東京で暮らす女のとりとめのない日記

暮らしとカルチャー、ミクスチャー

きれいなひたい

眠る夫を眺めながらこの記事を書いている。いつもなら私の方が夫より先に就寝するのに、たまにこうして逆転する日がある。今日はちょうどその日だった。幾年月を重ねても、眠っている夫を眺めていることが新鮮に感じる。きれいなひたい、澄んだ鼻梁、頬に影を落とすまつげ、桜貝に似た色の唇。小さないびきを聞きながら、こうした平和な夜を、夫も過ごしているのだろうかと想像する。

先週末は久しぶりにふたりで都内を散歩した。散歩とは言っても、夫と一緒だと悠に20km近くは歩く。もはや軽いハイキングだ。結婚して始めの頃は彼の体力についていけずに途中で音をあげていた。道端で散歩に行きたくないと踏ん張るトイプードルを見て、思わず自分と重ねてしまうくらいだった。それが最近だとなんとかついていけるようになったのだから、大したものだと思う。

何よりもふたりで散歩していると、とにかく話が尽きなくて楽しい。私がボケると夫がツッコむので、途中から夫婦漫才のようになってくる。明らかに月日と共に掛け合いが洗練されてきていて、これを飯の種にできないのが残念だと思うくらいだ。生まれ変わったらこのジャンルでてっぺんをとる、そんな人生も面白いかもしれない。

閑話休題。最近はもっぱら仕事中にイージーリスニングな音楽ばかり聞いていて、気づけばSpotifyの再生リストがK-POPばかりになってきた。今年の春から本格的に聞き始めたNewJeansを始め、LE SSERAFIMやV、最近だとジョングクのアルバム『GOLDEN』をヘビーローテーションしている。特にアルバムに収録されている『Standing next to you』はちょっと格好良すぎて言葉を失った。80年代のポップミュージックを想起させるメロディラインは、古臭くなく新鮮さすら感じさせる。いい仕事だなと思った。

いい仕事といえばNewJeansの2ndEPを提供したアーティストが「ティーンが歌うので際どい歌詞は避けるようにした」というような趣旨の発言をしていたのも良かった。彼女たちのパフォーマンスも歌も好きだけれど、やはり10代の子供が歌って踊っている姿には手放しで称賛しきれない想いがあるので、せめて商売をさせている大人が一線をひいてくれていることが分かると安心できる。いつか彼女たちがアイドルをやっていたことを後悔しないよう、フェアな仕事であってほしい。

アイドルといえば最近INIというグループも良くて、稀にYouTubeチャンネルを観たりしている。何が良いって男の子たちの大半が優しく、思慮深くて思いやりがあるところ。相手をハグしたり、ストレートに褒めたり、失敗してもポジティブな言葉をかけたりと、ケアして認め合う姿がいい。若い人たちが健やかに生きている姿を見ると癒される。

逆に年上に励まされることもある。最近ゆるく笑えて元気になれそうなYouTubeを検索したときに『YOUのこれからこれから』というチャンネルを見つけた。これが個人的に大ヒットだった。中身は雑誌の読者からYOUへのお悩み相談がメインなのだけれど、QAよりも彼女の60代としての姿勢や振る舞いのバランス感覚が秀逸で、こういう大人もいるんだと思えたら肩の力がすっと抜けた。特に藤井隆、マツコとのコラボレーション回は、彼女の懐深さが感じられてとても良かった。

私はYOUみたいになりたいなと思って、結局なれずに終わる性格だと半ば諦めてもいるのだけれど、まぁそれでもいいか!こういう性格の人に愛されるのは私みたいな人間だったりするし…と開き直れるようにもなってきた。実際に仲良くしてくれる友人たちはみんな適度に緩くて、お酒が大好きで破天荒なので、そういう人たちの布石みたいな存在が私みたいな人間なんだろうと思うようにしている。それならこんなややこしい性格でも得したような気になるから不思議だ。

酔っ払いながら私のことを大好きだと言ってくれる友人たちは、今日、まさにこの夜をどう過ごしているのだろう。そろそろ眠くなってきたので仕舞にする。ここまで読んでくれたあなたにも、やさしい夜が訪れますように。