東京で暮らす女のとりとめのない日記

暮らしとカルチャー、ミクスチャー

美味しい暮らし #1月編

はじめに

もう2月なんて信じられないという気持ちで過ごしている今日この頃、いかがお過ごしでしょうか。本当は京都旅行の続きや1月に読んだ読書記録を書きたいのに、仕事もプライベートも忙しすぎて目まぐるしい日々を送っています。やりたいこととやらなくてはならないことのバランスなんて一生取れる気がしないけれど、せめてこのブログは義務にならないよう細く長く楽しく書いていこうと思いつつ。
最近は夫婦でトッケビという韓国ドラマにハマっています。普段韓国ドラマにあまり興味を示さない夫も、トッケビを見ているときは率先して「続きを見よう!」と言っていて、私よりハマっているんじゃないかと思うほどでした。韓国ドラマは時間あたりの話の展開が緩やかで、中座しても話の展開にある程度追いつけるところがシェイクスピアの戯曲っぽいなと感じます。

トッケビを見終わった後の喪失感が酷くて思わず出演者のInstagramを即フォロー。個人的に今まで観た韓国ドラマで一番面白かった!
話は逸れましたが、今年も食べたものの話をしていこうと思います。去年は食事を楽しめるかどうかは、自分の加齢や体調だけでなく、政治や経済も密接に影響していることを強烈に意識した1年でした。今までレストランはいつ足を運んでも変わらず美味しいものを提供してくれる場所だと思っていましたが、それはレストランを支える生産者や料理人、彼らが良い仕事と生活をできるだけの十分な賃金、それらの元手になる売り上げと利益があってこそ。そのバランスが崩れた時に、当たり前のようにあったように見えたお店はいとも簡単に無くなってしまう。
一消費者として出来ることは限られているけれど、せめてそれは念頭に置いて気持ちよくお金を払っていける人でいたい。何より「いつか行こう」と思っているお店がいつまでもあるわけではないことを知った今、そうしたお店にもなるべく早く足を運ぼうと考えています。そして政治についても意見を示す一方で、その政策が後にどんなインパクトを与えたのかも考えていきたい。
不要不急という言葉が耳を塞いでも聞こえてくるような一年でしたが、本来旅行も食事も映画を見ることも人と会うことも人生には必要不可欠なこと。人生には大小様々なバカンスが必要であること、それらを謳歌する権利が誰しもあるということを忘れずにいたい。楽しいことが過度に後ろめたく感じてしまうような状況ですが、小さな逃避が欲しい、生きる歓びを実感したい、現実が苦しい、そんな人にここの情報が少しでも役に立てば嬉しく思います。何かに立ち向かうにもまずは自分のエネルギーがなくては。腹が減っている自分を労う余暇すらなければ、戦に参加することも回避することも、この戦が誤っていることに気がつくこともできないので。
どんな人にも現実から1センチ離れられるような瞬間がありますよう。その時間が現実を生き延びる活力となりますよう。インターネットの隣人として、今年もどうぞよろしくお願いします。 

 
スパイシービストロ タップロボーン 神保町店

年末は私の仕事があまりにも忙しかったこともあり、年越し前に気力も体力も尽き果てて「今年はおせちも年越し蕎麦もやりません」と夫に家事休業宣言をしました。とは言え「やっぱり食べないと落ち着かない」とのことで伊勢丹数の子・昆布巻き・栗きんとん・紅白かまぼこと伊達巻を購入してきた夫。
どれも美味しかったものの、やはり二人で食べるには量が多かった。3日目にして夫が「カレーが食べたいな」とポツリと呟いたので、お昼にスリランカカレーを食べに連れ出しました。

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入り口でアルコール消毒をしてからお店に入るとほぼ貸し切り状態。夫はアユールヴェーダワンプレート、私はランプライスをお願いしました。写真は最初に出されたスープ。野菜の出汁が甘くてホッとする。

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それほど待たずして出てきたランプライスがこちら。ランプライスとは、軽く炙ったバナナの葉でご飯とおかずを包んだスリランカ式のお弁当のことなんだそう。カラフルな籠とのコントラストが可愛い。

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楊枝を外していざ包みを開けると、その瞬間なんとも言えない良い香りがふわっとあたり一面に漂いました。バナナの葉ってこんなにいい香りがするんだ!まるで森林浴をしているみたい。いい香りに年末からの疲れが一気に吹き飛びます。お寺の常香炉で煙を浴びるみたいにこの蒸気を身体いっぱいに浴びたい…!
おかずはナスモージュにシーニサンバル、揚げゆで卵にチキンカレーとメレーピクルスなど全7種類。南インドカレーと違ってスリランカではおかずを全部混ぜるのは縁起が良くないとのことなので、それぞれのおかずを混ぜたりひとつだけで味わったりと趣向をこらして楽しみました。南インドカレーよりも魚の出汁のような旨味が印象的で、それと調和する繊細なスパイス使いにしみじみ感じ入る。なんて豊かな食べ物なんだろう。

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この日は寒かったので最後にチャイを頼もうとしたところ「お正月なんでサービスです」と無償でいただきました。こういった商売下手さに昔一緒に働いていたスリランカ人を思い出すなどして、勝手にグッときてしまう。乳白色のカップはつるりとして気持ちよく、甘さ控えめのチャイがじんわり染み渡って落ち着きました。
以前から「もしかして私は南インド料理よりスリランカ料理の方が好きなのかも?」と思っていましたが、ここの料理でそれが確信に変わりました。今年はもっとスリランカ料理を開拓するぞ。
ちなみにこのランプライスは現在タップロボーンのオンラインショップでも購入可能です。レンジでチンすればこの味を自宅でも再現できる奇跡。バナナの葉をひらくとそこはスリランカなショートトリップができてしまう食体験、カレーが好きな人もそうでない人も、ぜひ経験してみて欲しい!

taprobane.base.shop

 エーグルドゥースとファウンドリーのショートケーキ

ハッピーバースデートゥーミー!ということで、例年通り誕生日は自分で自分のためにケーキを買いました。今年はエーグルドゥースのショートケーキ。昔も美味しいと思ったけれど、より輪をかけて美味しくなったような。

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全体の一体感が秀逸で、それでいてどのパーツの完成度も高い。生クリームがフレッシュで瑞々しく、スポンジはしっとりときめ細やか。ベースがきっちりしているので、いちごの酸味がアクセントとして活きてバランスが保たれている。クラシカルなケーキなのに新鮮な驚きがあり、それなのに安心感があって唯一無二のショートケーキでした。
久しぶりに足を運びましたが、空間や導線・感染症対策も含めたオペレーションに滞りがなく購入までの体験もよかったです。やっぱりケーキ屋さんは文化と夢を詰め込んで、間口は広く敷居は低く、お店を出た時にお客さんが足元から1ミリ浮くようなお店が大好き。いつしか人気店になっていて寂しいような嬉しいような気持ちになりつつも、やっぱり誕生日のケーキをここにしてよかったと感じました。

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そしてこちらは夫が買ってきてくれたファウンドリーのケーキ。ケーキは自分で用意するからいいよとは言ったものの、やっぱりこうしてもらえると嬉しいもの。まさか買ってくれると思っていなかったので、うれしくて小躍りしました。
ファウンドリーのケーキは初めて食べましたが、こちらも美味しかった。大きくて食べ出があるので満足感がすごくある!フルーツの状態もよくて、これを流通させている企業努力の凄まじさ…と思うなど。何よりまさか1日にショートケーキを2つ食べられるとは思わず、ハッピーなお誕生日になりました。

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ちなみに今年の自分から自分への誕生日プレゼントはアロマセラピー・アソシエイツのミニボトルセットにしました。朝サッとシャワーを浴びる時にシャワーオイルとして塗布してもいいし、リラックスしたい時に湯船に垂らして浸かってもいい。これを使うと身体中からいい香りが立ち昇って贅沢な気持ちになれます。気持ちに合わせて色々な香りが選べるのも、満足感が高いポイントです。

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こんなに小さいのに1本1本がちゃんとガラス容器で、浴槽に置くとコトンと音がするところや、光が当たってオイルの陰が美しく落ちるところが分かっているなぁと思う。ともすればルーティンになりがちなお風呂の時間を特別な時間に変えてくれるようなアイテムで、誕生日に自分へ贈るアイテムとしてはぴったりでした。

きのね堂 ことりクッキー

新宿駅構内にあるMiNi by FOOD&COMPANY が大好きです。一見普通のコンビニエンスストアのように見えますが、珍しいクラフトビールやスナック菓子、おかずの彩りが綺麗なお弁当にマフィンやベーグルなどが所狭しと並んでいて見ているだけでワクワクします。

foodandcompany.co.jp

特に焼き菓子の取り扱いが豊富で、個人的にオニバスコーヒーのフードラインであるMYOWNのパウンドケーキやchezmikkiのクッキー、そしてきのね堂の焼き菓子が定期的に入荷しているのがポイント。「今日はとっておきのお菓子が食べたいな」と思う時に頼りになる、都会の雑踏に潜む秘密基地のようなお店です。

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この日選んだのはきのね堂のことりクッキー。ほろほろとした小麦がミルフィーユのような層になっていて、齧った時の食感も香りも良くてホッとする。いつ食べても身体の美味しいと感じる部分にすとんと落ちてくるような、素朴で押し付けがましくないお菓子だと感じます。
スーパーに売っているカントリーマアムの大袋も、コンビニに売っているブラックサンダーも好きだけれど、自分が自分のために用意したとっておきのお菓子があると、自分の一番の味方を思い出して元気になる気がします。
仕事は自分以外の誰かのために動くことが求められる現場なので、ずっと誰かの声ばかりを聴いていると、時々自分が何のために働いているのか、自分が何を求めているのかが分からなくなってしまう事がある。そんな時こそ「お茶にしましょう!」と自分に声をかけて、自分と対話しながらのんびりするようにすると、これからどうしたいかを整理して、現実に立ち向かう元気が湧いてくるように思うのです。

Maruta

この日は夫と車に乗って遥々調布まで。向かった先はずっと行ってみたかったレストランMaruta。去年の緊急事態宣言下で無期限休業の報せを聞き、なぜ行ける時に行かなかったのかと猛烈に後悔したお店のひとつでした。
そんなMarutaですが、現在は業務形態を変えて再開しており、日が昇ってから日没まで営業しています。また感染症対策のため、大勢で大皿から料理をシェアするスタイルは一時中断しています。再開した報せを聞いて以来絶対行こうと決めていたので、この日足を運べて本当に嬉しかった。ちなみにこの日は夫がランチコースを予約してくれていました。

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お店に入って予約した名前を告げると席まで案内されました。
手前に置かれたメニューを開くと、その時に提供される料理の素材名だけが記されていて、一体どんな料理が来るのかワクワクします。それからお冷が炭酸水なのも個人的に嬉しいポイントでした。写真に写っている背の低いタンブラーは口当たりも持った時の重さも丁度よくて、家に置きたいと思うくらいよかったです。

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ちなみに以前Marutaを紹介してくれた友人が、ここのノンアルコールペアリングをお勧めしてくれていたのですが、現在担当の方が京都へ移られたことを契機にそちらは休止しているのだそう。この日は店員さんに勧められ、庭で採れたハーブを使ったこんぶ茶をお願いしました。

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1皿目は季節の茶碗蒸しから。この日は寒かったので、始めが温かい料理で嬉しい。中身は百合根や芹が入っているとのこと。また、香り付けに芹のオイルも使っているとのことでした。手触りがざらりとして気持ちがいい器で手を温めてから、スプーンで掬って頂きます。口に運んだ瞬間芹のいい香り!さらにとろりとした卵とホクホクした百合根が追いかけてきて、縮こまった身体がほぐれます。

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2皿目は人参。まず春菊と発酵バター、ナッツを合わせたものが運ばれてきました。後から運ばれる人参にディップして食べるためのものなんだそう。

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そして運ばれてきた人参がこちら。ビジュアルに驚いて目を白黒させていると、店員さんから説明があり、半分に切って中身を食べてくださいとのこと。気にならなければ外側も食べられると聞いて、思わず好奇心が刺激されます。

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この日は入荷した人参が細めとのことで、どのテーブルも切るのに悪戦苦闘していました。あちこちから「うまくいった!」という声や「あちゃ〜」という声が聞こえてきて楽しい。私も慎重に慎重に…と切り進めていきます。

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無事切り終えてひと安心!手前は私が切ったもので、奥は夫が切ったもの。綺麗な色の人参は、口に運ぶと薪のいい香りがして甘くてホクホクして美味しい。春菊と発酵バターを乗せて食べると、人参の土っぽさと春菊の香りがバターでうまくまとめられて一つの料理として完成していました。ちなみに炭の部分も食べてみましたが、サクサクとして苦かったです(笑)

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3皿目は鮟鱇。店内にある暖炉で焼かれた鮟鱇は弾力があって香ばしく、そこにかけられたスープが奥行きを生み出していて美味しい。さらに料理に添えられたゴボウのささがきと庭で取れた柚子が食感と香り共にアクセントとなって立体感のある一皿でした。ちなみに夫がこの日一番気に入ったのはこの料理らしいです。

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4皿目はアオリイカ。ひとり2枚ずつアオリイカが運ばれ、はてなと思っていたところ、生ではなく炭火で焼いて食べてくださいとのこと。「いま炭火をお持ちしますね」と店員さんににこやかに告げられ「炭を?ここに?」と混乱していると、スキレットに乗った炭火が本当に運ばれてきました。

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思いがけない、そしてこのお店でしかできないであろう演出が楽しすぎる。感染症対策のために店内がしっかり換気されていて少し寒かったので、こうして卓上で暖が取れるのも嬉しい。手をかざしてじわりとした温もりを感じる幸せ。

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続いて運ばれたのが古代米のリゾット。アオリイカの肝を使ってリゾットにしているそう。そんなの絶対美味しいに決まってる!

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そして同じタイミングで運ばれたアサリ出汁。お庭で採れたレモングラスなどのハーブが入っていて、いい香りが漂います。「リゾットの上に焼いたイカを乗せて、その上から出汁を直接かけてください。余ったら直接飲んでみてくださいね」と言われ、早く試したくてソワソワします。

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さっそく付属のトングでイカをつまみ、炭火の上で焼いていきます。こんなものかな?と何回も確認しては、慎重に火を通していく。

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焼きあがったイカがこちら。炭の良い香りのそれをリゾットに乗せて…

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上から出汁をかけて完成!炭で焼いたイカはややレアでとろりとしていて、古代米はプチプチしていて食感がいい。何より旨味がものすごい。同じ魚介類の出汁だけを使っているのに、重層的な旨味が感じられる。それからアオリイカのワタが持つ癖を、ハーブがうまく打ち消していて、どちらの存在感も丸くなっていることに驚きました。その証拠に、後から出汁だけ飲んだ時にレモングラスが強く香って面白かった。食材の合わせ方の妙を感じました。

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次に出される料理まで少し時間がかかるので、それまでよかったらと出された暖炉で焼かれたパンと自家製の発酵バター。この日は隣の席に小さな女の子がいて、ひたすらこのパンを黙々と食べ、お代わりまでしていたのが可愛かったです。

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次の料理がサーブされるまで気になっていた暖炉も見学。中を格子を使って区切ることによって、火力を調整できるようになっているのが素敵。周りを固める大谷石と、積み上げられた薪置き場がラフな空間を演出していて格好良すぎる。こんな暖炉がある家を建てたいなと妄想したり。

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全体の空間はキッチンスペースとカウンター、写真には写ってはいないもののダイニングで構成されていて、ひとりでもふたりでも子供連れでも、老若男女が気兼ねなく食事ができる仕様になっています。調理スペースがオープンでライブ感のある空間です。

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ダイニングで使われている宮崎椅子は、背もたれが良い具合に傾いてくれて無限にくつろげてしまう。いつかこんな素敵な椅子を家に迎えたい。そしてこの上部に吊り下げられている照明がほんっとうに可愛くて一目惚れ。欲しすぎて後からありとあらゆる手を使って調べたものの、結局どこの照明かわからずじまいでした…改めて見てもやっぱり可愛いなぁ…

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そうこうしているうちに運ばれた1枚の大きなプレート。「今からメインのお肉をお持ちしますね」と言われ、ワクワクしながら待ちます。

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すぐに200gほどの塊肉が運ばれてきました。5皿目は写真の通り、暖炉でじっくり焼かれた牛肉の塊です。これを切り分けて夫とふたりでシェアしました。

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焼き加減はレア。薪の薫香がいい香り。お肉自体は勿論、付け合わせのタスマニア産の胡椒がとてもよかった。こんなに華やかでベリーにも似たフレッシュ感のある胡椒があるなんて驚きでした。

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コースも終盤。6皿目は焼きおにぎりで、この日は3皿目に出された鮟鱇のあん肝と、その骨で引いた出汁を使って構成されていました。勿論焼きおにぎりは暖炉で焼かれたもの。お焦げの部分がちょうど良い香ばしさ。実山椒があん肝の癖を消していていい仕事をしている。今年は故郷の鮟鱇料理を食べられずに冬を越すのだなと思っていたので、ここで出会えて嬉しかったです。

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7皿目はクレープ。日本酒のムースをくるんだクレープの上から庭で採れた柚子のソースがかけられていて、周りのローストされたナッツや栗のアイスクリームと共にいただきます。柚子の味がかなり峻烈でしびれるくらい力強い酸味。日本酒のムースと相性がよく、全く飽きのこないデセールでした。
ちなみにこのお皿が運ばれる前にメッセージプレートが運ばれてきて「誰かがお誕生日なのね!おめでとう!」と盛大に拍手していたら、まさかの私のプレートだったという恥ずかしくも嬉しい出来事がありました。夫が事前にお願いしてくれていたらしく、プレートに書かれていたメッセージが夫らしい言葉のチョイスで、この人と一緒に人生を歩む決意をしてよかったと改めて思うなど。次の誕生日もこうして楽しくて美味しい時間を一緒に過ごせますように。

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最後の8皿目はビスコッティと庭で採れた薬草のお茶。コースが一通り終わった後に出されるミニャルディーズやプティフールが好きなので嬉しい。薬草茶を飲みながら、昔母親が庭のハーブを煎じて作っていたハーブティーを思い出して懐かしくなりました。
ひとつひとつの料理が楽しくてあっと言う間の約3時間。この制限がある状況下でも、レストランを運営するメンバーが料理を通して伝えたい体験がはっきり伝わり、それらを考えながら演出される苦労はいかほどだろうと思いました。また初めはファインダイニングに分類されるお店だと思っていましたが、実際に足を運んでみるとお店の雰囲気はずっとカジュアルで、様々な人が垣根なく食べる喜びに出会える場所だったことも印象に残っています。いつかこのレストランがやりたいことを気兼ねなく実現できるようになった時、改めてまた伺いたいです。

 

 終わりに

先日、映画「チャンシルさんには福が多いね」を見た時に、久しぶりにいい映画を観た気持ちでいっぱいになり、しみじみと幸せでした。
映画のくだりで、チャンシルが映画が好きだと言う相手に何の映画が好きかを聞いて、ノーランの映画が好きだと返された時のあからさまなガッカリした態度の可笑しさ。それからレスリー・チャンと言い張る男の存在。彼女が生きていく上で本当に必要なもの。どんな時でも映画が好きで、映画に一途だった人だからこそ描ける物語があって、そうした物語を別の国で生きる언니が紡いでいることに元気を貰う映画でした。
同時にこんな時だからこそ、やはり映画や文学、芸術や食事に救われているとも思い、不要不急と順列をつけられた産業が今後残っていくために、自分ができることは何だろうと思った出来事でもありました。

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写真は元日に見かけた一羽の海鳥。どんな人にとっても、生きていこうと思える瞬間がある一年でありますよう。

 

過去の記録はこちらから

lesliens225.hatenablog.com

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