東京で暮らす女のとりとめのない日記

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来年も作りたい!ふきのとう料理を満喫した 2024年春の記録

春は自炊が楽しい季節

1年の中で最も自炊が楽しい季節は春だと思う。スーパーの棚にやわらかな色合いの野菜が並ぶと自然とこころが弾む。

中でもときめくのは山菜だ。早いと2月下旬ごろから並び始めるそれは、タラの芽、ふきのとうと続き、桜の頃にはうるい、ウド、こごみと賑やかになってくる。そうして筍が出回り始めるころには、春との別れを感じるようになるのだ。

そんなわけで昨年から今年にかけて作ったふきのとう料理のうち、定番化したものや来年も作りたいくらい気に入ったものをまとめようと思う。まさに今は山菜のオンシーズン。手のひらからするりと逃げていく旬を懸命にたぐり、今だけの味を愉しみたい。

ふきのとうの楽しみ方

山菜の代表格と言えばふきのとうだ。ほろりとした苦み、清涼感と野性味のある力強い香り。ふきのとうをめぐる光景もいい。田舎の道を走っていると、ときどきスーパーのビニール袋いっぱいにふきのとうを採取しているひとたちを見つける。雪解けのころ、うすくなった雪の中からちいさく顔をのぞかせるふきのとうは、春を告げる風物詩でもある。

そんなふきのとうの食べ方と言えば天ぷらやみそが一般的だが、調理方法を変えるだけで様々な楽しみ方ができる。いくつかこれはというものを、ここでご紹介したい。

ふきのとうと海老の春餅

「ふきのとうを生地でつつんだら、かじったときに香りがあふれておいしいのではないか」と思いついたのがきっかけでできた、ふきのとうと海老の春餅。ひき肉と香味野菜と一緒に刻んだ海老とふきのとうをいれ、醬油と酒で味付けをしたタネを生地で包んでフライパンで焼く。生地をこねる手間と時間はかかるが、それに見合うだけのおいしい料理ができる。

一口かじればふきのとうの香り、肉のうまみ、そして海老と生地の食感がたのしい。これひとつで十分なごちそうだ。あまったタネで翌日シュウマイも作ってみたけれど、やはり手間がかかっても春餅にすることで香りはよりひきたつように感じる。恐らく包まれた中で具材が蒸されることに意味があるのだろう。

ところで中国では山菜を食べる文化はあるのだろうかと気になって調べたところ、こんな面白いブログを見つけた。もしかしたら、私が思いついたこの料理も向こうの人はとっくにやっているのかもしれない。

ふきのとうの水餃子

春餅を作るのが面倒な時は、皮を買ってきて餃子にしてもいい。水餃子のときは少し餡を変えて、ひきにく・きゅうり・海老・ふきのとうにする。きゅうりは事前に塩をしておいて、水気をぎゅうぎゅうにしぼっていれる。きゅうりの青々しい香りとふきのとうの香りがつながって複雑な味になるだけでなく、食感にしゃきっとしたアクセントが生まれる。

春なのできゅうりを筍に変えてみてもいいかもしれないが、私はそれとして食べたいので試したことがない。なんとなくふきのとうの香りに筍が負けるのではないかと予想している。

ふきのとうのチキンビリヤニ

料理について考えていると、ふと「この組み合わせはどうだろう」と思いつくことがあって、それがハマった時ほど楽しいことはないと思う。このふきのとうのビリヤニも「もっとふきのとうを楽しく食べる方法はないだろうか」と考えていた時に思いついた料理だった。ともすれば山菜はその希少性もあって、素のまま食べるのが一番だと思ってしまうのだけれど、作ってみれば意外とマサラとの相性もよい。来年はもっと山菜とスパイスの可能性を探ってみたい。

写真ではふきのとうも一緒に炊き込んだビリヤニを載せているけれど、作り続けるうちにあとから混ぜ込む方法がいいことに気が付いた。ふきのとうはどんなに絞っても下処理で水気を含んでしまうので、一緒に炊き込むと水っぽくなってしまうからだ。それにあとから混ぜたほうが味のレイヤーがくっきりしてきれいな味になる。

スパイスはカルダモンやコリアンダーパウダーが相性がよいように感じた。もしラム肉が安ければ、それで作ってもいいだろう。これはカンだが、ラムの匂いをふきのとうが薬味としてうまくバランスさせてくれるのではないかと思っている。

ふきのとうのタプナードソース

昔、渋谷にあったコンコンブルかどこかのビストロで食べたタプナードソース。「それにふきのとうを加えたらおいしいのではないか」とひらめいて作ってみたところ、これが大当たり。ふきのとうのえぐみや苦みがオリーブの酸味とアンチョビのコクと調和して、春を感じるきれいなソースになった。

作り方はいたって簡単で、通常のタプナードソースのレシピにふきのとうを適量加えるだけ。あとは食感をなめらかにするために、ハンドブレンダーで材料を攪拌してペースト状になれば完成だ。

作ったソースはトーストしたバゲットに乗せてもいいし、写真のようにコロッケなどのソースとして使ってもいい。特に春キャベツのコロッケにこのソースをつけると、甘さとほろ苦さのバランスが絶妙だった。

ふきのとうとアンチョビのピザ

もうひとつおすすめのふきのとうのタプナードソースの使い方が、ピザソースとして使うこと。このタプナードソースにアンチョビ、ふきのとう、モッツアレラチーズを乗せて焼いたピザがとてもおいしかった。とくにチーズとふきのとうの相性がいい。作ったことはないけれど、グラタンとして展開しても満足できるのではないかと思う。

ソースだけでじゅうぶん美味しいので、ピザの生地はもはやなんでもいいと思う。ナポリのもちもちとした触感もいいし、おつまみとして食べるならクリスピー生地でもいい。料理の位置づけや、自分の気分で趣向を変えて楽しめるのもピザのいいところだと思う。

ふきのとうのオイル

下処理を済ませたふきのとうをソースなどにする場合、事前にオイルと和えておくと使い切りの香味オイルが出来上がる。サラダのドレッシングとして使ってもいいし、ふきのとうの料理に合わせてもいい。使い切りなので冷蔵庫で化石にしてしまうこともない。

その中で一番おすすめの使い方が、ポタージュ系のスープと合わせること。特に甘みが強いスープとの相性がよく、この時期に安く出回る新玉ねぎや新ジャガイモで作ったポタージュスープと合わせると、ふきのとうのオイルがポタージュのうまみを引き立てて良い相乗効果がうまれる。オイルとスープの境をスプーンですくう行為もたのしい。

ふきのとうのシフォンケーキ

字面だけ見るとギョッとするかもしれない。けれど、数あるふきのとう料理のなかで一押しなのがこのシフォンケーキだ。以前、銀座にあるレストランで知人とランチを食べたときに、このシフォンケーキを出されておっかなびっくり食べたところ、そのあまりの美味しさに驚いたことがあった。(そのレストランの名前は忘れてしまったのだが…)

作り方はペースト状にしたふきのとうを、シフォンケーキの生地に混ぜて焼くだけ。牛乳と卵を使っているせいか、ふきのとうのクセがきれいに消えて香りが豊かな菓子になる。これに別添えの生クリームをあわせてもいい。なによりシフォンケーキの儚いくちどけとふきのとうの香りがいかにも春の風情で、情緒がある食べ物としても気に入っている。

番外編:コシアブラの楽しみ方

ここまで散々ふきのとうについて書き連ねてきたが、山菜のなかで最も好きなものはどれかと聞かれたら、うんうん悩んだ末にコシアブラだと言うだろう。青々しく香ばしい香りは、食べるだけで視界がぱぁっと明るくなり、頭の中に新緑の木々を通り抜けてきた風が吹き込むよう。

難点としては、とにかく都心のスーパーではなかなか出会えないということ。特に新芽の部分は傷みやすいため、見つけられたらラッキーだ。もし幸運にもコシアブラと出会うことができたなら、ぜひ手に取って味わってみてほしい。

コシアブラの天ぷら

まず始めにおすすめしたい食べ方はコシアブラの天ぷらだ。コシアブラはタラの芽と同様のウコギ科で、天ぷらにすると独特の香ばしさと甘みが引き立つ。葉のほうは羽衣のような軽やかさで、茎は苦みと清涼感が感じられる。部分ごとに異なる食感と味わいを感じられて、クセになる美味しさだ。ちなみに我が家の揚げ物担当である夫曰く、衣をサクサクに仕上げるコツは揚げる衣に炭酸水を使うことらしい。天ぷらには調味用の塩はもちろん、藻塩や山塩のように軽やかな塩を合わせてもいい。

コシアブラの混ぜご飯

次におすすめなのがコシアブラの混ぜご飯だ。作り方は簡単で、塩をして炊いたご飯に胡麻と、事前に茹でておいたコシアブラをギュッと絞って刻んで混ぜるだけ。白米のもちもちとした弾力に甘み、コシアブラの香ばしい香り、そしてごまのプチプチとした食感がたのしい。簡単なのにとてもおいしくて、山の恵みを感じる料理だ。この料理は夫のお気に入りで、これを作ってからは毎年「そろそろコシアブラの時期だよね」とリマインドされるようになった。

終わりに

季節のものが美味しく自炊が楽しい一瞬のとき。足早に過ぎていく旬を逃さないよう、日々せっせと手を動かしては、過ぎていく春に焦るような気持ちにもなる。

しかしこんなに恋しく想う山菜でも、春が過ぎると一瞬で食欲が失せるから不思議だ。以前、春の美味しさを閉じ込めるがごとく、ふきのとうのオイル漬けを作ったことがあるのだが、結局翌年になるまで瓶を開けずに食材を痛ませてしまったことがあった。

昔誰かが「冬眠を終えた熊はまず山菜を食べて腸を動かす」と言っていたことがあるが、人間も冬に鈍った神経を起こすために、たった一瞬のこの時期だけ、あの峻烈な苦みを欲するのかもしれない。

まるで野生の動物のような身体を面白がりつつ、過ぎていく季節と追いかけっこをする。この気ぜわしさすら贅沢なこと。そんな春のよろこびを全身で感じられるからこそ私は山菜を愛してやまないのだろう。

補足 ふきのとうの下処理について

ふきのとうを始めとした山菜類には水溶性の天然毒が含まれるため、いずれも下処理をしてから調理をしている。天然毒と聞くと驚くかもしれないが、これは植物が外敵から捕食されないためのものだ。農水省での調査結果では人への健康被害は報告されていないとされているものの、たのしく美味しく食事をするためにも事前の下処理は推奨する。

また、下処理の方法についてはニチレイが詳しいので参考にした。(冷凍保存の方法は、さすがニチレイというところ)こうして調べてみると、アク抜きや水さらしを行っていた伝統的な山菜の調理方法は、理にかなっていたのだなと感心する。

【参考】

農林水産省"食品中のピロリジジンアルカロイド類に関する情報".農林水産省.2022-11-02 https://www.maff.go.jp/j/syouan/seisaku/foodpoisoning/naturaltoxin/pyrrolizidine_alkaloids.html,(参照:2024-05-05)

ニチレイ"ほほえみごはん【ふきのとうの食べ方】下処理からレシピ、保存方法まで徹底解説".ニチレイ.2023-03-01 https://www.nichireifoods.co.jp/media/18622/,(参照:2024-05-05)

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