東京で暮らす女のとりとめのない日記

暮らしとカルチャー、ミクスチャー

深夜製菓部 #2 チョコレートマフィンと2種のコンフィチュール

2023年のバレンタインデー

優に「今年のバレンタインデーは何がいい?ご飯でも食べにいこうか。あるいはチョコレートを買ってこようか」と尋ねると「手作りのお菓子が食べたい」とにこやかに返されて面食らった。そもそも今年は買って楽をしようと思っていたのだ。「えっ、本当に買ってきたチョコレートや外食じゃなくていいの?」と、さりげなく選択肢から手作りのお菓子を外して念押ししてみたものの、返ってきたのは「うん、手作りがいい」という答えだった。そっか、手作りか。若干の面倒臭さと、バレンタインくらいは応えてあげたいという気持ちが拮抗する。結局、楽しみにしている彼の顔を見たら「作りたくない」とは言えず、腹を括ってお菓子作りをすることに決めた。彼からお願いされることなんてあまり無いのだし、たまにはこういうのもいいでしょう。

レシピと材料について

今年選んだレシピは栗原はるみのチョコレートマフィン。はるみさんのレシピは失敗が少ないし、特別な材料を揃えなくてもできるものが多くて助かる。お菓子作りの何が苦手って、家庭で消費する機会が滅多に無い製菓の材料を買わないといけないことと、その後に管理をしないといけないこと。使い切れずに余った材料を見て「イーッ!」となる人間としては、普段使いのものであればあるほどありがたい。それにマフィンなら冷凍保存ができる。せっかく作ったのに食べ切れず、痛ませてしまったら悲しいものね。

材料※

  • チョコレート…240g
  • バター…100g
  • 卵…4個
  • ラニュー糖…200g
  • 薄力粉…200g
  • ココアパウダー…40g
  • ベーキングパウダー…14g

※…我が家にあるマフィン型が12個分なのと、生地をフチまで注いでモコモコのマフィンにしたかったので、元レシピの2倍の分量で作っている。

チョコレートマフィンを作る

それでは早速チョコレートマフィンを作っていこう。まずはマフィンカップを用意する。ほとんどのレシピでは市販のマフィンカップを用意するやり方が一般的だけれど、私は焼き上がった生地が紙にくっつくのが苦手なのと、なるべく家にあるもので準備したかったので、クッキングシートをチューリップ型に折って代用した。

カップの作り方は簡単で、適当にクッキングシートを4つ折りにしてから、コップの底などを利用して折り込んでいくだけ。この時点ではマフィン型からマフィンカップが飛び出ているけれど、生地を注げばきれいにおさまるので、慌てなくて問題なし。マフィンカップを作り終わったら、鍋に水を入れて湯煎用のお湯を沸かし始めておく。

次に板チョコをパキパキと折ってボウルに入れていく。クベールチュールのタブレットは折らずにそのまま入れる。本当は板チョコもタブレットも包丁で刻むといいらしいのだけれど、どうせ湯煎すればどんな形であれ溶けるでしょう、ということでズボラパワー応用力を発揮していく。

次に薄力粉とココアパウダー、それからベーキングパウダーをあらかじめふるいにかけておく。レシピにはふるいにかけながら最後に粉を追加するやり方が書かれていたけれど、きっと私は終盤で疲れきっていて適当にやるだろう、そしてその結果失敗するという自信があったので、事前に済ませておくことにした。お菓子作りで大切なことは自分を信用しないことだと思う。

ところで作った後に、パティシエがマフィン作りをする動画を見ていたら、ボウルは使わずにクッキングシートの上でふるいをかけていて驚いた。確かにこれならふるいにかけて飛び散った粉も集められるし、洗い物もでなくていい。クッキングシートならオーブンで焼く時に再利用できるし、次回からは真似したいな。

続いて卵とグラニュー糖を合わせたあとは、全体がもったりするまで混ぜていく。ハンドミキサーで混ぜると周囲に液体が飛び散って片付けが大変なので、アルコール消毒したシンクの中にボウルを置いてから混ぜていく。このあたりで鍋のお湯が沸いてくるので、並行してボウルに割り入れていたチョコレートを湯煎する作業に取り掛かった。

適当に割っておいたチョコレートをゴムベラで混ぜつつ溶かしていく。ミルクチョコレートとビターチョコレートの色がマーブリングのようになってきれい。それと同時にむせ返るくらいようなチョコレートの香りが立ち昇ってきてクラクラした。この香りを長時間嗅いでいると、古代文明でチョコレートが精力剤や媚薬として使われていたのも、納得できるような気がしてくる。

チョコレートがだいたい溶けてきたらバターを加えていく。バターは直接はかりに置いてから使う分量をとっていくと洗い物が出なくていい。レシピには「バターを小さく切ってから入れる」とあったけれど、七面倒なのでそのままぶちこんだ。

大丈夫、チョコレートもバターも丁寧に刻まなくてもちゃんと湯煎で溶けます。お菓子作りは気合。溶かそうと思えばだいたい溶かせる。会社で資料を探す時と同じですね。あると思って探せば大体のものはある。

チョコレートとバターが溶けたら、グラニュー糖と卵をあわせておいた液体を加える。黄色と茶色の色合いがキュート。お菓子作りって、小さなときめきがあって楽しい。液体同士がよく混ざったら、ふるいにかけておいた粉を加えていく。この時点でオーブンを170度に余熱しておく。

全体から粉っぽさがなくなるまでゴムベラで混ぜたら生地の出来上がり。このときにわざわざゴムベラに変えるのは、泡立て器やハンドミキサーだとチョコレート生地がくっついて落としにくいから。実際「いけるか?」と試してみたら全然いけませんでした。

生地はチョコレートの割合が多いせいか、けっこう重くて混ぜる手が疲れる。生地が冷えると固くなってしまうので、急いでマフィンカップに注ぐ。お菓子作りに「ちょっとソファでごろんしたい」は許されないのだ。マフィンカップに生地を注ぐには絞り器かレードルを使うやり方があるけれど、前者は作るのが面倒だし、後者は家にないのでスプーンで代用した。

スプーンで注いだ結果、前衛的な芸術作品のように。ジャクソン・ポロックもびっくりな仕上がり。マフィンカップにきれいに注ぎたい人は絞り袋を使うといいでしょう。でも焼き上がったときに、この飛び散った部分がラングドシャみたいで美味しかったので、これはこれでありだと思う。注ぎ終わったら余熱が完了したオーブンで20分焼く。

オーブンで焼いている間、コンロに2つ小鍋をセットしてコンフィチュールも作ることにした。チョコレートの香り成分と共通しているバナナや、ミックスベリーを使ったジャムを添えたら、味わいに奥行きが出るだろうと思って。

材料※

<バナナのコンフィチュール>

  • バナナ…2本
  • 自家製はちみつレモンのシロップ…バナナに対して半分のグラム
  • カルダモンパウダー…少々
  • レモンピール…少々

<ミックスベリーのコンフィチュール>

  • コンビニで売っている冷凍ミックスベリー…1袋
  • 砂糖…ミックスベリーに対して半分のグラム
  • キルシュ(乃至適当な洋酒)…少々

※…材料は筆者の勘と目分量なので大体です。

材料をそれぞれ小鍋にぶち込んだら、後はとろみがつくまで弱火で煮込むだけ。その間は、ソファで思う存分ゴロゴロタイムだ!

20分経ってオーブンから取り出したマフィンがこちら。部屋中に漂うチョコレートの香りに、すでにお腹がいっぱいになりそう。生地に竹串を差して、色がついてこなかったらできあがり。この時点では生地がついてきたので、追加で5分焼いた。コンフィチュールもいいかんじにとろみがついているので、火を止めてそのまま冷ます。焼き立てのチョコレートマフィンはスフレのよう。ふわしゅわっとした食感と、チョコレートの濃厚な味わいがとても美味しい。よかった、大成功だ!

完成したマフィン、コンフィチュールと芦雪のクッキー付き

なんとかお菓子作りは無事に終わり、バレンタインデーに間に合った。ちょうど帰宅してきた優が「いい匂いだね」と言いながら部屋に入ってくる。ちょっといい紅茶を淹れつつ「バナナかミックスベリーのコンフィチュールがあるけど、どっちがいい?」と尋ねると「ミックスベリーかな」と言うので、スプーンで掬ってマフィンの上からとろりとかけた。

ここまで準備をしたところで、そういえば前日に腕慣らしとして焼いておいた芦雪の犬型クッキーがあったことを思い出す。せっかくなのでそれもおまけで添えた。

さぁ、これでバレンタインプレートは完成だ。ひさしぶりのお菓子作りとしては結構頑張った方じゃないだろうか。テーブルの上を見た優が「すごい!お店みたいだね、ありがとう!」と言い、一口食べるごとに褒めちぎってくる。こんなに喜んでくれるなら頑張った甲斐があったな、と床暖房の効いたフローリングで力尽きつつ嬉しく思う。すっかりご機嫌になった優が「ホワイトデーには何が欲しい?」と言うので「うーん、土地かな」と冗談を言ってゲラゲラと笑った。今度は彼が得意な親子丼でも作ってもらおうか。

翌日、マフィンを職場に持っていきたいという優に、ジップロックに詰めていくつか持たせた。色気がないラッピングだけれど、この力の抜けた感じがらしくていいのかもしれない。

私は冷やしておいたマフィンとバナナのコンフィチュールで昼ごはんに。冷えたマフィンは生チョコレートのような濃厚さで、焼き立てとはまた違った味わいだった。コンフィチュールもレモンの酸味とカルダモンの爽やかさが効いていて美味しい。我ながら大天才。

きっと今頃、優も職場でマフィンを頬張っているのだろう。リスのようにほっぺを膨らませてマフィンを食べる彼の姿を想像して、くすぐったい気持ちになった。

おまけ:余ったココアパウダーの活用法

あまったココアパウダーはホットココアとして消費するのが手っ取り早い。私はココアパウダーをシナモンと一緒に鍋で炒って作るスパイスココアが大好きでよく作る。炒ったパウダーに少しずつ水を加えて練り、牛乳を注げばいいので楽ちんだ。甘いものの気分ならはちみつやきび砂糖を加えてもいいし、生姜を入れればよりポカポカと温まる。夜ならラム酒を注いでラムココアにしてもいい。冬場は食欲が落ちるので、こうしたもので栄養をとるに限る。

バレンタインというイベントは彼と結婚するまで馴染みがなかったけれど、たまにはこうしてゆっくりしながら、共に生きる幸せを噛みしめるような日があってもいいのかもしれない。さらに言えば、目の前の愛する人だけではなく、誰かが誰かと愛し合う権利についても思いを馳せられる、そんな日にできればいいと思う。

今日も今日とて余ったココアパウダーを鍋で炒りながらココアを作っている。まだまだ寒さが続く2月を、バレンタインの余韻が暖めてくれそうだ。

 

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