東京で暮らす女のとりとめのない日記

暮らしとカルチャー、ミクスチャー

冬の北海道を巡る旅#3 旅の拠点はHOTEL NUPKA。平和園でジンギスカンを食べ、帯広の夜を過ごす

やっと帯広に着いたのは夕方6時半を過ぎた頃。今回宿泊する場所はHOTEL NUPKA(ヌプカ)のHanareと言う施設。前身のホテルみのやが2012年に廃業されたことをきっかけに、地元の出身者らが建物を引き取ってフルリノベーションを施し、新しい宿泊施設として立ち上げたローカルホテルだ。

リノベーションを手掛けたのは、HOTEL CLASKAなどを手掛けたUDS株式会社。町の人たちに長年愛され続けてきたホテルみのやの外観はそのままに、よりシームレスにホテルが街と繋がれるよう宿泊兼ハブとしてデザインされているのが特徴だ。ヌプカとはアイヌ語で原野という意味で、帯広で暮らす人々や旅行者が集える施設になるようにとの願いが込められている。

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提携している駐車場に車を止めて、早速HOTEL NUPKAのロビーでチェックインを済ませる。入り口のドアを開けると、皮張りのベンチに一枚板のテーブル、そして奥には薪ストーブも置いてあった。

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入って右に進むと、ホテル内にあるカフェバーとフロントがあった。このカフェバーでは、十勝で収穫した食材を使った料理とクラフトビールを提供しているとのこと。とりあえず街を歩く前の1杯を飲むのに良さそうだ。

フロントでチェックインの手続きを済ませ、ついでに部屋で飲む用のクラフトビールを1本購入した。受付のお兄さんにお礼を言ってカードキーを受け取り、部屋のあるHanareへと向かう。

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今回宿泊するHanareはフロントがある建物から歩いて5分ほどのところにある。HOTEL NUPKAはゲストハウスのような造りなのに対して、Hanareは全室個室でゆとりのある間取りが特徴だ。ひとり旅ならNUPKA、二人以上ならHanareという風に使い分けても楽しいかもしれない。

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入り口は18時を過ぎると施錠されるので、フロントで手渡されたカードキーで開錠する必要がある。この他に部屋があるフロアの入り口、そしてもちろん部屋にも開錠が必要な箇所があり、全体的にセキュリティがしっかりしている印象を受けた。

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Hanareのロビーに入ると、間接照明が効いたおしゃれなロビーが現れた。こうして見るとHanareのロビーはNUPKAと比べてコワーキングに特化した造りになっている。もちろん利用できるのは宿泊者のみだ。

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ソファスペースは足元にコンセントの挿し口があり、席の感覚もゆったりしていた。気分を変えてパソコン作業をしたいとき、2人以上で黙々と作業をしたい時に良さそうだ。

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ロビーに入って左手にはカプセルオフィスもあった。防音仕様なのでワーケーション中に会議や打ち合わせが入った時に良さそうだ。ワーケーションが流行って久しいけれど、こうした設備を置いているホテルは見たことがなかったので驚いた。

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また、入って右側には観光向けの情報が掲示されていた。旅先のタウン誌などが好きな人間としては、これはかなりうれしい!

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ラックにはホテルがおすすめする帯広市内の観光情報が並んでいた。どれもガイドブックには載っていないようなローカルな情報ばかりでありがたい。

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ラックの上には十勝地方の生活情報をまとめたフリーマガジン、Chaiのバックナンバーも置いてあった。地域に根差したスーパーマーケットから、十勝で作られている美味しいクラフトビール、その土地で愛されているお菓子の話、または帯広の銭湯めぐりのススメなど、街で楽しく暮らすための情報が盛り沢山だ。その土地で暮らす人たちの視座を知ることができるような情報が満載で、読んでいるだけでワクワクする。

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壁面には十勝地方の地図がポップなイラストで描かれているのもいい。さっき通り過ぎてきたところ、明日いくところ。今度きたら行ってみたいところなどを、地図を見ながら妄想する。

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少しロビーでのんびりした後は、エレベーターに乗って今日泊まる部屋へと向かう。エレベーターを降りると目の前に自転車が置いてあった。雪が溶けて晴れた日には、この自転車に載って街を散策することもできるらしい。

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今回泊まる部屋はスタンダードダブル。白とグレーをベースに、ブラックとウッディなアクセントを聞かせた内装がとても可愛い。ベッドの上にある寝巻きは上下セパレートタイプ。あの浴衣みたいなテロンとした上下一体の寝巻きが苦手なので嬉しい。肌触りもよく、くつろいで過ごすことができた。

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ベッドの左右には小さな読書灯と、物をおける台があるのもいい。本を読むときはこの台に積んであれこれ読み耽った。

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ちなみにベッドの正面には49型とワイドな液晶テレビがあり、HOTEL NUPKAの楽しみ方や、インフォメーションなどを読むことができる。もちろんミラーリングも可能だ。さらに室内にあるケーブルを使えば、PCとテレビをつないで仕事をすることもできる。

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またテレビの下にはホテルのスタッフがセレクトした本が置いてあった。不思議なラインナップだけれど、どういうコンセプトで選ばれているのだろう。

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洗面所は独立式でバストイレは別。洗面所前には引き戸がついているので、着替えなどをするときは閉めておけばベッドルームからは見えない。このタオル掛けのアイアンがとても格好よくて、家にも導入したいなぁと思うなど。

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ドライヤーはサロニア。今回初めて使ったけれど、コンパクトな見た目の割に意外と風量があって、思いの外よく髪が乾いた。アメニティはコットンセットに歯ブラシ、髭剃りにヘアブラシと、必要なものはだいたい揃っている。ただしスキンケア用品はないので要持ち込み。

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よく見ると洗面台の壁面は小さなタイル張りになっているのも可愛い。同じ色味で統一しつつ、質感を変えることで空間にメリハリがついていた。このアプローチは尾道のLOGでも取り入れられていたはず。

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部屋には浴室はなくシャワーのみ。HOTEL NUPKAには限られた部屋を除いてほぼ浴槽がなくシャワーのみ設置されている。これは帯広が温泉を誇る街なので、宿泊客が外で湯船に浸かってくることを想定してなのだろう。

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そして嬉しいことにシャンプー・コンディショナーとボディソープはプレディア。KOSEのスパラインで、これで洗うと肌がすべすべになった。ちなみにシャワーヘッドはINAX。水圧もよく、角度を微調整できるのもありがたかった。つくづく水回りのアメニティが気の利いたものだったり、ストレスフリーな工夫がされていると、ホテルに対する満足度がじわじわ上がることを感じる。

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ベッド脇の入り口付近のスペースは、加湿付き空気清浄機とゴミ箱、スリッパに冷蔵庫、ハンガーにミニバーなどがついていて、必要なものは一通り揃っていた。

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さらに引き出しの中には金庫と、PCとテレビを接続するためのケーブルもあった。こんなにコンパクトな空間なのに、痒いところに手が届く工夫があちこちにされていることに驚く。

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ミニバーには珍しい和紅茶や煎茶、そしてオリジナルブレンドのコーヒーなどが並んでいて、どれを飲もうか迷ってしまう。かなり良いラインナップで、お茶好きとしてはテンションが上がりまくりだった。

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早速シナモンが入った和紅茶を飲む。冷えた身体にじんわりしみる。美味しいので調べてみると、静岡の飯塚園というところが作っているらしい。紅茶を飲みながら、今夜の晩ご飯について夫と話をしていると、どうやらこの近くにジンギスカンを食べられる焼肉屋があるようだ。そういえば昔、帯広出身の元上司が「帯広で食べるジンギスカンだけが本物!あのぺらぺらの肉をジンギスカンだと思ったら大間違いさ!」と豪語していたことを思い出し、真相を確かめるためお店に向かうことにした。

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お店の名前は「焼肉 平和園」。店を探して慣れない雪道をヨタヨタと歩いていると、一際目立つネオンサインが現れたので、迷わずたどり着くことができた。

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お店の入り口には暖簾がかかっていて風情がある。「ジュ〜ッと北海道」という枕詞もいい。こういうお店は絶対に美味しい。期待に胸を膨らませて店の中に入ると、係の女性が待合室に案内してくれた。

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待合室として案内された場所は、趣がある噴水が鎮座した広場のようなところだった。まさか焼肉屋にこんな場所があるとは思わず驚く。テーマパークに来たようなワクワク感を感じながら、目の前にあるベンチに腰掛けて待つことにした。中では金魚たちが気持ちよさそうに泳いでいる。のんびり待っていると、目の前の個室のふすまが開いて、上機嫌になったおじさんたちが出てきた。

そのうちの一人と目が合い「どうも、長居しちゃってごめんね!」と言われたので、いえいえと返す。「どちらからいらっしゃったんですか」ともう一人のおじさんに聞かれたので「東京です」と言うと「そうなんですね!帯広、いいところでしょう!」と笑顔で返された。謙遜せず、自分の街をいいところでしょうと言い切れるところに、土地への愛着を感じる。「はい、とてもいいところです」と言うと「楽しんでいってくださいね」と微笑んで去っていった。前のペンションのおかみさんといい、帯広のひとといい、みんな雪国の人とは思えないくらいよくしゃべるし、ひとなつっこいなぁ。

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おじさんと入れ替わるように係のお姉さんが現れ、個室へと案内された。2畳半くらいの小さな部屋にはガスコンロを囲むようにして机があり、まるで秘密基地のような空間だ。

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メニューはジンギスカンや焼肉を中心に、スープやおつまみ、サラダにご飯ものと、とにかく充実している。盛り合わせや定食などもあり、おひとりさまや子ども連れにも優しい。

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本当は焼肉とビールで一杯やりたいけれど、明日の朝も早いので、この日は烏龍茶と一緒に楽しむことにした。この可愛い羊は平和園オリジナルのマークらしい。

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味のあるアルミプレートと共に運ばれて来たのは、特上ジンギスカン。確かに身が厚い!聞いたところ、平和園のジンギスカンは一枚一枚を手作業で切り分けしているらしい。そして何より美味しい!マトンの臭みが抑えられていて、肉質は柔らかい。元上司の言っていたことは本当だった。帯広で出会うジンギスカンこそ真のジンギスカンなのだ。

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こちらはタン。きれいな色で鮮度の良さが窺える。

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そして夫が好物のハラミも頼んだ。すでにフロアは熱狂に包まれている。

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そして焼肉にはやっぱりサンチュ。夫にサンチュ過激派と呼ばれるくらい好きなのだが、平和園のサンチュは萎びているのが一つもなく、みずみずしくて新鮮だった。薬味で白髪ネギが添えられるのも嬉しいし、つけだれも甘辛で美味しい。

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キムチ、カクテキ、オイキムチのキムチ盛り合わせもしみじみうまい。箸休めについつい摘んでしまう。

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寒くてたまらなかったので、思わず頼んでしまったユッケジャンスープも抜かりない美味しさ。具沢山で見た目に反して程良い辛さ。コクもあってじわーっと胃袋にしみていった。

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テーブルの上はもはやちょっとしたパーティだ。机の上にズラーっと並んだ肉を焼いてはうまいうまいと食べる夫を見ていると気持ちがいい。

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肉を焼く間、今日までの旅の思い出をのんびり振り返る。鍋や焼肉をするときの、この何かをしながら徐々に会話に花が咲いてく時間が好きだ。最近は忙しくて焼肉もできておらず、夫とこうして過ごすのは久しぶりだなと嬉しくなった。

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帰り道、夫がコンビニに寄りたいというので、一緒にホテルの近くにあるセコマへと向かう。中に入ると道民と思しき人たちが、コートのフードをかぶったままでいるのが印象的だった。おそらく何度もかぶったり脱いだりするのが面倒なのだろう。かくいう私たちもフードをかぶったまま商品を選んでお会計までしていた。

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ホテルの部屋に戻る途中、ロビーにあった気になる情報誌などをもらってきて、部屋で緑茶と一緒に楽しんだ。美味しいお茶を一口飲むと、冷えて縮こまった体がフーッとほぐされていく。

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夫はホテルオリジナルのクラフトビールを楽しんでいた。一口だけ飲ませてもらう。ピルスナーのふくよかな香りと爽やかな余韻が心地よく、まったり過ごしたい時にちょうどいい味だった。

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シャワーを浴びた後は、ベッドに転がって持ってきた本を読んだり、ゴールデンカムイを見たりと気ままに過ごす。久しぶりに仕事から離れて何もしない週末が嬉しくて、横にいる夫に何度も「こういう週末が人生には必要なんですよ」と絡んでは鬱陶しがられていた。

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朝、目覚めてチェックアウトの準備をし、フロントへと向かう。チェックアウトを済ませると、無性に誰かが淹れてくれたコーヒーが飲みたい気分になったので、ドリップコーヒーをテイクアウトすることにした。

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カウンターにはホテルに展示されているアート作品の解説があったので、コーヒーを待ちながら読む。あたりにはコーヒーのいい香りが漂い始めた。

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できましたよー、と声をかけられていそいそとカウンターでコーヒーを受け取る。お世話になったお礼を言って外に出ると、コーヒーのいい香りに誘われて思わずひとくち飲んだ。美味しい。深入りの香ばしい香りと、冴え渡るような苦味に寝ぼけ眼が少しずつ開いていく。朝の冷えた空気の中で飲む淹れたてのコーヒーって、どうしてこうも安らぐんだろう。

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ありがとうヌプカ。とてもいい宿泊体験だった。土地と観光客を結びつけて、そこで暮らす人々への理解を深めるようなホテル。おかげで小都市帯広のことを、この短い滞在ですっかり好きになってしまった。今度来たら温泉にも入りたいし、街のスーパーで買い物をしたり、十勝晴れの日は公園でのんびり読書をしてみたい。

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ホテルから出て駐車場にいくと、可愛らしい足跡があった。小さきものも、必死にこの土地で生きているのだと思うと、なんともいえない気持ちが込み上げてくるのだった。

#4に続く

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