東京で暮らす女のとりとめのない日記

暮らしとカルチャー、ミクスチャー

目的もなく銀座で過ごす週末 ACホテル・バイ・マリオット東京銀座 宿泊記

4月の始めごろ、HafHという宿泊施設のサブスクサービスに登録して、ACホテル・バイ・マリオットに宿泊してきた。仕事が忙しくて憂さ晴らしをしたかったのと、銀座のど真ん中に意味もなく泊まったら、普段とは違う街の一面が見れそうだなと思って。

当日は夫とホテルのロビーで待ち合わせ。ソファで座って待っていると仕事が終わった夫が来たので、レセプションに向かってチェックインを済ませた。スタッフの受け答えも丁寧。思わずふざけて夫に「さすがおマリオットですわね」という。週の終わりでテンションがおかしくなっている。

そのままエレベーターへと向かうと、途中にラベンダーのポプリのサービスがあった。自分で作ってもいいし、できているものを持っていってもOK。こういうちょっとしたサービスがあると、ホテルでの体験がぐっと良くなる気がする。

エスカレーター前にはアート作品が飾られていた。ブロンズでできた円形はハブを意味しているらしい。

今回宿泊するのは6階にあるスタンダードキング。部屋までのアプローチがムーディー。

部屋の番号がライトアップされているのも近未来感があって面白い。

ドアを開けると綺麗に整えられた部屋があらわれた。やはり照明の使い方がうまい。間接照明の陰影が空間に奥行きをもたらしている。窓側に鏡を使うことで、空間自体を広く見せているのもいい。部屋は白とウォールナット調の締め色でバランスよく整えられていて、上品さを感じた。

洗面スペースは鏡を壁面側に寄せることで圧迫感を感じないようにしている。拡大鏡が付いているのもグッとくる。メイクをする時にあると便利なんだよね。

シャワールームにはレインシャワーも付いていた。水圧も申し分ない。

アメニティはギリシャ発のナチュラルコスメのブランドでコレスというもの。香りはマリン系のような威勢がいい香り。使用感はナチュラルコスメ独特のキシキシ感があって、人によって好みが別れそうだなと感じた。

ドライヤーはスイス発のソリス。風量は最新型のナノイーより弱めながら、腰まであるスーパーロングヘアでもしっかり乾く。水回りはグレーの小物で揃えているのも統一感があって素敵。

しかしこのシャワールーム、寝室から丸見えだなと思っていたところ…

ちゃんとクローゼットの扉が目隠しになってくれた!これはいい。エアコンの設置も邪魔さがなくて、洗練されている。

クローゼットの中には衣類用のブラシと衣類スチーマーも!これ、就活やビジネスで利用するユーザーにはかなりいいんじゃないだろうか。他には寝巻きやスリッパ、雨が降った時のために傘もあって、いたれりつくせり。

ベッドはキングサイズで広々。枕は柔らかいものと硬めのものがあってふかふかとした触り心地。ピシッという音が聞こえそうなくらい綺麗に整えられたベッドって、どうしてこうときめくんだろう。

ベッドのサイドにはそれぞれUSBコンセントとフロアライトのスイッチがあり、左手には目覚まし時計とテレビチャンネル、右手にはメモ帳と電話が置いてあった。手の届くところに必要なものが大体揃っていて、ベッドから動かず生活できる導線。こんなの無限にダラダラしちゃいそう。

連泊の場合は3日間おきにベットシーツを交換するとのこと。気になる人は事前にお願いしておいた方が良さそう。

ベッドの向かいには55インチのTVがあり、ミラーリングも可能だった。テレビをつけるとマリオットのプレゼンテーション映像が流れて、海外のホテルにいるかのように錯覚する。ヨーロッパの安宿で見る現地の放送が恋しい。

窓辺にはベンチソファーがあるのもうれしい。ロールスクリーンは和を意識しているようなモダンな造り。

テーブルの上には消毒用のハンドシートとホテルの案内が置いてあった。土日はテラスでヨガもやっているらしい。ルームサービスもあったりと、細かいところまで気が利いている。

壁面にはコンセントが2つあるほかUSBコンセントも。さらに客室内ではリラクゼーションマッサージも受けられる。

ベンチソファーの向かいにはこぢんまりとしたバースペース。小型の冷蔵庫のほか、ネスプレッソ、引き出しの中にはケトルがあり、上段にはマグカップ。冷蔵庫の中でグラスが冷えているのもうれしい。

マグはモヘイム。マットな質感でぽってりしているデザインなので、実際に使ってみると口あたりが気になった。見て良いものと万人が使って良いと思うプロダクトのデザインって本当に難しいな。

ちなみにドリンクはネスプレッソの他に、煎茶とイングリッシュブレックファーストが備え付けられてあった。

ちなみに館内にはフィットネスジムもあるのだけれど、すっかりジムウェアを忘れてしまったので部屋ではフィットボクシングをすることにした。

チラッとジムをのぞいた感じだと、有酸素運動用のマシンが中心のようだ。フリーウェイトコーナーにはバーベルラックはないものの、ダンベルやベンチはあったので、ダンベルベンチプレスやワンハンドローイング、ブルガリアンスクワットなどで追い込もうと思えばいくらでも追い込めそうではある。毎日BIG3をする人じゃなければ、この設備で十分という感じ。

さて、部屋の確認も終えたので、本日のお酒を探しに築地方面へと歩く。歌舞伎座が煌々ときらめいている。すっかり歌舞伎とも縁遠くなったけれど、いまだにここを通ると東銀座に来たなと実感する。建築には、東京タワーのように建物が土地を代表するような建築と、聖橋のように景観に溶け合って、いつの間にか自分の心に象徴として深く残る建築があると思う。歌舞伎座は前者だと感じる。

そのまま歌舞伎座を通り過ぎて裏通りにを歩くと目の前に築地本願寺が見えた。夜にぼうっとライトアップされている築地本願寺をみるのは初めて。玉ねぎのような屋根が宙に浮かんでいるようで愉快だ。

目的地はLadybirds Bottle Shop Tsukijiというお店。国内外のクラフトビールを販売しているお店で、中では飲むこともできる。どれをホテルで飲もうか迷っていると、店員さんが気さくにおすすめを教えてくれた。グラウラーもやっているそうなので、今度はそちらも利用してみたい。

その後はローソンでおつまみをいくつか購入して再びホテルへ。冷蔵庫でビールを冷やすと時間は夜の19時前。せっかくなのでこのあたりで少しだけ飲もうかと夫に声をかけ、サッと飲めるお店を探しにいくことに。二人でみゆき通りをぶらぶらと歩く。

そういえばみゆき通りの由来ってなんなんだろう。銀座で名を馳せたママの名前だろうか。ふと気になって調べて見ると、明治天皇が皇居から築地にある海軍兵学校へと行幸されたことからついた名前とのことだった。もともと御幸通りだったものが、敗戦後にひらがなになったのだろうか。さっそく得た知識で夫にクイズを出すと、1発で当てられて地団駄を踏んだ。

そのまま銀座六丁目の方を歩いていると「日本酒常時40種類以上」と書いてある貼り紙が目に入った。他にやっているお店もなさそうなので覗いてみることにする。

見た目は普通の雑居ビル。本当にこんなところにお店があるのだろうか?不安になりつつもエレベーターに乗って向かうと、こぢんまりとしたお店が目の前に現れてホッとした。ちょっとした冒険のよう。居酒屋ダンジョン銀座編だ。

お店のお通しは胡麻豆腐。ねっちりした食感にごまの香り、出汁の旨味。お通しを食べて「あ、ここ美味しいお店だ!」と思えるのって嬉しい。

日本酒は仙禽。シュワっとした酸味とメロンのような果実感がフレッシュで食中酒にぴったりだ。

続いて山菜の天ぷら。たらの芽、ぜんまい、ふきのとう。それからおまけで蓮根。香ばしさとほろ苦さに春の訪れを感じる。

あとはちびちびと梅水晶で。カウンターの向こうでは若い男女が飲んでいて、友達以上恋人未満なやりとりが甘酸っぱかった。昔の私たちもあんな感じだったのだろうか。ほんの数年前のことなのに、なんだかもう何十年も前のことのように思える。

すっかり満足したあとは、人気のない銀座を歩きながら建築を眺めつつ帰る。青木淳設計のルイ・ヴィトン銀座店は、オーロラのような水面に銀座の街の光を反射して揺らめいていた。

続いて昭和初期の面影を残す交詢社ビル。もともとは日本で最初に作られた社交クラブである交詢社のビルだったものが、2004年に改築されてファサード部分と一部内装だけ残されたそうだ。当時ここへ出入りし、日本の政治経済に深く関わっていた実業家たちを思い浮かべる。

コロナ前と比べて静かな銀座を歩いていると、幽霊にでもなったよう。亡霊のようにたたずむビルへまた明かりが灯ることを願いながら、ホテルへと歩いていった。

ホテルに戻ったあとは、近くのローソンで買ったおつまみと、キンキンに冷えたビールで二次会。夫はスティグベルゲッツのウエストコースト、私は村上RADIOとコエドがコラボした風歌というビール。ユニクロ村上春樹のコラボも驚いたけれど、コエドもだったとは。

ちびちびとビールを舐めながら、中学生のころに先輩に焚きつけられて読んだ「ノルウェイの森」を思い出す。おぼろげに思い出すことは春の熊のくだりとキュウリのサンドイッチ、それから電話ボックスとワタナベとミドリの会話。

「ねえワタナベ君、わたしのこと好き?」
「もちろん」と僕は答えた。
「じゃあわたしのお願いをふたつ聞いてくれる?」
「みっつ聞くよ」

この会話を初めて読んだ時、わたしは肩透かしのような失恋をしていて、そのせいか余計にこの台詞が印象に残ったのだった。いつか愛しい人にお願いごとをされたら、わたしもみっつ聞いてあげよう。これから先の人生で、そう思えるような人に出会えたら。潮風が香る街のベンチで、ひとりそう願ったことを思い出す。

今はそうしたい人が隣にいて、毎日が光るように楽しい。この幸福。それは夫には言わずに胸の内に仕舞う。なんてことのない話をしながら、銀座の夜は更けていった。

朝起きると、しとしとと雨が降っていた。雨の日の東京は好きだ。時間まで本を読んだあと、1階のメインダイニングへと向かう。モーニングはバイキング形式。テーブルに案内され、メニューから飲み物と食べたいメインを選んだ。

<卵料理>
カズエラ料理 フラメンカエッグ
カポナータにフライドエッグをのせたスペイン南部の郷土料理
オムレツ(マッシュルーム/ハム/チーズ)
<麺類>
ラーメン
フォー

私はマッシュルームのオムレツ、夫はフラメンカエッグ。メインを用意してもらう間、好きな料理を選びにいくスタイルだ。バイキングは和食と洋食の両方があって迷う。この他に子供用のドリンクなどもあり、ファミリーでも使いやすい印象を受けた。

バイキングでいいなと思ったのがバルミューダのトースター。体験しないと購入に踏み切れないような家電を利用できるのは、ホテルで過ごす楽しみのひとつだと思う。

スティグベルゲッツスティグベルゲッ

一通り食べたいものをよそって席に戻ると、店員さんへお願いしていたカプチーノがちょうどいいタイミングで運ばれてきた。バイキングの成果はプチパンにピクルス、スモークサーモンと茹でたブロッコリーにサラダ。あとはヨーグルトとアランミリアのジャム!

大好きなアランミリアがあるという一点でかなりテンションが上がった。味はグリオットチェリーとマーマレード。ひとつはパン用、もうひとつはヨーグルト用で贅沢に使っちゃう。

続いて運ばれてきたマッシュルームのオムレツ。中身はフワトロの半熟オムレツだった。

スティグベルパン用のジャムアラン

夫のプレートを見ても、バイキングのメニューは和食の方が充実度が高い印象を受けた。鮭やだし巻き卵などのスタンダードな料理のほか、まぐろの山かけや納豆まで。外資系ホテルだし、客層的にも納豆は置かないだろうと思っていたので驚いた。選べるメインメニューに和食と相性がいい卵料理がないことが逆に不思議なくらい。これなら年配の人でも使えそうだ。

食事が終わったあとは1階を散策する。バーカウンターはモダンな造り。テーブル下のダウンライトがいい演出をしている。カウンターの高さを変えることで、客同士の視線がかち合わないのも素敵だ。

隣にあるライブラリースペースは宿泊者のみが利用できる。開放感もあり、読書だけでなくサッと仕事をしたい時にも使えそう。

ライブラリーは銀座の街歩きに関連したもののほか、現代美術や建築関連の本などが並んでいた。パラパラとKINFOLKと中銀カプセルタワービルに関する本を読む。

チェックアウトは12時なので、それまで持ち込んだフィットボクシングをしたり、本を読んだりとのんびり過ごした。

帰りは東急プラザ銀座にふらっと立ち寄って、ビルケンでお揃いのサンダルを購入した。店長さんが靴好きで、正しい靴の履き方や解けにくい靴紐の結び方を教えてもらう。接客される機会が減ってきたからこそ、こうして対面で心に残る接客をされると嬉しさもひとしお。

東急プラザ銀座内はテナントの撤退が多く目立って、少し心配になる様相だった。そうした空きスペースの一部はキッズスペースになっていたので、もしかしたら業態自体を変えるのかもしれない。ちょっとしたキッザニアみたいになっていたのが印象的だった。

東急プラザを出た後は、久しぶりに銀座の佐藤養助でランチをした。冷たい麺が美味しく感じて、もう初夏がすぐそこまで来ていることに気づく。炭酸が飲みたくなり、冷たい麺類に焦がれるようになったら、夏はすぐそこだ。今年はとうもろこしご飯を作りたい。

 

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