東京で暮らす女のとりとめのない日記

暮らしとカルチャー、ミクスチャー

読書

葛藤と越境 グレゴリー・ケズナジャット『鴨川ランナー』

東京で暮らすことは、異国で過ごすことに似ていると思う。 先日、3年ぶりに地元の友人たちと再会したときに「ちょっとー、東京の女って感じだべ」とからかわれ「んなことねーべ、変わってねべした」と答えたことがあった。 この3年間はほとんど標準語で生…

真綿のような毒にくるまれて 山本文緒『ばにらさま』

山本文緒さんの小説と出会ったのは、中学生の頃だった。当時習っていたスイミングスクールの近くにはブックオフがあり、親が迎えにくるまで本を立ち読みしながら時間を潰すのが習慣だった。髪の毛から香る塩素と、古本屋独特の古紙の匂い。店内は薄暗く、J-P…

病める時も健やかなる時も、彼女がフェミニズムにめざめた時も、あなたは愛を誓えますか? ミン・ヒジョン『僕の狂ったフェミ彼女』

ラブ・ロマンスは永遠の命題だ。 家同士の対立のなかで愛を貫いた「ロミオとジュリエット」、画家志望の少年と上流階級の娘の悲恋を描いた「タイタニック」、韓国で実業家として活躍する社長と北朝鮮の軍人が恋に落ちる「愛の不時着」。 ラブ・ロマンスの主…

トーチ8周年おめでとう! 全話無料公開中に読んでほしい「自転車屋さんの高橋くん」 感想

トーチWebが8周年を記念して、8月5日から11日までの間、掲載されている漫画をすべて無料で公開しているそうだ。その中にある「自転車屋さんの高橋くん」がとても面白いので、ひとりでも多くのひとに読んでほしい! ※以下ネタバレを含むので、記事を読まずに…

映えない身体を受けいれる難しさ モナ・アワド『ファットガールをめぐる13の物語』

2020年にInstagramの仕様が変更され、フィードには様々なpostがサジェストされるようになった。ファッション関係のアカウントを立て続けにフォローすると、画面にはほっそりとした女たちが”also you like this...”と言わんばかりにズラーっとサジェストされ…

コロナ禍における「正しさ」を再考する 金原ひとみ『アンソーシャル ディスタンス』

「正しさ」という言葉を聞くとき、いつも平均台が頭に思い浮かぶ。 皆、うまくバランスをとりながら渡っているのに、自分だけは黴臭い体育マットの上に何度も落ちてしまう。渡るためには暗黙の「正しさ」に従う必要があって、自分が不適合であることは、誰に…

魅力的な悪役は仮面を被っているーー ゴールデンカムイ 、鶴見篤四郎の仮面を読み解く

はじめに ゴールデンカムイも残すところあと1話となった。今は気持ちが落ち着いてきて「ああ、終わるんだな。それを見届けられるんだな」という感慨の方が大きい...... そう思っていたのに、第313話を読んだらそんな凪いでいた気持ちもひっくり返ってしまっ…

2021年 読んだ漫画振りかえり

もう2022年になってだいぶ経つけれど、年末年始じゃないと去年のことを振り返れないなんてルールはないもんね。ということで今年も2021年に読んだ漫画を振り返っていきます。ネタバレを含む感想もあるので、回避したい人にはおすすめしません。ところどころ…

2021年上半期に読んだ本

今まで読んだ本はブクログに登録していたものの、検索するときにブログにまとめておいたほうが便利かもなと思ったので、今年から読書記録はこっちに書いていこうと思う。漫画編も別でまとめたいけど、仕事が忙しいのでそっちは気が向いたらになりそう。ちな…

2020年 読んだ漫画振り返り

2020年に読んだ漫画振り返り。なるべくネタバレの無いように買いているけれど、完全にバレていないとは言えないので、嫌な人は回れ右でどうぞ。(*印については性行為や暴力などに関するセンシティブな描写があるのでご注意ください)(2022/03加筆修正しまし…