東京で暮らす女のとりとめのない日記

暮らしとカルチャー、ミクスチャー

魔法のように素敵な花束と出会えるお店 銀座 こじま花店

春は出会いと別れの季節。わたしが上京してからずっとお世話になっていた美容師さんも、とうとう店舗から独立して店を構えることになった。一生に一度の独立だし、ここはひとつ景気良くお祝いしてあげたい。とはいえお菓子はいつも差し入れしているし、香りものは好みがあるだろうし…そう考えて「そうだ、お花を贈ろう!」と思いついた。

そう思っていたものの、連日の残業ですっかりお花の予約を忘れてしまった。当日、焦って美容室がある銀座に向かい、予約の時間までにブーケを調達しようと探す。そんな時、銀座四丁目の路地にこぢんまりとした花屋さんがあるのを見つけた。

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お店の名前はこじま花店。軒先に趣味のいいブーケが値段と共に飾られていて、思わず立ち止まった。ここなら任せられるかもしれない。一か八か、ええいままよ!とお店の中に飛び込んだ。

店の奥では男性の店員さんがひとりで忙しそうにしていた。一瞬逡巡したものの、思い切って「すみません、今からブーケを作ることってお願いできますか」と尋ねる。するとすぐさま「いいですよ。どんなブーケにします?」と返事が返ってきた。渡りに船とはまさにこのこと。すかさず軒先に飾られていたブーケを指差して「このブーケのひとまわりくらい大きい花束が欲しいんです。色味はオレンジを基調としたものでお願いします」と言った。

「はい、2500円くらいのブーケでオレンジですね。ちょっとやってみましょうね」

そう言うと店員さんは店内にある花瓶から、慣れた手つきでスイスイと花を選んでいく。4、5本選んだあとに「こんな感じでどうでしょう」と見せられた花束の原型は、オレンジや黄色の花を基調に、グリーンの花々がアクセントを加えている可憐な佇まい。思わず「うわぁ、素敵です!この感じでお願いします」と返した。

店内は明るくてモダンな雰囲気。枝ものが豊富なのも素晴らしい

「よかったです。それじゃあ仕上げていきますね。もしよければ、そちらに座ってお待ちください」と声をかけられたので、お言葉に甘えてレジ前の椅子に腰掛けさせてもらう。

ブーケが手際よく出来上がっていく様子を眺めながら「ここ、前からありましたか?」と聞くと「いや、元は七丁目にあったんですよ。それがビルが取り壊すことになってこちらに移転してきたんです。」という。

「七丁目では50年、こっちにきてからは2年くらいですかね。東京五輪前はインバウンドを見込んでか、銀座でもホテルの建設ラッシュが続いていて。なので古いビルの取り壊しが結構あったんですよ」

その後はコロナが流行ってしまったものの、こんなときだからこそとずっとお店は開けていたらしい。

「銀座はいいバーもあれば、昔ながらの酒場もある。お酒の街なんですね。いっときは本当に心配していましたけれど、やっと少しずつ賑わいが戻ってきましたね」

長年、街角の花屋として銀座を見守ってきた人だからこその視点。他にも、土地柄バラの花がよく出るので常時たくさんの種類を揃えるようにしていることや、時折茶道や生け花の先生もいらっしゃるなど、銀座と花にまつわる興味深い話をたくさん聞かせていただいた。

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お店の中にはあざやかで新鮮な花々が所狭しと並んでいる

その間も手は休まず魔法のようにブーケを作りあげていく。花束をオレンジの包装紙でくるんで、イエローの細いリボンで蝶々結びにする過程は、職人のような淀みのない手捌きで見惚れてしまった。

「できました。こちらでいかがでしょうか」

そうして手渡されたのは、まさに美容師さんのイメージを反映したかのような、すてきな花束。オレンジや黄色のビタミンカラーからは健やかさを、グリーンの色味からは落ち着きと可憐さが感じられる。いつも元気いっぱいで、けれど繊細な思いやりにもあふれている、そんな彼女にぴったりだ。

すっかり感動してしまって、代金を支払いながら「飛び込みなのに丁寧に対応してくださってありがとうございました。このお店に出会えて良かったです」と言う。

「いえいえ、こちらこそ。またよろしくお願いします」と言いながら照れたような表情の店員さんが印象に残った。

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実物はこの100倍はキュート!

ああ、なんていいお店だったのだろう。すっかりルンルンとした気分になって、花束を片手に美容室へと向かう。

予約もせずに飛び込みでブーケを依頼したにもかかわらず、慣れたものですよというように5分と掛からず花束を仕上げる姿は、申し訳なさを通り越して惚れ惚れするような格好よさ。

銀座という立地にもかかわらず、高品質なお花がリーズナブルな値段で手に入るのはもちろん、時代のニーズを汲んだセンスのよさにも目を見張った。(店員さんは作りながら「昔と違って今は持った人が映えるような、密度と広がりのあるブーケが人気ですよね」とおっしゃっていた)

銀座に長く腰を据えてきた人が語る街の歴史も興味深い。このあたりのいいお店を教えていただいたりと、お店を拠点に知らない銀座が広がっていく感覚もまた楽しかった。街と人をつなぐ水先案内人のようなお店。こうしたお店が愛されて残るのだろう。

美容室に着いて、さっそく美容師さんに「独立おめでとう!」とブーケを渡すと、心から喜んでくれているようで一安心。ブーケをわざわざ飾りにいく姿を見たら、こちらまで嬉しくなってしまった。

私のうっかりがきっかけだったものの、思いがけず素敵なお花屋さんと出会えた日。これから友人のバースデーや夫との記念日、そしてお世話になった人たちの出会いと別れに花を贈るときは、積極的にこのお店にお願いしていこう。

Information

店名:こじま花店
住所:東京都中央区銀座四丁目3-14 筑波ビル1F
URL:https://www.hanacupid.or.jp/stores/details/41089

 

 

銀座周辺について書いた記事はこちら

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