東京で暮らす女のとりとめのない日記

暮らしとカルチャー、ミクスチャー

安心してひとりになりたい人のための、開かれた秘密基地 ヒアシンス・ハウス(設計:立原道造)

埼玉県さいたま市にある別所沼公園。この公園には清らかな水がこんこんと湧き出ている沼があり、その畔には一軒の小屋が建っている。
小屋の名前はヒアシンス・ハウス(風信子荘)。詩人であり建築家でもあった立原道造が、自分自身のために設計した小さな小屋だ。

ヒアシンス・ハウスの近くにはポールがあり、室内にボランティアの方がいるときは空色の旗が掲げられている。情緒にあふれた仕掛けが愛おしい。

建物は屋根を支える部分と窓枠がペールグリーンでペイントされていて、どこかロマンティックな趣がある。屋根には雨水が自然と流れ落ちることを考えて傾斜をつけたのだろうか。全体的に、線がすっきりとしている印象を受けた。入り口のステップ、またその脇にある四角形の石も、外界と建物を明確に分けていて立原のこだわりが感じられる。

雨戸をしまうための戸袋には、北欧のデザインから影響を受けたと言う十字のマークが彫られていて、いいアクセントになっていた。玄関にあるドアの引手にはツタのような装飾が施されていて可愛らしい。

よく見るとドアの色は窓枠と同じだ。立原は建物と外界をつなぐものを意図的に塗り分けて設計したのだろうか、なんて考えるのも楽しい。
ワクワクしながら中に入ると、小屋の内部は外観のイメージを引継ぎつつも、よりパーソナルな雰囲気だった。

寝床と執筆作業のためのカウンター、それから来客用のダイニング。窓が3箇所設けられているものの、うち2つはコンパクトに設計されていて、必要最低限の明かりだけが入ってくる。まるで少年少女がやわらかな感受性で思い描いたような秘密基地のようだ。興味津々で眺めていると、ボランティアの方が設計図を見せてくれた。

立原が残した設計図には、詳細なスケッチや家具のデザインまでもが書き込まれていた。本来この小屋は、寝室側から沼を望めるように設計されていたらしい。起床したあと、寝室の窓から朝日に照らされる沼を眺め、日中はカウンターで執筆作業を行い、午後以降は南向きにある大きな窓からたっぷりと明かりをとって、ダイニングで友人をもてなしたり食事をしたりする想定だったのだろう。4.58坪というミニマルな空間に、自然と人の生活様式を調和させるようなデザインが施されていて、立原のセンスのよさに思わず唸った。

改めて寝室の窓を見る。確かに朝早くに目覚めて、この小さな額縁のような窓から、太陽に照らされて小波の立った水面を眺めることができたなら。そしてこの蔦のような取手を引いて窓を開け放ち、涼やかな風を顔いっぱいに浴びることができたのなら。それは人生において、忘れ難い時間になるだろう。

視線を脇にずらすと、ベッドボードの棚には立原の写真や、ヒアシンス・ハウスが掲載された雑誌が並べられていた。立原の豊かな感受性が光る眼差しと神経質さを感じさせる口元には、青年期を過ごす人特有のアンバランスな魅力がある。彼はヒアシンスハウスの竣工を実現することなく夭折したが、今この姿を見たら何と思うのだろうか。

彼が実際に使用していた燭台も、またこれに合わせて設計された椅子も、情緒的でとてもよかった。椅子に座ってカウンターに肘をつき、窓の外をじっと眺めているだけで、自分の時間を生きている実感がふつふつと湧いてくる。

あまりにも心地よい空間にすっかりくつろいだ気持ちでいると、ボランティアの方が「ダイニング側にある大きな窓を開けてみせましょうか」と提案して下さった。せっかくなのでお言葉に甘えてお願いする。

角を取り囲んだ窓は、その一枚一枚が驚くほど滑らかに戸袋へと吸い込まれ、外からは爽やかな風が入ってきた。「窓を開けただけでこんなに開放感があるんですね」とボランティアの方に伝えると「ええ、夏場なんかはここを開けているだけで、だいぶ体感温度が変わりますよ」とのことだった。出窓のような作りになっているので、気分転換をしたくなったら、ここで腰をかけて外を眺めてもいい。なんて素晴らしいのだろう。

うっとりした気持ちのままボランティアの方にお礼を告げて、ヒアシンス・ハウスをあとにする。せっかくなので、公園をぐるりと散歩していくことにした。驚くことに、水辺を歩いているだけで、沢山の野鳥と遭遇する。川鵜に白鷺、そしてカイツブリ

沼の水は底が覗けるくらい澄んでいて、歩いているだけでとても気持ちがいい。立原がここに移住したいと思った気持ちもわかるような気がしてくる。そうして沼を半周ほどしたあたりで、視界の端に青い生き物が映った。

カワセミだ!まさかここで出会えるとは思わなかった。ふくふくとした蜜柑色のお腹に空を写したような青い羽、上下にちょこちょこと動く様子、どれをとっても可愛らしい。カワセミがいるくらいなのだから、動物たちにとっては恵まれた環境でもあるのだろう。

すっかり満足して公園を後にしようとすると、猫が2匹仲睦まじく並んでいる様子を見かけた。この公園では人間も動物たちものびのびと生活している。その姿は、立原が生きていたころと同じだろうか。

ヴァージニア・ウルフが「女性が小説を書こうと思うなら、お金と自分一人の部屋を持たねばならない」と『自分ひとりの部屋』で記しているように、自分の人生をまっとうするためには、安心してひとりになれる部屋が必要だ。そのことを立原は感覚的に知っていて、ヒアシンス・ハウスを設計したのかもしれない。

ひとりで集中できる空間にいるときにだけ感じることができる充足感。何者からも介入されずに、自分だけの時間を生きることができる場所。そうした場所があるからこそ、人は社会で他者と関わり、生きていくことができるのではないだろうか。かつてそれを望んだ人によって残された建築が、今も誰かのための居場所としてその扉を開いている。そのことが、とても幸福なことのように感じた。

夕陽は沼の水を照らして黄金色に染め上げていく。鳥たちが巣へと帰ってゆく。それを眺めながら、立原が夢見た牧歌的な風景に思いを馳せた。

 

Information
建物名:ヒアシンスハウス
住所:埼玉県さいたま市南区別所4丁目12-10

建築巡りに関する記事はこちらから

lesliens225.hatenablog.com

lesliens225.hatenablog.com

いい音楽を聴くと、心が帰ってこなくなることを知った Robert Grasper Torio :Blue Note Tokyo 2023

年末に音楽仲間の友人から連絡があり、ロバート・グラスパー・トリオがブルーノート東京でニューイヤーライブを行うことを知った。2020年に計画されていた来日公演がCovid-19の影響で立ち消えて以来、しばらくは単独ライブはしないだろうと思っていたので、まさに寝耳に水だった。急いで予約サイトをひらくと奇跡的に席が残っていたので、そのまま2シートをブッキングする。予約完了のメールをぼんやりと眺めながら、しばらくソファの上で放心していた。本当にグラスパーのライブにいけるんだ。その瞬間、唐突に実感が湧いてきて、胸の奥にこみあげるものを感じた。

ライブ当日は、楽しみすぎて1時間も早く到着してしまった。同じようにだいぶ前から並んでいるであろう人たちがいてホッとする。入り口のポスターを見て、あともう少しでグラスパーに本人に会えるのだという実感が湧いた。

ポスターに描かれたサイン、そして”TONIGHT”というネオンを何度も確かめるように見る。そうして待っていると入り口の扉が開き、前の回に参加していた観客たちが、スローモーションのように吐き出されてきた。観客たちが身体全体に纏っているライブの余韻と、現場を離れがたい気持ちがこちらにも伝わってくる。ひとり、またひとりとその場を後にするのを見届け、落ち着いたタイミングで会場の中に入った。

入り口に掲げられてるミュージシャンたちの顔をゆっくりと眺める。外の喧騒とは打って変わって、ここだけ別空間のようだ。階段を下ると受付とクロークがあり、名前を告げて荷物を預けた。

カウンターを見ると、グラスパーがプリントアウトされた升が、クリスマスツリーのように重ねられていた。お茶目な演出に少しだけ緊張が緩まる。ぞろぞろと人が集まってきて、あっという間にフロアは人でいっぱいになった。「そろそろ席にいこうか」と夫に声をかけ、さらに地下へと伸びる階段を下る。一段一段降りるごとに、いよいよだという気持ちが強くなっていく。

会場の中は薄暗く、間接照明の明かりとステージに映し出された"2023 HAPPY NEW YEAR"のスクリーンがぴかぴかに光っていた。会場の雰囲気、そしてやっとここに来れたんだという思いで頬が熱くなる。

係の人にアテンドされて自席へ向かう途中、見たことがある人とすれ違った。歩きながら思い出そうと考えてしばらくした後、バンドメンバーのバーニス・トラヴィス、そしてジャスティン・タイソンだということに気がついた。なるべく平静を装って席へと着いたが、内心は興奮状態だった。これは頭を冷やさないとと、早々に飲み物を注文する。

頼んだのは”Relaxin”という、ラベンダーとローリエのハーブティとブルーベリーをつかったモクテル。鼻に抜けるラベンダーの香りに、やっと平静を取り戻す。会話をしたり、食事を楽しんだりしているうちに、いつもの状態まで戻ってきた。そうして、ライブが始まった。

あっという間の1時間。気づけばライブは終わっていた。とにかく目に映るもの耳に聞こえるもの、すべてが素晴らしかった。こういう人たちが本物のアーティストなんだ。セッションってこういうことなのか。今日に至るまで私は音楽とは何かを知らなかった、そう感じた。

個人に注目して言えば、グラスパーの演奏と歌声は勿論、ベースのバーニス・トラヴィスが本当に素晴らしかった。彼が6弦ベースで紡ぎ出す音には切れ目がなく、指が100本あるんじゃないかと錯覚した。ドラムのタイソンが時々走り気味になるのを、バーニスの音が入ることでグルーヴとして調和させていたのも見事だった。彼の演奏を聴いて、「バンドはベースがいてこそ遊べるんだ」ということを、初めて耳で理解できたように思う。

また、ロングソロでバーニスはギターのようにベースを奏でていて、これがとてつもなく格好よかった。目の前できれいな川がとうとうと流れていくような、素晴らしく心地がいいフロー。緻密なのに余白もあって、ベースひとつでこんなにもドープな音を奏でられるのかと感動した。彼のソロが終わってグラスパーがステージに戻ってきたとき、観客から歓声が上がったのだが、そのときに拍手をバーニスへ促すような仕草を見せたのも、彼への熱いリスペクトが感じられた。

一方で、ライブの中でとりわけ印象に残った演出はフレーズの使われ方だった。これによって彼らのアルバム『Black Radio Ⅲ』にも込められたメッセージを、よりクリアに感じることができた。冒頭でジャヒ・サンダンスが繋いだ「音楽は人生」と繰り返される言葉には、ライブの構成から"音楽=Made By  The Black People"という意味を読み取ったし、それが現在ステージで演奏しているグラスパーたちの人生を作り上げたものであること、そして彼らは一生をかけてそれを表現していくのだという覚悟を感じた。

また「Everybody Wants To Rule The World」のイントロでは、"Pray is the music, music is the pray"というフレーズや、ジョージ・フロイドたちの名前、そして「アメリカで自分は自由に生きられる」と信じている少女の無邪気な言葉が何度もリピートされた。グラスパーは常々インタビューで、アーティストとしての社会的責任について答えていたけれど、このライブではその想いをより強く感じることができた。

あのライブからもう1ヶ月。なのに私の足元は、いまだに地面から1センチ浮いているような感覚がある。きっと人はいい音楽を聴くと、心が帰ってこなくなるのだ。今でも私の心は、ブルーノート東京の薄明かりが照らすあの席にある。心の中にある静かなライブ会場。そこにはいつも彼らがいて、耳をすますと音楽が聞こえてくる。この日を、そしてこの日にたどり着くことができた自分の人生を、私は生涯忘れないだろう。

 

open.spotify.com

2023年の元旦はさわやかに

夫と紅白歌合戦を見て「バブルを生きてきた人間の、若者にポジションを譲るつもりなんか1ミリもない感じが眩しいね」「おじいちゃんがスモークのなかでヨタつく姿を全国民が見守るイベントだ」などと言っていたら2023年になっていた。酒屋で買った売れ残りのシャンパンを開け、おまけでもらったクラッカーを鳴らす。「今年もよろしくお願いします」とお互い頭を下げて、布団に入ると朝だった。

シャワーを浴びたあとは、昨日のうちに仕込んでおいたお雑煮の準備に手を付ける。昆布と鰹節で引いた出汁を温め直し、茹でた鶏もも肉と蒸しておいた里芋、ねじり切りした人参を加えた。汁を温めている間に新潟で買ってきた切り餅を焼く。うつわに温めた汁を注いでから、焼けた餅を乗せ、さらにその上に茹でておいたほうれん草と、吸い口にゆずの皮を加えた。これだけで充分なごちそうだ。一口すするとまろやかな出汁が、五臓六腑にじんわりと沁みた。

今年はおせちをとらなかった。「ふたりで食べ切るのは難しいし作るのも手間だし、お蕎麦とお雑煮を食べればお正月ということにしよう」と決めたのだった。実際、おせちなしのお正月は気楽でよかった。おかげで体調よく過ごせたし身体もかろやかだ。スマホが震えたので画面をひらくと、友人カップルから春餅を食べながらピースをしている写真が届いていた。

雑煮を食べ終えたあとは、初詣へと向かう準備をする。ダウンを着て外に出ようとすると、夫に「寒いからこれつけていきな」と手袋を渡された。マンションの自転車置き場に行き、愛車にまたがると冷えたサドルの温度が直にお尻に伝わってくる。ペダルを漕ぐと風が冷たくて、思わず顔をぎゅっとしかめた。

自転車はいつも漕ぎはじめが苦しい。呼吸がしんどいのを我慢して、心拍数が上がるまでひたすら自転車を漕ぐ。坂道を上り下りしたところで、やっと身体に酸素が回りはじめて楽になってきた。前を行く夫に置いていかれないよう、さらに車輪を回転させる。肉体が疲労していくのと比例するように、頭は集中していくようだ。滑車の中にいるハムスターもこんな気持ちなのだろうかと酸欠気味の頭で考えた。

信号が赤になったので足を止め、コンビニで買ったミネラルウォーターを飲む。ふと空を見上げると、ブルーシートを広げたような雲ひとつない青空が広がっていた。年末年始特有の、少し白みがかった空が気持ち良い。この時だけは東京のいやらしさを忘れて、きよらかな場所にいるように錯覚する。

神社へ向かう表参道を通過すると、露店がずらりと並んでいるのが見えた。いつもポップコーンやキャンディの甘い香りが漂う通りに、この日だけはソースや肉が焼ける匂いが立ち込めている。若い人が地べたに座り込んで、焼きそばやフランクフルトを頬張っていた。

目的地にたどり着いて自転車を駐輪場に停めると、国会議員が神社前に立っている姿を見かけた。ショッキングピンクのダウンに黒いヒールを履いて、ときどき有権者と挨拶をしている。その後ろには若い議員たちが3名ほどが立っていた。著名な議員なので多くの人に囲まれるかと思いきやそうでもなく、手持ち無沙汰なのか時折鳩のように地面を八の字に回っている。通り過ぎた人たちから「あの人ってそうだよね」「元旦からこんなところにいるんだ」と言っている声が聞こえた。

滅多にない機会なので声をかけ、私が今の政治に望んでいる話をする。最低賃金の引き上げ、貧困世帯への支援、夫婦別姓同性婚の合法化など。時折話を遮り自論を展開する彼女に「この辺は会社のおじさん達と変わらないんだな」と思いつつ、粘りながら対話を試みた。話し終えると、緊張のせいか背中にじっとりと汗が滲んでいた。心から聞いてもらえたかどうかはわからない。この言葉が届いてくれることを祈るばかりだ。

彼女と別れたあとは、神社へ向かうため鳥居をくぐる。今年はどんな一年になるのだろうか。様々な形でお正月を迎えているであろう人たちの顔を思い浮かべる。社会が不安定になるときに、真っ先に影響を受ける人たちを。その人たちが心穏やかに過ごせる日が来ることを、もうずっと長いこと望んでいる。自分だけの心の穏やかさや生活を守れればいいと、そう思って生きることだって可能だけれど、それでは結局私が虚しいのだ。自分の生活が安定してきているからこそ、忘れてはいけない視点をいつまでも握りしめていたいと祈る。

帰り道、紅白歌合戦の司会が「来年こそは何も考えないで過ごせる1年にしたいですね」と言った時に、私は嫌だと感じたことを思い出した。今まで何かを考えずに生きることができていたというならば、それは自分が無知でいられる立場に無自覚でいたということだろう。そんなことに気づいたのもコロナが流行し、考えるための時間が多くなってからだった。今でも自分の行動を振り返ったり、友人に指摘されたりして、無知ゆえの発言や行動に気づくことがいくつもある。

それでも人生をより良く生きるために、もう考えることを手放したくない。衣食住ばかりを慈しみ、それの背景については蓋をして、自分の権利が奪われていることや、他人の権利を奪っていることには無頓着で、足るを知った顔を貼り付け、鈍い感受性のまま生きることは私が望まないのだ。正しい人でいることはできないが、せめて考え続ける人でありたいと思う。

顔を上げるとロードバイクに乗った青年が、夕陽の沈む方へ一直線に走り抜けて行った。彼につられて私の髪の毛が舞い上がる。今年も自分の苛烈さに振り回されながら生きる1年になるのだろう。けれど、それが楽しくなってきている自分もいる。自転車を漕ぎながら、去年見ていたドラマの「死ぬまでその性分の奴隷なんだ」という言葉を反芻する。

自分には無理だと思っていたこと、諦めていたこと。2023年はそれを取り戻すところから始めよう。

Good music, Good groove: 2022年に聴いて心に残った音楽

コロナになってから自分にとって心地いいと思える音楽を聴くことが増えた。特に2022年はグルーヴを重視して聴いていたように思う。自然と足でリズムをとって、体が揺れるような音楽。赤子がゆりかごで揺られるように、人生には良い音楽と良いグルーヴが必要だと思う。

2022年に聴いて心に残った音楽

1. Tokyo Gal 『Right or Wrong』 

open.spotify.com

I've been tryna stay forcus
シングルでいいか 仲間と謳歌
好きだと言うが 遊びはいいや

初めてこの歌を聞いた時に、余りにも格好良すぎて叫んでしまった。心情と共に変化していくメロディとソウルフルな歌声。言葉の選び方、韻の踏み方にもセンスが光る。特にAメロBメロと区切らずに、転調しながら盛り上がっていくゴスペルのコード形式は、彼女のピュアなメッセージにハマっていて神聖さすら感じた。

2. iri 『東へ西へ』

open.spotify.com

目覚まし時計は 母親みたいで心が通わず
たよりの自分は 睡眠不足で

井上陽水トリビュートアルバムで一際目立っていたiriの『東へ西へ』。元の曲が不穏な歌詞に短調という組み合わせなので、カヴァーもウェットな印象になるかと思いきや、カラッとしたドライな仕上がりになっていて驚いた。iriの揺らぎがある声質と少しズレた歌い方が、リズムとハマって良いグルーヴを生み出している。しかしここまで曲をいじられても消えない井上陽水の存在感も凄い。

3. Mirage Collective feat.長澤まさみMirage Op.4 - Collective ver.』

open.spotify.com

届きはしない月に手を伸ばし もがく横顔
欲望の形をしたビルディング 歪なワルツだ

ドラマ『エルピス』(最高だった!)のエンディングで聴いて以来、じわりじわりと心を侵食していった曲。拘って創られたリリックと計算されたトラックを、YONCEのソウルフルで伸びやかな声が良い意味で壊していて気持ちいい。彼はやっぱり抜けの作り方がうまい。『Mirage』にはいくつかバージョンがあるけれど、特に好きなのはOp.4。長澤まさみのセンシティブな声質がうまく使われていて、かえって曲の世界観が活かされていた。まさに令和のデュエットソング。

4. Sara Wakui, Mimiko『Maze』

open.spotify.com

Stuck inside a maze
Can't find may way out

It's been on replay
Got it down, now

初めて聴いた時、「ネオ・ソウルをこんなにも自分のものにして遊べる人がいるのか、しかも日本人で!」と激しく興奮した。Mimikoの怠惰でざらついた声と、徐々に熱量が上がってくるような構成、音のレイヤーが絶妙でうっとりする。クセがあるビートの使い方もすごく好きだ。すっかり彼女が作り出すメロディの虜になって、後日同アルバムに収録されている『Mile in the green』を聴いたら、これまた良すぎてひっくり返った。今後Liveがあれば絶対に足を運びたい。

5. Britney Spears, Elton John 『Hold Me Closer』

open.spotify.com

I saw you dancin' out the ocean
Runnin' fast along the sand
A spirit born of earth and water
Fire flyin' from your hands

友人と飲んでいた時に「BLACK PINKのトラックって不協和音の使い方がブリトニーのToxicに似ているよね」という話題から彼女を辿って知った曲。ブリトニーのスウィートでチャーミングな声が、嫌味がない軽やかなサウンドと混じり合って心地よいチューンになっている。音楽でここまで可憐さ・ピュアさを表現できるなんてやっぱり凄い。エルトンジョンのプロデュースにはブリトニーへの愛を感じた。

6. 踊る!ディスコ室町 『(A BOWL OF)RICE』

open.spotify.com

点滅したままの蛍光灯 途切れ照らす マ・マ・マイルーム
悪くない頭で考えたい 今胃に入れるべきベストなフード

出だしのブラスが格好いい、ご機嫌なファンクナンバー。ベースとドラムのビートが前に出ているのでノリやすいし、ギターの音質がギザギザしている感じも面白くていい。語感がいい歌詞もよくよく聴くと結構シニカルで<「TOKYO」ばっか歌ってるバカ>というフレーズには思わず笑ってしまった。「ハンバーガー」や「カップヌードル」みたいなその場しのぎの腹を満たすジャンクフードじゃなくて、食いたいものをちゃんと選んで食べたい(が金も時間もねぇ)という生活実感が歌われているのもいい。

7. Beyonce 『CUFF IT』

open.spotify.com

Bet you you'll see far 
Bet you you'll see stars
Bet you you'll elevate
Bet you you'll meet God
Cause I feel like fallin' in love

待望だったビヨンセの7作目になるアルバム。中でも『CUFF IT』はビートが前面に押し出されているディスコミュージックでとにかくノリやすい。閉塞感を弾け飛ばすようなコーラスに享楽的な歌詞、ビヨンセのパワフルな歌声を支えるナイル・ロジャースの抑制が効いたギター、ジャムセッションのようなライブ感。アルバムの中ではかなりオプティミスティックなナンバーで、聞いているだけで元気になる。持て余したエネルギーを静かに導くような絶妙なバランス感のチューンは、まさに2022年にぴったりだと感じた。

8. The Kount, Kaelin Ellis『END OF AN ERA』

open.spotify.com

インストゥルメンタルはいつも聞き流してしまうのに、なぜかこれは引っかかって何度もリピートした。ネオ・ファンクなのにどこか懐かしい。曲のつなぎ目がわからないようなフロー、浮遊感があるメロディ、凝ったパーカッション。そこに時折入るジャンベのような楽器が魔術的な魅力を生み出していて、効いた瞬間「マリファナだ…※」と感じた。この曲を収録しているアルバム自体がひとまとまりの作品になっていて、この『END OF ERA』から『STAR』への移り方もはちゃめちゃに気持ちよかった。※筆者はマリファナを吸ったことはない

9. 椎名林檎, Miso『丸ノ内サディスティック Miso Rimix』 

open.spotify.com

報酬は入社後 平行線で
東京は愛せど なにも無い

2018年の宇多田ヒカルfeat.小袋成彬版もよかったけれど、それと同じくらい良いカヴァー。全体的にかなりしっとりとした曲になっているけれど、打ち込みで緩急をつけていて飽きさせず、エコーを使って音に立体感を出しているのも面白い。最後にMiso本人が歌うシーンは透明感があって、椎名林檎のざらっとした声質からワンステップ別の世界観に誘うような終わり方にしているのもおしゃれ。

10. 宇多田ヒカル『気分じゃないの(Not In The Mood)』 

open.spotify.com

「わたしのポエム買ってくれませんか 今夜シェルターに泊まるためのお金が必要なんです」
ロエベの財布から出したお金で 買った詩を読んだ

1月にリリースされた『BADモード』は本当に素晴らしいアルバムで、何度も繰り返しよく聞いた。特に『Find Love』と『Somewhere near Marseilles』、そしてこの『気分じゃないの』はお気に入りで、後者にいたってはこの曲を聞いた感想をブログに書いた。この世界と自分がいる立ち位置、そしてそこにあったはずの誰かの暮らしに対するギャップに頭を抱えるとき、この曲を何度も聴いていたように思う。スロウなBPMとズレた歌い出しが気持ちよく、余白の使い方が絶妙なメロウナンバー。

11. Robert Grasper, Lalah Hathaway, Common『Everybody Wants To Rule the World』 

open.spotify.com

All for freedom and for pleasure
Nothing ever lasts forever
Everybody wants to rule the world

2022年のビッグニュースのひとつといえば、ロバート・グラスパーの『BLACK RADIO Ⅲ』リリースだった。中でも特に印象に残ったのがティアーズ・フォー・フィアーズの同曲をカヴァーしたこの曲。原曲はポップでキャッチーだけれど、こちらはかなりトーンダウンされている。何より歌詞がーーレイラとコモンのフレーズがいい。どの楽器も神経質なくらい抑制が効いていてピリッとした緊張感があるにもかかわらず、どこか心地よさがあるという不思議な音楽体験だった。変拍子の間をつなぎながら生み出される静かなグルーヴがクセになる、2022年を代表するような曲。

2022年 まとめ

今年は大御所アーティストの新アルバムリリースから、自分が気づいていなかったアーティストの音楽まで、幅広い音楽に出会うことができた1年だった。

それからアニメのOPやEDを通じて新しいアーティストに出会う機会が増えてきた。今回選んだ曲は自分が良いグルーヴだと感じたものに絞ったので選考からは外したけれど、特にアニメ制作会社MAPPAが選ぶ音楽は、作品を通じてカルチャーを作っていくという気概が感じられてどれも良い。それからアニメ『ぼっち・ざ・ろっく!』の結束バンド!キャラソンバンドではなく、キャラクターの雰囲気は残しつつも音はしっかりロックに振り切っていて、そのバランス感がとても面白かった。

open.spotify.com

open.spotify.com

しかしこうしてみると、いわゆるアニソンらしいコード進行で作られた曲というのはどんどん減っていくのだろうかとも思う。サンダーキャットが日本のアニソンが好きだと言っていたのは有名な話だけれど、どんどん日本のアニメは子供向けというより「20〜30代が楽しめるカルチャー」に変わっていっているのかもしれない。

自分自身のふりかえりとしてはネットで音楽をディグることが多かったので、来年はもう少し足を運んで音楽に触れる機会を増やしていきたい。自分が聞いている音楽が慣れ親しんだ曲で固まっていくことに居心地の悪さを感じるので、現状を打開するべく来年も多方面に耳をすましていく。もっと面白くて熱量がある音楽に2023年も出会えますように。

クリスマスに野鳥を保護した話

雪深い山村の道を車で走っていると、道路の真ん中に黒い何かが転がっているのを見つけた。遠目には千切れたゴミ袋のように見える。危ないので道の脇に除けようと路肩に車を停めて近づくと、ゴミ袋と思っていたのは弱った鳥で、動けずに震えていたのだった。

驚いている私をよそに、目の前をビュンビュンと車が通り過ぎていく。このままではいつか鳥が轢かれてしまうと慌てて手袋を嵌め、鳥の両翼をおさえるようにして抱き、道路の脇にそっと置いた。側にいてストレスを与えてはいけないので、車に戻って中から観察する。しかし、一向に動く気配がない。車にぶつかって脳震盪を起こしているのだろうか。あるいは怪我をして飛べなくなっているのだろうか。けれど身体に外傷の形跡はない。次第に鳥の上に粉雪が積もっていくので、見兼ねた夫が傘を広げて鳥の上に被せ、また車に戻ってきた。

どうしたものだろうか。我々も旅行中なので、このままずっと側にいるわけにもいかない。しかしこのままこの鳥を放って置いたら、凍死するか猛禽類や猫に食われるしかないだろう。放っておくべきか、保護するべきか。判断するにも私は専門家ではないし…と考えて、そういえば保健所なら保護してくれるのではないだろうかと思いついた。

さっそく自治体の保健所を調べて電話をすると、「厳密には保健所の管轄外ではないので、県の野生動物保護センターに直接連絡して欲しいんです」と申し訳なさそうに伝えられた。気にしないでくださいと返事をしたあと、口頭で伝えられる連絡先をメモする。お礼を言って電話を切り、さっそくその番号にかけると柔和そうな男性が電話に出た。鳥の状況と外傷の有無を伝えると、様子を写真におさめてメールで送って欲しいという。早速写真を送ったあと、職員の男性が「鳥を見つけられた場所ですが、うちのセンターから車で3時間かかるところにあるので、本日中に伺うのは難しいです。近隣で預かってくれそうなところを探しますので、このままお待ちいただけますか」と言った。いいですよ、と返事をして一旦電話を切る。これから先の道筋が見えてきた安心感から深く息を吐いた。

「とりあえず保護が決まったし、わたしは近くの道の駅に空いているダンボールがないか聞いてみる」と夫に言うと「わかった。ちょうど空になったホット用のペットボトルがあるからさ、俺はお湯を沸かして鳥を保温できるように準備しておくよ」と真剣な表情で返された。頼もしいなぁと笑い、じゃあ私は行ってくると告げて車の外に出る。さっきよりも風は強く、雪はいっそう深まっていた。

道の駅に向かう途中には橋があり、その上を風がビュウビュウと吹き抜けていく。途中で吹雪に身体があおられそうになり、橋の下を流れる川を見てゾッとした。まずは私が無事に帰らないといけない。気を引き締めて、遠くに見える道の駅の光に向かって一歩一歩進む。ようやく道の駅にたどり着いた時は、館内の暖かさと安堵感でその場に溶けてしまいそうだった。

雪まみれの人間を心配そうに見る職員のお姉さんと目があったので、「すみませんがこのくらいの大きさで空いている段ボールがあったらいただけませんか」とジェスチャーで伝える。あったかな、ちょっとまってくださいねとお姉さんはバックヤードへ引っ込んでいった。ストーブにあたっていると、そこだけジリジリと熱があたってあたたかい。しばらくするとお姉さんが特大なめこと書かれた段ボールを持って戻ってきた。「このくらいでいいかしら」というお姉さんの言葉に食い気味で「ぴったりです、ありがとうございます!」と返事をする。実は鳥を保護しようと思っていて、と言うとお姉さんは「まぁまぁ!助かるといいですね」と微笑んだ。

何度もお礼を言って道の駅の外に出ると、さっきまでストーブに当たっていて温もっていた身体が一瞬で体温を無くしていくのがわかった。かじかむ指で必死に段ボールをかかえながら、またあの橋を渡る。段ボールの表面積が大きい分、さっきよりも吹雪に身体を持っていかれそうになる。ようやく橋を渡り切ると、安堵したせいか少し力が抜けた。

車に戻り、夫に「段ボールをもらってきたよ。鳥の様子はどう?」と尋ねると「ほぼ変わらないね。一応40度に温めたお湯をペットボトルに注いで近くに置いたところ」と言う。脅かさないように車の影から鳥を観察すると、確かに先ほどと目立って様子は変わらないものの、糞はしているようだった。排泄する元気はあるようだ。とりあえず段ボールの中の方が暖かいだろうということで、鳥を段ボールの中に入れることにした。夫が「怖くないよ、ごめんね」と言いながら鳥を抱えて段ボールにいれる。その中に湯たんぽがわりとしてお湯を注いだペットボトルも入れた。いっさい嫌がるそぶりがなく、なされるがままの鳥にかえって心配になる。

車の中に戻って冷えた身体をあたためていると、センターの職員から電話がかかってきた。「お待たせして申し訳ありません。ここから車で10分ほど戻ったところに役場がありまして、そこの職員が預かってくれると言うことです。そこでご相談なのですが…運搬にご協力いただけないでしょうか」という提案に「もちろんですよ」と返す。「ありがとうございます。それから鳥の種類なんですけど、上司とも確認してオオミズナギドリということがわかりました。本当なら海辺で暮らしている鳥なんですが、時々迷って内陸の方に来てしまうことがあるみたいでして。内陸では飛翔することができないので、おそらくそれで道路にうずくまっていたのでしょう」「へぇ、海鳥なんですか」と返すと「はい、本来なら新潟の方にいるはずなんですけどね。なぜかここまで迷い込んできてしまったのでしょうね」とのことだった。

さっそく鳥を段ボールごと車に運び、後部座席の足元に置く。来た道を戻りながら、夫と「無事に助かるといいね」と会話をする。さきほどより吹雪は落ち着き、山の影からは黄金色の太陽が姿を表し始めていた。「なんでこっちに飛んできちゃったんだろうなぁ」と夫がいうので「本当にね。吹雪の中飛んでいたら、方角を見失ってしまったのかな」と言う。時折太陽の光が雪に反射して、きらきらときらめいた。

役場の駐車場にたどり着くと、車の音で気がついたのか、ふたりの職員さんが裏口から飛び出してきた。「ご連絡いただいていた方ですね!」とほがらかに尋ねられたので、つられて元気に「はいっ、そうです!」と返す。職員の一人が「やー、よかった!あ、センターの方からは聞いています。これが、その?」と私たちが持っている徳大なめこダンボールを指差すので、笑って「はい、そうです」と言う。地面に下ろして段ボールの蓋をあけると、さっきよりは首を動かせるようになったのか、オオミズナギドリつぶらな瞳でこちらを見上げた。「おー、かわいい」「はぁー、カッコいいですね」というふたつの声が上がり、どちらもわかりますよと心の中でつぶやく。もうひとりの方が用意していたという、通気口が開けられたコピー用紙用の段ボールにオオミズナギドリを移し替えると、安心したのか箱の隅に身体を寄せて目を閉じた。

「ではここからは我々が責任を持って預かりますので。保護してくださりありがとうございます。我々としても誇らしいです」と言われて、謙遜しながら車に乗り込む。車の助手席から顔を出し「ありがとうございました!」と手を振って別れを告げた。すっかり吹雪は落ち着いて、さっきの様子はどこへやらだ。

帰り道、オオミズナギドリを保護した場所を通り過ぎながら「あのときは本当に驚いたよね」「うん、どうか無事であってほしいね」と夫と語り合う。「うまくいえないけれど、今日の出来事はクリスマスプレゼントみたいに思うんだ」と言うと、「うん…そうだね」と静かな言葉が返ってきた。

傍目から見たら旅行中にわざわざこんな面倒なことをして、損をしているように見えるのかもしれない。けれど、一羽の鳥を保護するという経験を通して、誰かの善意や優しさを信じられること、それで事態が良い方向へ向かっていくということが純粋にうれしかったのだ。センターの電話番号を教えてくれた女性、保護の方針を示してくれたセンターの男性、道の駅で段ボールを見繕ってくれたお姉さん、保護を引き受けてくれた役場の職員さんたち。そして何より私が「助けようよ」と言った時に、嫌な顔をせずに「そうだね。関わってしまったなら最後まで見届けよう」と言ってくれた夫が。弱っていた一つの命を善意でつなぐことができたかもしれない、そのことが私にとっての一番のクリスマスプレゼントだった。

車の外を見ると、小鳥たちが雪の上に降り立って何かを啄んでいる様子が見えた。あのオオミズナギドリは無事に生きることができるだろうか。そして群れへと帰ることができるだろうか。目を閉じて、元気になったオオミズナギドリが、海上を切り裂くように悠々と飛ぶ姿を夢想する。そのまま意識は雪の中へと吸い込まれていった。

 

 

 

<2022年に買ってよかったスキンケア> Looking back at my skin care items in 2022. 

2022年のスキンケアは「堅実」 がテーマ。ライフスタイルや年齢を重ねたことでスキンケアに対するプライオリティも変化して、「成分重視で肌のポテンシャルを最大限引き出せるもの」へと求めるものが変わりました。自分の年齢とコロナ以降の暮らし方が、スキンケア選びの転換期になった。そんな1年を、使って満足したもの・手放してよかったものから振り返ります。

私のお気に入りスキンケア: My super favorite skin care items!

クレンジング: Makeup Cleansing Olis

アテニア スキンクリアクレンジングオイル: Attenir Skin Clear Cleansing Oil

もう何本目かわからないくらいヘヴィーユースしているアテニアのクレンジングオイル。クレンジングオイルは肌への負担が高いと言われているけれど、肌への摩擦負担を軽減しつつ角栓や皮脂汚れを落とすとなると、やっぱりオイルが優秀だなと思う。アテニアのオイルは成分と価格のバランスが良いところと、汚れと角栓がスッキリ落ちるところ、そして洗い上がりの皮膜感が無いところが好き。ローズのアロマティックな香りもグッド。

洗顔石鹸: Facial Cleansers

ディオール プレステージ ル・サヴォン: Christian Dior Prestige Le Savon 

今年いろいろな洗顔石鹸を使った中で、一番ときめきが持続したのがクリスチャン・ディオールのル ・サヴォン!箱から取り出した瞬間、ノーブルなバラの香りが広がった時の高揚感は今でも忘れられない。透き通った琥珀色の見た目も上品だし、石鹸台の設えも美しい。ひとなでするだけで魔法のように泡立つ泡は、キメが細かくてずっと顔を洗っていたいくらい濃密。日々のスキンケアに上質さとエレガントさ、そして確かな手応えをもたらしてくれるパーフェクトな洗顔石鹸。元々きれいな人からプレゼントでいただいたのだけれど、選ばれたストーリーも含めてハートに響いた贈り物でした。

化粧水: Facial Toners

トゥベール 薬用ホワイトニングローションα EX: Tvert Whitening Lotion α EX

もうかれこれ3年以上使い続けているスタメン化粧水。使っている間、全く肌トラブルが起きなかったので「もしかして私の肌が丈夫になったのかも?」と思って他の化粧水に切り替えたら、途端に肌のコンディションが悪くなってびっくり。使っていると毛穴が引き締まるし、肌に透明感も出るし、吹き出物も出来にくくなる。肌トラブルって起きてから「スペシャルケアを取り入れないと」と思いがちだけれど、やっぱりデイリーでの予防的なアプローチが大切なんだと思い知った。まさに縁の下の力持ちのような名品。

キュレル ディープモイスチャースプレー: Curel Deep Moisture Spray

今年の秋からスタメン入りしたキュレルのスプレー型化粧水。もっぱらリモートワーク中の乾燥対策兼リフレッシュアイテムとして使ってる。これまでスプレータイプの化粧水は乾燥を悪化させる印象が強くて避けてきたけれど、これはセラミド成分を配合しているだけあって、手堅く保湿してくれる。フワァッとした細かい霧状のミストが出てくるので、肌に刺激が少ないところも安心。ボトルの形状も小さい手で収まる大きさで使いやすい。逆さまにしても使えるので、お風呂上がりの全身ケアにも大活躍中。

乳液:Emulsion

トゥベール ナノエマルジョン ディープ: Tvert Nano Emulsion Deep

元々トゥベールのナノエマルジョンを愛用していたのだけれど、今年新しくセラミドを12%配合した高保湿タイプがローンチされたので切り替えてみた。高保湿をうたう乳液って皮膜感があって好きになれないんだけれど、これは肌に馴染む感触があって大満足。液体みたいなテクスチャーで重たくないのに、塗るとしっかり保湿されていて「保湿したいけどクリームをベッタベタに塗るのは嫌」というややこしい私の趣向に大ヒット。これを使っていると本当に乾燥しなくて感動する。トゥベールの製品には珍しく、ラベンダーとローズの香りがするのもお気に入り。

美容液: Serum

トゥベール 純粋レチノールクリーム: Tvert Pure Retinol Cream

ずっとレチノールは皮膚科で処方してもらっていたけれど、A反応が起きて皮剥けしたり乾燥がつらかったりと、使い続けるにはハードルが高かったので今年からトゥベールにチェンジ。おかげでA反応とは無縁だし、レチノールに期待するターンオーバーの促進と、ハリ弾力の向上がしっかり感じられて大満足。レチノールは紫外線に弱いので、もっぱら夜用美容液として使っている。これを使ってから朝起きた時に鏡を見るのが本当に楽しみになった。自分のコンディションがいいと元気でヘルシーな気持ちになれるんだってことを思い出した美容液。

手放したもの: Best Bye 2022

好きだったけれど、価値観やライフスタイルの変化によって手放すことを決めたアイテムもあった。手放すことで心地よくなれることがあるなら、それも(何かを買ったり導入したりしていなくても)広義の美容だよねって思ってる。

ネイルポリッシュ: Nail Polish

時々ポリッシュを買っていたけれど、爪が弱くて頻繁にネイルをすることができず、結局1〜2回使うだけで無駄にしてしまっていたので、思い切って持っていたものは全て処分した。使わなくなったネイルの液体が固まっているのを見つけるたびに、ショックを受けて落ち込んでいたから、気持ちをアップダウンさせる要素が減ってとても軽やかな気持ち。今後はネイルケアを習慣化して、自爪の健やかさを保つ方針で行きたいな。

ボディオイル: Body Oil

肌の乾燥防止とマッサージのためにボディオイルを購入していたけれど、習慣化させることが難しくて、持っていること自体がストレスに感じるようになっていたので、もういいやと思って全てメルカリに放出。今はお風呂上がりにキュレルのスプレーを吹きかけるやり方で肌の健やかさをキープしている。結局自分がcomfortだと思えないと習慣化ってできないんだよね。自分の快適さと習慣づけの両立は今後も課題とするところ。

ヘアアイロン: Hair Straightener

中学生の頃からずっとヘアアイロンを使ってきていたけれど、ここ数年はまったく使っていなかったのと、洗面所で意外と場所をとるなと感じることが多くなってきたので不燃ゴミへ。結局のところ猫っ毛で髪質が細いと、加工よりヘアケアに邁進する方が一番きれいな状態を保てる気がする。今年はカラーもパーマもしなかったけれど、その分ナチュラルなヘアスタイルが定まってきていい感じ。地毛の髪色も好きになってきた。頑張りすぎず、でも自分がイケてると思えるバランス感覚を大事にしていきたい。

2022年の振り返り: What I noticed in 2022.

自分にとって必要なスキンケアの見極め方: How to know what skin care items I need.

特に見直してよかったなと思ったのが購入までのステップ。2020年くらいからバズっているスキンケアや口コミランキングで上位のものを「なんとなく良さそう」という理由で買うのをやめた。その代わり、①自分がどういう肌になりたくて、②そのための成分は何がいいのかを検索して、③エビデンスを調べてから購入するというサイクルにチェンジ。

面倒だけどこれをやることで、自分にとって必要なスキンケアアイテムを選びやすくなった。あくまでもバズっている化粧品は出会うきっかけにしか過ぎなくて、それが自分にマッチングするものか、必要かどうかは自分自身で決めること。これを見直してから無駄遣いは減ったし、洗面台はすっきりして気持ちがいいし、肌のすこやかさをキープできていて、総じて自分がますます好きになった。

2023年に向けて: Goals for 2023.

色々と試してみて私の場合、保湿はセラミド(ヒト型でなくてもOK)、ニキビ予防とシミ抑制・肌の透明感アップにはビタミンC、皮膚のターンオーバー促進とハリにはレチノールがいいこともわかってきた。今使っているスキンケアのラインナップは、過去数年間で一番満足度が高くて大好き。来年も使い続けていきたい。

そして私にとって美容は「自分を健やかな状態にチューニングする行為」だと気付いたのも、大切な気づきだった。スキンケアは毎日やることなのだから、それが自分にストレスなく、楽しいと思える時間であって欲しい。2023年もライフスタイルの変化に合わせながら、自分がいかに快適だと思えるか、使い続けたいと思えるかを追求していきたいな。

来年も自分にとってハッピーでヘルシーなスキンケアライフを楽しんでいくぞ!

 

美容に関する記事はこちらから

lesliens225.hatenablog.com

lesliens225.hatenablog.com

全人類は今すぐ映画館に行った方がいい!血肉沸き踊るインド映画の最高峰 映画「RRR」感想

今年もあともう少しで終わり。いろんな映画を観たけれど、それらをすべて忘れるくらい面白い映画に出会ってしまった。映画の名前は「RRR」。今年見た映画の中でぶっちぎりで面白く、寝ても覚めてもRRRのことばかり考えてしまう。こんな気持ちになれる映画はいつぶりだろう。例えていうならティファンを頼んだはずがミールスが出てきた、しかもビリヤニにデザートのパサヤム付きで!というような映画だ。

左がティファン、右がミールス

 

あらすじ

時は1920年代のインド。とあるインドの片田舎で、少女が英国婦人にヘナタトゥーを施しながら美しい声で歌を歌っている。牧歌的な光景とは裏腹に、周囲には緊張が走っていた。それもそのはず、当時のインド人は英国人には逆えず、家畜以下の扱いを受けていたのだ。

少女の歌が終わり、満足した婦人から謝礼として少女の母親に投げられたのは2枚の硬貨。少女の歌に対する対価と思った母親は、怯えながらも受け取り礼を言うが、娘は目の前で突然連れ去られる。その2枚の硬貨は歌に対する謝礼などではなかった。娘を気に入った英国婦人から支払われた手切金だったのだ。驚いて必死に娘を連れ戻そうとする母親の甲斐も虚しく、結局少女は連れ去られてしまう。悲しむ村人たち。そんな少女を取り戻すべく、ひとりの青年が立ち上がる。

一方その頃別の場所では、英国人の圧政に苦しむ民衆の反乱が起きていた。警察署内部へ石を投げ込み、周囲を覆う柵を揺らす人々。投げられた石が総督の写真に当たって落ちる。暴徒が激化することを恐れた警察署長は、投石した男をここに連れてこいと警察官らに命じるが、皆怯えて外へ出ることができない。そんな中、ひとりの男が投石者を確保するために柵を飛び越える。抵抗する人々を棍棒で叩き、殴り、周囲を蹴散らしながら、執念で投石者を捕まえ署長の前へ引きずり出したもう一人の青年。

そんな対照的な二人の青年は数奇な運命によって導かれ、物語は予期しない方向へと展開していく。

とにかく魅力的なふたりの主人公 ビームとラーマ

この物語には二人の青年が登場する。困ったことはパワーで解決するインド版杉本佐一のようなビームと、大義のためになら手段を選ばないインド版鶴見中尉のようなラーマ。この対照的なふたりが出会い、そして運命の相手になることがこの物語の最大の魅力だ。

奪われた家族のためなら手段を選ばない。穏やかな性格と荒々しさが魅力のビーム

奪われた少女を奪還するために立ち上がったビームは、とにかく「走れメロス」を地でいくような真っ直ぐなヒーロー像!虎の攻撃を軽やかにかわせるほど人間離れした身体能力があるにもかかわらず、争い事は好まず恋愛には奥手。戦って倒した虎には「俺の目的のためにお前を利用してすまない」と祈る、とにかくピュアで優しい心の持ち主だ。不器用で賢く立ち回ることはできないけれど、内に秘めた信念は決して揺るがないキャラクター。圧倒的主人公感をここまで演じきった俳優NTRの演技力も素晴らしい!

冷血な仮面の下に持つ哀しみに胸がしめつけられる。誰よりもミステリアスで業が深い男ラーマ

一方でもうひとりの主人公であるラーマは多面性を持つミステリアスなダークヒーローだ。冷静で強靭な精神力、テルグ語と英語を使いこなす知性。鍛えぬかれた鋭利な刃物のような肉体、同胞でも容赦無く棍棒で叩く冷血さ。そんな一部の隙もない彼が、親しい人にだけ見せるいたずらっ子のような表情や、憂いに満ちた表情がとにかく凄まじすぎて怖いくらいだった。情に厚く愛情深い性格なのに、なぜ警察官という道を選んで同胞を叩く仕事を好むのか。本当の彼は何を考えているのか。そして物語の後半で明かされる衝撃の事実、ラストの転身には思わず息を飲んでしまった。老若男女全てが彼に魅了されること間違いなし!

物語の見どころ!踊る祭典、息の合ったナートゥダンス

youtu.be

物語にはいくつか印象的なシーンがあるのだけれど、中でもやっぱりいいなぁと心に残っているのがインドの伝統的なダンスである「ナートゥダンス」を踊る場面だ。パーティに招待されたビームが令嬢とワルツを踊っていると、それを良く思わなかった英国紳士に「サルサは踊れるか?フラメンコは?」と突き飛ばされる。「後進国の野蛮人であるお前たちは複雑なダンスなんて踊れないだろう?」と嘲笑しているのだ。それを見ていたラーマが間に入り英国紳士に”Do you know Naacho?(ナートゥダンスをご存知か?)”と尋ねる。そしてエネルギッシュでパワフルなナートゥダンスが始まるのだ。

ふたりの息がぴったりあったダンスで会場が沸くのはもちろん、大英帝国から植民地支配を受け、誇りも尊厳も蹂躙されてきた民族が、自国のダンスを踊ることでプライドを取り戻すというシーンがとにかくアツい!途中で英国人とのダンスバトルが始まるのも最高だ。

アジアという「エキゾチック」な文化を鑑賞させるのではなく、相手を同じ土俵に立たせ踊らせ、その結果リスペクトを獲得すること。異文化に安全圏から触れることができるという特権性を揺るがす、土埃をあげて踊る土着的なダンス。サルサやフラメンコだって民族から生まれた踊りなのだ。それならばナートゥダンスが尊重されない理由がない。なにより格好いいじゃないか!そんな思いを画面いっぱいに表現しているのが何より素晴らしく、胸がいっぱいになるシーンだった。

大英帝国支配下の辛酸をフィクションで塗り替えていくという気概

もちろん史実と映画は異なる。結局のところ現実世界では、物語の通りに大英帝国に対してインド人が反乱を成功させることは無かった。そもそも映画のモデルとなった独立運動家たちは、同じ時代には生きておらず出会ってすらいない。様々な運動家の努力と犠牲のもと、ようやく1947年8月25日にインドは分離・独立を果たしたが、その後も多くの血が流れた。

けれど、もしかしたらあったかもしれない(そしてそれがあれば現在も変わっていたかもしれない)未来を信じさせる力があるのも、この映画の魅力に他ならない。抑圧されてきたインド人が大英帝国の総督をやり込めたかもしれない未来。大切な家族を取り戻せたかもしれない未来。生きて愛しい人と幸福な人生を歩めたかもしれない未来。大英帝国の統治下で味わった辛酸と怒りを、エンターテイメントに昇華する。そんな気概を感じてとても感動した。

もちろんそれはお芝居という虚構を現実の出来事として観客に信じ込ませるような、緻密に綴られてた演技と演出があってこそだ。観客が体験したことがない出来事を心の中に再現させ、味わい尽くさせるような。だからこそこの映画に携わったNTR・ラオ・ジュニアやラーム・チャランといった役者はもちろん、監督を努めたラージャマウリの手腕は本当に素晴らしい。

植民地支配のあとも続く分断は、インド国内やその周辺地域に今でも静かに横たわっている。インタビューでラーム・チャランは監督を努めたラーマジャウリを「インド映画の垣根をブルドーザーのように壊した雄牛のような人」と例えていたが、裏を返せばインド映画界と言えども一枚岩ではない難しさがあったということなのだろう。そんな現状を打破するように、自国の独立にまつわる歴史を爽快な物語として描き切ったRRRは、今後映画史に間違いなく残るはずだ。そしてこの作品が、きっとインド映画をもっと面白くしてくれるものだと信じている。

余談

その1:観に行こうと思ったら予約が全然とれない

「今日は暇だから行ってみようかな」と気軽な気持ちで当日券を取ろうとしても、とにかく予約が取れない!都内はどこの映画館もほぼ満席。公開から1カ月以上経っているのにこの状況、いかにリピーターが多く愛されているのかがわかります。結局わたしは腹を括って当日の0時に予約サイトにアクセスし、無事にブッキングに成功しました。それでも当日劇場へ足を運ぶと、すべての座席が埋まっていてびっくり!嵐のコンサートか??RRRを見ようと思ったら入念に準備しておくことをおすすめします!

その2:エンディングで流れるダンスシーンの意味を身体で完全に理解した

これまでインド映画のエンディングでスタッフロールではなくダンスシーンが流れる意味がわかっていなかったのですが、今回ここまで魅せに魅せてくれたスターたちが、様々な表情で楽しそうに踊っている姿を観て「これはファンサか!」ということを完全に理解しました。宝塚歌劇団でトップスターが羽を背負って階段を降りてくるシーン=インド映画のエンドロールダンスということですね。今後はインド映画のエンドロールで主役たちが踊っている姿を見たら「ファンサありがとう!!」の気持ちでより楽しめそうです!

その3:ラーマ役のラーム・チャランにハマり、インスタをフォローする

RRRについて国内外の情報収集をしていくうちにラーマ役のラーム・チャランにハマってしまい、とうとうインスタをフォローするというところまでたどり着いてしまいました。メガスーパースターなのに控えめでシャイな性格はもちろん、

  • 投稿にはハートマークを使いがち
  • 愛妻家で家族の前ではリラックスした表情
  • プードルを溺愛していてどこへ行くにも一緒

などなど、とにかくすべてがいいですね…好きだ…

 
 
 
 
 
View this post on Instagram
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

A post shared by Ram Charan (@alwaysramcharan)

www.instagram.com

↑プードルの登場率が異様に高いラーム・チャランのインスタ

終わりに 映画館で見るべき3つの理由

あ〜とにかく面白かった!こんなに夢中になれる映画に出会えたのは久しぶりでとっても嬉しい!!そしてもっとインドにおける独立運動の歴史についても学びたい意欲に火がついた3時間でした。こんな映画には生きていてあと何本出会えるか…本当にありがたい!
ここまで読んで、それでもまだRRRを観に行くか迷っている人に映画館でみるべき3つの理由を伝えて終わりにしたいと思います。

  1. すばらしいサウンドを映画館の音響で体感して欲しい

  2. 圧倒的な映像美に大画面で浸って欲しい

  3. 観客との一体感を味わえる唯一無二の体験をして欲しい

特に劇場ならではなのが観客との一体感!映画館に立ち込める密な空気、観客の息遣い、そして感情のうねり!これを体験できるのはやはり映画館ならではなんですよね。特にコロナ禍ではそうしたことを感じにくかったので、密になる楽しさを久しぶりに思い出せたような体験でした。そして観賞後に破れんばかりの拍手が鳴り響いたのも、とっても楽しかったです。客層の治安がいい。

視聴後の爽快感もすばらしいので、年越しムービーとしてもおすすめ!ぜひ皆さんも劇場に足を運んで、インド映画のおもしろさにどっぷりひたってきてくださいね!

 

本ブログの映画に関する記事はこちらから

lesliens225.hatenablog.com

lesliens225.hatenablog.com

lesliens225.hatenablog.com