお勧めします。

ゆったりした部屋でのびのび過ごす。部屋から眺められる緑も美しい

建物には広縁付きの和室のほかに、洋室が用意されています。建物自体の駆体は古いものの、館内はきれいにリノベーションされているので、とても快適です。また、どのお部屋も広いので、ゆったりと過ごすことができます。

食事

そしてひげの家の素晴らしいところは、目にも舌にも美味しい会席料理。県産の食材を中心に組み立てられたお料理は、一品一品が丁寧でどれを食べても本当に美味しい!量もちょうどよく、小食のひとには対応もしてくださるので安心です。女将さんが選ばれたという器も、一つ一つが本当にきれい。

そうそう、翌日の朝ごはんが適量なのも嬉しいポイント。作り立ての湯豆腐に、しゃけやちりめんじゃこといった、オーソドックスな朝ごはん。デザートにヨーグルトがついてくるのも、なんだか実家のようでホッとします。京都で修行をされていたという料理長が手掛ける洗練された料理の数々は、グルメな人を満足させられること間違いありません。

温泉

ひげの家には、男女別にそれぞれ内湯と露天風呂が設けられていて、そのほかに貸し切り露天風呂の「星見風呂」があります。その名の通り、晴れた日にはこの露天風呂から福島のうつくしい星々を眺めることができて、とっても幻想的です。ひのき造りの湯船は定期的に貼り替えられているので、清潔感があってとても気持ちがいい。日常を忘れて癒やされたい、そんな人にはぜひおすすめしたい温泉宿です。

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風光明媚な景色を眺めながら温泉を楽しめる高原ホテル 裏磐梯高原ホテル

厳密にいうと旅館とは違う括りではありますが、リトリートというニーズに応えるなら、ぜひ紹介したいのが裏磐梯高原ホテルです。創業から現在に至るまで、国立公園に訪れる観光客の方々を始め、皇族や海外からの賓客にも愛されてきました。

絶景!国立公園の中にある最高のロケーション

そんな裏磐梯高原ホテルの特徴は、国立公園の中にあるということ。ホテルの目の前には、コバルトブルーに輝く五色沼があり、その奥には名峰である磐梯山のそびえたつ姿が一望できます。素晴らしい絶景を独り占めする贅沢。どこを切り取っても絵葉書のような風景に、自然と心が開放されていくことを感じるはずです。

また、館内にはライブラリーがあるのも嬉しいポイントです。選書もすばらしく、子供用の絵本から大人向けの専門書や小説などが、壁面にずらりと並べられています。美しい景色を眺めながら、のんびりと読書を楽しむ。そんな楽しみ方もおすすめです。

食事

暖炉の側でいただいたウェルカムスイーツとドリンクはもちろん、アテンドのサービスが素晴らしい。食器はノリタケで、趣味がいいのもときめきます。

夕食は和食か創作フレンチの2種類から選べます。創作フレンチは福島県産の食材を使い、彩り豊なアプローチで提供されます。また福島産のワインも取りそろえられており、福島の日本酒だけでなくワインも知りたいという方にはお勧めです。

朝食も和食か洋食かを選べますが、やはりお勧めは和食でしょう。福島県産の食材がこれでもかと並べられる光景は、見ていて圧巻です。絶対にお客様におなかを空かせて帰さないぞ、という気概を感じます。

温泉

写真は公式HPより引用

お風呂は男女別に、内湯と露天風呂が設けられているのですが、なかでも人気なのがこの露天風呂です。その理由は、まるでインフィニティプールのような設計。露天風呂は、浴槽の水面が五色沼へと続くかのようにシームレスにデザインされていて、まるで美しい自然と湯船が一体となったかのような心地よさ。磐梯山を眺めながら、お湯が流れていく音を聞いているだけで、なんだか不思議と心が軽くなっていきます。非日常の空間で、リトリートを楽しみたい。そんな人にはぜひおすすめしたいホテルです。www.ikyu.com

派手さは無いけれど、人の暖かさと山人料理に癒される 旅館ひのえまた

会津に位置する檜枝岐村は奥会津とも呼ばれ、古くから平家の落人伝説などが残っています。現在では尾瀬ヶ原への玄関口として、春から秋にかけては多くの観光客を迎え入れており、旅館ひのえまたは登山家にも人気を博しています。

食事

周囲を山に囲まれているため、まだインフラが発達していなかった頃は、食べるものにも困ることが多かったという檜枝岐村。そんな厳しい環境下で、なんとか客人をもてなすために発展していった山人(やもうど)料理を、ここでは楽しむことができます。なお、メニューの一部には山椒魚の唐揚げがありますが、苦手な場合は申告すると別なものに変えてもらえます。

そんな山人料理のなかでも、特に印象深いのが「はっとう」と呼ばれる、蕎麦粉と餅粉を合わせて作られた料理です。南会津の名産であるえごまをたっぷりとまぶしたお餅は、軽やかな甘さに香ばしさと、とろけるような食感が合わさってとても美味しい!限られた食材で工夫しながら美味しいものを作る姿勢には、どこか精進料理を彷彿とさせます。

そして嬉しいのがお夜食がついてくるところ。温泉に何度も入っていると、すっかりお腹が減ってしまうことってありませんか。それを見越してか、ひのえまたでは夕食の後にお夜食としてご飯を持ってきてくださります。この日は舞茸と白米を炊き込んだシンプルなご飯でしたが、これがやたらと美味しくてとても感動しました。

さらに、お夜食のデザートとしていただいたのがクリスマスケーキ!実はこの日はクリスマスだったのですが、まさかケーキを食べられるとは思わなかったので、とてもうれしかったです。「田舎のケーキですけど」と謙遜されていらっしゃいましたが、とても美味しくいただきました。

温泉

ひのえまたの温泉はアルカリ性単純温泉。刺激が少なく、さらっとしたお湯です。また、浴槽の端には頭を載せられる湯枕があり、寝湯のようにして楽しむこともできます。露天風呂の眺めはないものの、床は畳敷きで寒さが伝わりにくいように工夫されているところに、細やかな気配りを感じます。

入浴施設の近くには小上がりになっている和室があり、自由に漫画や本を読めるように工夫されていました。また受付では、昔懐かしいアイスキャンディーも販売されています。派手さはないけれど、人のあたたかさともてなしにホッとする宿。福島の人の良さを実感したいなら、ぜひこちらをおすすめします。

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今こそ、福島。

大学への進学を機に上京してから、定期的に福島には帰っているのですが、その度に「こんなに良いところだったんだな。ここで育つことができてよかったな」としみじみ実感しています。豊かな自然においしいご飯、そしてやさしい人々。冒頭で福島の人は商売が下手と言いましたが、その不器用さも含めていとしく感じます。

長く続いた感染症の流行に伴う自粛で、ちょっと心が疲れたなという人も多いのではないでしょうか。そんな人にこそ、ぜひ福島にきてほしい。口下手だけれど、精一杯もてなしてくださる福島の人のあたたかさに触れて、心を癒やしてもらえたら。そうして心の中に蓄えた、やさしさを持ち帰ってもらえたら。

そしてもし福島が好きだなと思えたら、ぜひ自分だけのお気に入りの「福島」を、長い時間をかけて見つけていってください。

過去の福島県に関する記事はこちらから

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