東京で暮らす女のとりとめのない日記

暮らしとカルチャー、ミクスチャー

赤坂で街歩きを楽しんで韓国料理に舌鼓 OMO3東京赤坂by星野リゾート 宿泊記

7月、hahfの宿泊コインを使い切りたかったので赤坂にあるOMO3に宿泊することにした。赤坂なんていつぶりだろう。最後に訪れたのはコロナが流行る前だった気がする。まだ学生だった頃、赤坂議員宿舎の裏手にあるホットケーキパーラー fru-fullというお店が大好きで、よく友人たちと通っていた。素朴な甘さにカリッとした生地の食感が病みつきになる美味しさで、今でも東京で一番おいしいホットケーキを食べるならここ以外にないと思っている。日本橋の花時計が閉店した今、あの万惣の系譜を汲むホットケーキは、ここと蒲田にあるシビタス、そして経堂にあるつるばみ舎だけになった。

コロナを経ても赤坂は大きく様変わりしていないように見える。その昔、やっかん通りと呼ばれていた赤坂田町通りの周辺は、以前よりも若い人たちを見かけるようになった。近年は赤坂サカスを中心に観光地化が進んでいるらしい。

目的地のホテルには赤坂駅の出口から歩いて5分程度で到着。もともと2021年に閉業したホテルビスタプレミオを星のリゾートが買収してリノベーションしたらしく、外観は当時から変わっていない。

受付を済ませて中に入ると奥にはリラックススペースがあり、赤坂にちなんだ本などを読めるように整えられている。

その正面にはイベントスペースが設けられていて、この日は赤坂の名所に因んだダーツが行われていた。この他にも早朝のガイドツアーや、知る人ぞ知る赤坂をめぐるアクティビティなどがあり、町歩きが楽しくなる仕掛けがたくさん企画されている。

さて、そのまま奥にあるエレベータに乗って宿泊する部屋がある3階へ。ロビーのポップなイメージとはうらはらに、宿泊フロアはモダンで落ち着いたデザインだ。

部屋の間取り自体もビスタ時代から大きく変わっていない。バストイレは別で、ベッドをかこむようにしてソファスペースが設けられている。

ベッドサイドにはUSBポートにコンセントが左右に1つずつ。

ソファスペースの脇には冷蔵庫とコップにケトルがある。お水や茶葉などはないので、自宅からティーパックを持参した方が良さそう。

ベッドの目の前は洗面台にテレビというめずらしい作り。戸棚の中には金庫とバスタオル、それからホテルのパンフレットとドライヤーが収納されていた。ドライヤーはテスコム製。

ちなみにこれ以外のアメニティはなく、歯ブラシやパジャマは有料扱いになる。普通のホテルに期待するアメニティを想像していくと、あれもないこれもないと焦ることになるので注意が必要だ。

一通り部屋を見て、全体的にデザインはおしゃれ風だけど使い勝手は悪く、必要なアメニティが削られているところに、ビジネスホテルともデザイナーズホテルともつかないチグハグさを感じたのが正直なところ。コンセプトやターゲットがわからないホテルだなと思いつつも、唯一いいと思ったのが、このゆったりとしたバスルーム。カビひとつなく、清掃が行き届いていて素晴らしかった。

さて、せっかく赤坂に来たのだし、街をぶらぶら歩いてみようかと外へ。イベントスペースにある地図をみていると、スタッフの方が来ておすすめのルートを教えてもらった。今回は円通寺坂を登り、牛鳴坂を下って戻るコースにする。OMO3の町歩きと提携しているお店は、ホテル名を出すと割引やサービスもしてくれるとのことだった。

円通寺坂は表通りと違ってのんびりとした雰囲気。小さな公園もあり、地元の人らしき人々が憩っていて、下町のような風情がある。

坂をのぼり、地名の由来になった円通寺にたどり着くと、軒先におそらくお寺に住み着いているのであろう三毛猫がいた。香箱座りがとってもキュート。

撫でさせてもらえないかとジリジリ近寄ってみたものの、距離を保ちながら離れていくので、追いかけるのをやめた。静かな時間を邪魔してごめんね。

寺をあとにした後は、薬研坂をてくてくと歩く。すると近くのマンションから2頭のコッカースパニエルが飛び出してきて、足元にすりよってきた。謝る飼い主さんに「犬が大好きなのでうれしいです!」と言って笑いを誘う。

薬研坂を登り切ったあとは、青山通りを歩いていく。区民センターと警察署を横目に通りすぎ、散歩の目的地であるとらやに到着した。

開口一番「うわー、これはめちゃくちゃいい建築だ」と声が漏れる。曲線と木の融合は有機的でやわらかさが感じられる。一方でガラスを使用したファサードは抜け感とシャープさがあり、かなりメリハリがあるデザインだ。植栽のバランスも抜群で、眺めているだけで心地いい。

目的だった茶寮は食べ物が売り切れで仕舞いとのことだったので、明日また訪ねることにする。地下ではかき氷の歴史に関する展示をやっているということで観覧していく。これがなかなか面白かった。

とらやを出た後は牛鳴坂を通り過ぎて、ホテルがある一ツ木通りへと戻る。ちょうど目の前に土橋園というお茶屋さんがあったので、ホテルで飲むためのお茶を買うことにした。

ちょうど粉末タイプのお茶があったので、それで間に合わせることにする。お会計のとき、この粉末タイプのお茶を作ったのはここが初めてなのだという話を聞かせてもらった。

そのままホテルで少し休んだあとは、赤坂に来た一番の目的であるチョンギワへ。ここの冷麺が大好きで、久しぶりに食べたかったのだ。

お通しとキムチは変わらない美味しさ。隣の席ではきっぷのいいマダムたちがふたりでものすごい量の肉とキムチ、それからケランチムに冷麺とビビンバを一人前ずつ平らげていた。

マダムたちの気にあてられて、わたしたちも骨付きカルビと牛タンを焼くことにする。やっぱりチョンギワのお肉は美味しい。

最後はハーフサイズの冷麺で締め。韓国の冷麺は様々な種類があって、このタイプは水冷麺と呼ばれるものだ。淡麗な出汁に酢と辛子が効いてさっぱりとした味は、夏の蒸す時期にぴったり。かみごたえのある麺は食感が楽しく、ああやっぱり冷麺はチョンギワだなぁと思う。ときどき鼻にぬけるからしの香りを楽しみながら、あっというまに平らげてしまった。

翌朝は晴れ。夜とは打って変わって人通りも少なく、さっぱりとして何食わぬ顔の赤坂だ。赤坂サカスではハリーポッターのイベントが行われているらしく、朝から長蛇の列ができていた。

行列を避けるようにして転坂を登り、やってきたのは赤坂氷川神社。季節外れの紫陽花が出迎えてくれてうれしい。

境内には都心とは思えないほど豊かな緑が残っていた。ここのスズメは人に慣れているのか、近寄っても警戒心があまりない。地面をつついて虫を喰んでいるようで、ちょこまかとした動きが愛らしい。

境内は早朝にも関わらず人が多く、聞けば縁結びの神様として愛されているとのことだった。わたしは神社仏閣を衆生向けのエンタメと捉えているところがあるので、ご利益自体はまったく信じていないのだけれど、こういう場自体はいいものだと思う。

境内にはいくつか狛犬が置かれているのだが、社殿近くの狛犬は歴史が古いせいか、他のものよりもかなりプリミティブな印象を受けた。重要文化財にも指定されている社殿は趣があり、江戸から続く歴史を感じさせる。

そうして氷川神社をめぐったあとは、境内の奥を抜けて檜坂を下っていくことにした。もうひとつ行ってみたかった場所があるのだ。

歩くこと数分、目的地の毛利庭園へ。江戸時代の大名屋敷を再整備した庭園は、開放感があって気持ちがいい。

池の石ではミシシッピアカガメが甲羅を干していた。外来種もすっかり馴染んだ風景だ。

庭園内では近隣の子とおぼしき子供たちが走り回っていたり、水辺で遊んでいてのどかだった。庭としての趣はないものの、公園としてはかなりいい。都心に緑があるとホッとするなぁと思う。

ひととおり毛利庭園を散策したあとは、昨日振られたとらやの茶寮で朝食をいただくことに。

夫は季節のうどん。花豆を煮たものと、てんてんと添えられた梅とわさびが上品だ。

わたしは抹茶グラッセにあんず氷。毎年この暑い時期にいただく抹茶グラッセがとても楽しみ。テラス席は眺めもよく、風が通って気持ちがいい。

気がつけばわたしの氷が呼水となり、夫も宇治金時を頼んでいた。「あなた、抹茶の類はきらいじゃなかった?」と尋ねると「うん、でもここのは別だから」という。

いい風に吹かれながら赤坂御所の緑の波を眺めていると、デートと思しき恋人同士がテラス席にやってきた。女の子が「こんな素敵なところで食べられるの?うれしい!」と言ってはしゃいでいる。それを見てはにかむ男の子がかわいらしい。かつてはこの人たちのように初々しかったであろう、昔のわたしたちを振り返る。

帰りはまた坂を下って、ホテルに戻った。赤坂は名前の通り、どこに行くにも坂だらけだなと思う。そして一口に赤坂といっても、場所によって雰囲気が変わるのだなと。赤坂でホットケーキを食べていた学生のころと、自分の中身はさほど変わっていないのに、最近はとりまく環境がめまぐるしく変わっている気がする。安定した場所に身をおきたい気持ちと、そうでない気持ちが拮抗していて忙しい。大人になったら、自然と軸足が定まるものだと思っていたけれど、どうやらそうでもないらしい。なら今の心で動くまでか、そんなことをぼんやりと考えた。

都内のホテルステイに関する記録はこちら

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